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選んだのは——初めての恋だった

それは、まるですべての答えが出る瞬間だった。


ユウは静かに目を閉じ、心の中でゆっくりと問いかける。


「僕が本当に選ぶべき人は、誰だろう?」


目の前には、シア、ルル、ヒメリア——そして、かつては誰もが競い合った五人のヒロインたち。今はそれぞれがユウに対して、ただの仲間や友達ではない特別な存在となっていた。


心の中で、それぞれの顔が浮かぶ。シアの真剣な眼差し、ルルの無邪気で明るい笑顔、そしてヒメリアの純粋すぎる瞳。どれも、ユウにとって大切な一部だ。


だが、最終的に自分が選ばなければならないのは一人だけ。


ユウは深く息を吐き、もう一度、心を整理し始める。彼の目の前には、大きな決断が待っている。


「どうしても、一人を選ばなきゃいけないんだよな…?」


そんな問いを自分に投げかけるように、ユウは感じていた。自分の気持ちは、どこまで深く、どこまで本物なのか。


そして、ふと、ヒメリアの言葉が心に響く。


『私は、ユウ様が選んでくださることを信じています』


その言葉が、ユウの胸を締め付けるように感じた。ヒメリアはずっと、ユウの答えを待ち続けていた。自分がどれだけ迷っていようとも、ヒメリアだけはそのすべてを受け入れて待ってくれている。


一方で、シアやルルもまた、心の中で答えを待っているのだ。


「誰を選ぶかは、僕の心が決めること」


ユウは、ゆっくりと目を開けた。


その瞬間、すべてのヒロインたちが目の前に現れる。シアが少し遠慮がちな目でユウを見つめ、ルルが無邪気に微笑んでいる。そして、ヒメリアはその清らかな瞳で、ユウを真っ直ぐに見つめていた。


「ユウ様、どうか私を選んでください」


ヒメリアの声が、少しだけ震えていた。その震えに、ユウの心が反応する。


シアが静かに息を呑んだ。


「私は、ユウがどんな選択をしても支えます。でも……私も、ユウを好きだって気持ちは変わらない。」


ルルは、ユウに向かって明るく、けれど少しだけ寂しそうに微笑んだ。


「私だって、ユウくんのこと、すごく好きだよ。でも、誰を選んでも、私は応援するよ。」


その言葉に、ユウは胸が締め付けられるような気がした。彼女たちが、全力で自分を受け入れ、支えようとしてくれているからこそ、余計に選ぶことが辛くなる。


でも、どんなに迷っても、心の中で確信が湧いてきた。もう、迷うことはできない。


ユウは、全員に向き直り、静かな声で告げた。


「僕が、選ぶべき人は──」


その言葉が、空気を震わせた。





====





ユウは深く息を吸い込む。その瞬間、すべてのヒロインたちが一斉に息を呑んだ。


「僕が、選ぶべき人は──」


その言葉が、彼の心をさらに固めるように響いた。


そして、ユウの目が静かにヒメリアに向けられた。彼女の青い瞳が、何も言わなくても自分を求めていることが伝わってくる。その目には、すべてをかけた覚悟と、どこか儚さを感じさせるものがあった。


ユウは、その目を見つめ返しながら、心の中で何度も答えを繰り返した。彼が心から感じていたこと、それは、もう迷いではなかった。


「ヒメリア」


ユウは、静かにその名前を呼んだ。


ヒメリアは、ユウの言葉に一瞬、驚いたように目を見開いたが、その表情はすぐに安心感と喜びに変わった。


「ユウ様…」


彼女は、涙を浮かべながらも、その手を差し伸べる。その仕草が、まるで一つの願いが成就したかのように、ユウの心を強く打った。


「僕は、ヒメリアを選ぶ」


ユウの言葉が、全ての空気を支配するように感じられた。


シアとルルは、少しだけ驚き、そして静かにそれを受け入れた。シアは微笑み、目を伏せながらも静かに言った。


「分かりました。ユウが決めたなら、私もその決断を応援します」


ルルも、少しだけ寂しそうに笑いながら、「私もだよ、ユウくん」と言った。


それぞれの言葉に、ユウは深く感謝の気持ちを抱く。シアもルルも、誰一人として彼の選択を非難することなく、心から彼を応援してくれることが分かる。それは、何よりも大きな支えとなった。


そして、ユウはヒメリアに向かって歩み寄り、彼女の手を優しく取った。


「僕、ずっと気づいていなかったけど、ヒメリアのことが…すごく大切だって、今、分かったんだ。」


ヒメリアは、目に涙を浮かべながらも、静かに頷いた。


「ユウ様…私も、ずっとそう感じていました。あなたと出会えて、心から幸せでした。」


その言葉に、ユウは深く頷く。


「これからも、ずっと一緒にいたい。ヒメリア。」


ヒメリアの顔が、ほんの少し赤くなり、そして微笑みながら、ユウの手をぎゅっと握り返す。


「はい、ユウ様。私もあなたと、ずっと一緒にいたいです」


その瞬間、ユウの胸にあふれたのは、今まで感じたことのない温かさと、安堵の感情だった。そして、初めての本当の恋が、ここから始まるのだと確信した。




その後、ヒメリアとユウはしばらく言葉を交わさず、ただお互いの手をしっかりと握りしめていた。周囲のヒロインたちも、その光景を静かに見守っている。


そして、ユウは静かに、でもはっきりと決意を胸に抱きながら言った。


「これからは、ヒメリアと一緒に、どんな困難でも乗り越えていく」


その言葉をきっかけに、すべてが新しい一歩を踏み出した気がした。


ユウとヒメリアの物語は、ここから本格的に始まるのだ。


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