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スライム彼女は天然ドS?

「うわあああああああああああっ!!!」


その日の朝、神殿の浴場から絶叫が響いた。


「今の……ユウくんの声っ!?」


「まさかっ……敵襲!?」


「いや、あれはもっと情けない系の悲鳴だな」


シアとルルと俺は、声の主――俺自身のいる浴場へ駆けつける。


何が起きたかというと。


目の前に、青髪ショートの少女が全裸でぷるんぷるんしながら立っていた。


そしてその体は――明らかに、透明で半分溶けている。


「おはよ〜、ユウ〜! いっしょにお風呂、入ろ〜?」


「いや待て!? 誰だお前!?」


「えー、ミミィだよ? 昨日ユウの靴ぺろって舐めたじゃん」


「それ覚えてるほうが嫌だわ!」


 


====


 


リビングに戻って、即・事情聴取。


目の前には、タオル一枚を羽織ったまま平然とくつろぐ謎の少女。


「名前:ミミィ・ジェルミス。年齢不詳。スライム族。今日からヒロインです!」


「自己紹介にヒロイン入れるやつ初めて見たぞ」


「それで……なぜ、浴場に?」


シアが眉をひそめる。


「んー? そこにお風呂があったから?」


「それそこに山があったから的なノリやめろ」


ミミィは、青いショートカットに、ゆるく笑った無邪気フェイス。見た目は少女そのものだけど、明らかに常識がズレている。


体がぷるんとしていて、動くたびに微妙に形が変わる。


そして、感情に合わせて体が……ゆるむ。


「そもそもスライム族って、人型になれるのか?」


「なれるよ〜。ちょっと集中すればね〜。でも、うれしくなると……ほらっ」


ミミィがふにゃあと笑った瞬間、ドロッと半分溶けた。


「うわっ、溶けた!?」


「うれしいと体ゆるんじゃうの〜。それでね、ユウといるとすぐぐにゃってなる!」


「怖すぎる愛情表現なんよ!」


「ユウくん、ぬるぬるになっちゃダメー!」


ルルが後ろから抱きついてきて、俺を守ろうとする。シアも剣を握りしめていた。


「……あまりに無防備すぎる。これは排除すべきでは?」


「怖っ!? 委員長、理論で殺そうとしてない!?」


 


====


 


それから数日、ミミィは完全に神殿に住み着いた。


どこにでも現れる。


朝起きたら布団の中に、ぷるっと入り込んでいたり、


食事中にスープに、うにょっと混ざっていたり、


掃除してたらモップに擬態して足元からにょんっと出てきたり。


「……俺、スライム恐怖症になりそう」


そんな中、事件は起きた。


 


====


 


「ユウ〜! あのね〜、キスってこうやってするんでしょ〜?」


そう言って、ミミィが俺の顔にぷるぷると迫ってきた。


「うおおおおおい!?」


「だって本で読んだもん〜。好きな人とは、ちゅーするって!」


「やめろ! 本で得た知識をノーガードで実践するな!」


「でも、ユウのこと……たぶん、好きだもん!」


――来た。スキルのトリガー。


次の瞬間――。


 


バシャアアアアアアン!!!!


 


俺の真横にあった水差しが爆発し、天井の水晶ランプが落ち、ミミィとの間に水柱が出現する。


「うわあ!? また出た、物理遮断!」


「わーい、噴水みたい〜!」


「楽しむな!!」


ルルとシアが走ってきた。


「また告白未遂……?」


「これはもう、ユウに近づいた時点でトラップだよね……」


俺はため息をつく。が、ミミィはその真ん中でぷるぷる揺れながら、にっこり笑っていた。


「ねぇ、ユウ。好きって、言わなくても……感じることって、あるんでしょ?」


「えっ……」


「だって、こうやってくっついてると……あったかいもん」


ミミィが、そっと俺の袖を引っ張る。


その体温のない、でもどこかぬくもりのある感触に、俺は少しだけ、心がふるえた。


「――そ、それは反則だろ」


「えへへ〜。また溶けちゃいそ〜」


ドロリ。


「やめてっ!!」


 


====


 


夜。俺は屋上で一人、空を見ていた。


今日もまた、誰かの好きが、俺に届きそうで届かない。


でもそのたびに――


「……あったかいなって、思うんだよな」


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