表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/14

猫耳少女と『もふもふ接近戦』!?

「……こっちに来ないで……っ!」


 森の奥から聞こえてきた悲鳴に、俺とシアは顔を見合わせた。


 今はシアに案内され、エルフ族の村を出て外の世界を見に行こうという恋愛のフィールドワーク中だった。だが、あっさりトラブル発生。


「助けよう!」


 俺が走り出すと、シアも無言で頷いてついてきた。


 茂みをかき分けると、そこにいたのは——


「に゛ゃああああああああっ!」


 ——木に登って震えている、猫耳の少女だった。


 小柄で、ふわふわの金色の髪。腰にはしっぽ。耳は三角、ふさふさ。目はくるくるとよく動く琥珀色。服装は動きやすそうなショートパンツにタンクトップ。野性味はあるが、どこか愛嬌のある顔立ち。


 しかも、その猫耳が震えている。


「ど、どうしたの?」


「に、人間っ!? え、うそ、なんで!?」


「いや、なんでってこっちの台詞なんだけど……てか何に驚いてるの?」


 俺が見上げると、少女は木の上から指を差した。


「下っ、そこの草むら! でっかいクモ! しかも毒持ち!」


「ひえっ」


 思わず飛び退いた。見れば、なるほど確かにそこには鮮やかな赤い毒クモ……っぽいやつが。デカい。ちょっと無理。


「シア、お願い!」


「よしきたっ——《フレイム・ショット》!」


 シアが指を鳴らすと、クモは一瞬で蒸発した。炎の魔法強い。


 猫耳少女はほっとした表情で、木から飛び降りてきた。


「た、助かったにゃ〜……もうだめかと思ったにゃ〜……!」


 そのまま俺に抱きついてきた。ふわっと甘い香り。胸が——いや、柔らかすぎる。耳、近い! 尻尾が脚にからまってる!


「に゛ゃあ〜、命の恩人には、感謝のスリスリにゃ〜……」


 頬をスリスリしてくる。猫か! いや、猫だ!


「ちょ、ちょっと!」


 隣でビキビキと何かが怒っている気配がした。


「……ユウ。離れなさい。今すぐそのもふもふから」


「いや、俺が離れたいです!」


 助けて! 完全に獣人系ヒロインのテンプレ展開ですこれ!


 


 ようやく落ち着いたところで、自己紹介。


「うちはルル・ミンミン。猫族の狩人っぽいポジションだけど、実際は森で迷子になる係にゃ」


「そんな係あるか!」


「てかあなた、人間でしょ? こんなとこに何しに来たの?」


 ルルが不思議そうに尻尾を左右に振る。


「俺は恋愛の勇者らしい。いろんな種族と恋愛して、愛の文化を広める任務なんだってさ」


「へぇ〜……恋愛の勇者……?」


 ルルはくるっと一回転すると、ぴょんと俺の肩に手をかけ、ぐいっと顔を近づけた。


「じゃあ、うちとも恋愛してみる?」


「ぶっ!?」


 不意打ちすぎて、変な声が出た。


「ちょ、ちょっとルル!? いきなりなにを——!」


 シアが横から割って入る。その顔は、見たことないほど怒っていた。耳がぴんぴんに立っている。たぶん今、雷でも落とせるくらい怒ってる。


「だ、だって恋愛の勇者でしょ? いろんな種族と仲良くするって。うち、けっこう手触り良いにゃ?」


「自分で言うな!」


「……手触りって、そういう話じゃないのよ!」


 シアはぷるぷる震えながら、なぜか俺を睨んできた。


「ちょ、俺、なにもしてないぞ!?」


「でもスリスリされてたじゃない!」


「されてただけ!」


 


 そのとき——またしても、俺の指輪が光り始めた。


『※スキル発動:天然鈍感バフ《なぜか全てを友情で解釈》』


「なにィィィィィィィ!?」


 シアとルルの声がシンクロした。


『このスキルにより、ユウはヒロインたちの好意を、仲の良さまたは、ノリの良い文化として解釈します』


「なにその最低の勇者仕様っ!?」


「どうりでノーリアクションだったにゃ!」


 ……え、そうなの? 俺、なんか変だった?


 シアとルルががっくりとうなだれる。


「……はぁ。これじゃ、ちゃんと好きって言っても気づいてもらえないのね」


「うち、もっかいスリスリしたら、ワンチャン……?」


「やめなさいってば!」


 


 こうして、俺はまたひとつ、厄介なスキルを手に入れてしまった。

 しかも、今度は可愛くて自由な猫耳少女まで追加されてしまって。


「ま、まぁ、これも恋愛文化発展のためだからな!」


「都合のいい解釈しないで!」


 


 ——ユウの異世界恋愛任務は、また一歩、カオスへと進んでいくのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ