恋愛スキル暴走!? 告白不可の呪いが解けかける
「……ッッ!!」
バシュンッ!
また、何かが空間を裂いたような音がした。
ユウは芝生の上に転がりながら、息を切らしていた。
「なんだよこれ……最近、スキルが……おかしい……」
目の前には、告白しようとしていたヒメリア。そして、突然現れた亀裂のような力場によって、またもや妨害されていた。
ただ──違う。
今までの「告白回避」とは、明らかに様子が違っていた。
爆発でもワープでもなく、空間が拒否するようにねじれたような感覚。
「ユウ様……!」
ヒメリアが泣きそうな顔で駆け寄ってきた。スカートの裾がひらひらと風に揺れる。
「さっき……あと少しで言えたのに……好きって……!」
「ヒメリア……!」
そのとき、背後から声が飛んだ。
「──ああもう! 何よこれ、いい加減にしなさいよ!」
現れたのは、髪を風になびかせたシアだった。
顔は真っ赤、でもその瞳は真剣だった。
「私だって……私だって、伝えたいことがあるのに!」
「シ、シア!?」
「もう何度、手を伸ばしかけたと思ってるのよ……それを、スキルだかなんだかで遮って……っ」
彼女は拳を握りしめた。
「ふざけないで……! 私は、ちゃんと、あなたに好きって言いたいのに……!」
ぐらり、と。
空気が揺れた。
またあのねじれが──
バチバチバチッ!
「っ……!」
今度は、ヒメリアの背後から、雷のような力が走った。まるで世界が、告白そのものを拒絶しているようだった。
「ちょ、ちょっと待ってよ〜!」
今度はルルが走ってきた。猫耳をピンと立てて、真剣な顔で。
「何この雰囲気!? 告白するの!? みんな!? じゃあ私だって!」
「お、おまえまで!?」
「ユウくん、大好きだよ!」
──ズガァン!!!
地面がひび割れ、まるで神の鉄槌のように衝撃が走った。
三人の想いが重なり、スキルが耐えきれずに暴走している。
「おい……マジで……止まんねえぞ、これ!?」
ユウの身体が、今にも空間ごと引き裂かれそうな圧にさらされる。
そんな中、ヒメリアが前に出た。泣きそうな瞳で、まっすぐユウを見て。
「わたし……ユウ様のこと、好きです!」
──何も、起きなかった。
静寂。
世界が、すっと止まったような感覚。
「え……?」
「ヒメリア……今、好きって……」
「言いました。もう我慢できませんでした。ユウ様のことが、好きです」
「でも……スキルが……」
ユウのスキルは、確かに、告白を回避するはずだった。
けれど今、それは──
【スキル条件変動中──「本気の初恋」認定。機能調整開始】
「な、なんだこの声……!?」
ユウの脳内に響くアナウンスのような音。
【「初恋の対象」として想いが確定されたため、一部制限が解除されます】
【ただし、他ヒロインの告白は引き続き回避対象です】
「ちょ、他ヒロインって言い方やめろォォ!!」
「まさか……私たち、他扱い……!?」
シアとルルがショックを受けてがっくり膝をつく。
「でも……それって……ヒメリアが……!」
「今のところ……一番近いってことかも……」
ユウは、激しく揺れる気持ちを押さえきれずにいた。
ヒメリアへの気持ち。過去の記憶。
それが、スキルさえも変えはじめている。
「俺のスキル……もしかして、一人だけを本気で好きになったら、他は回避されるっていう……?」
「そんな重すぎる仕様あるかッ!」
「でも、ロマンチックかも……!」
シアとルルが、複雑な表情で顔を見合わせる。
そのとき──
「ユウ様」
ヒメリアが、小さく手を伸ばしてきた。
「スキルがどうでも……わたしは、あなたに恋をしています」
その手を、ユウは、初めて、恐れずに取った。
「……俺も、ヒメリアのこと……」
想いが、口からこぼれそうになったその瞬間──
【警告:最終解除は次回までお待ちください】
──ゴシャァン!!
「またかァァァァアアアア!!」
修羅場と感動とスキル暴走が入り混じる中、次回に続く──!