変態と魔法少女
春、桜が舞い散りまだ少し肌寒い風を感じる季節。
新たな始まりとなる季節だ。
今日は実に清々しい朝を迎えることができた。
眠気も無くスッと起きることができ、窓を開ければ冷たい風に触れながらも暖かさを感じる日差しを身体いっぱいに浴びることができた。
これから私の新しい生活が始まるのだと心浮つかせながら朝食を作ると気分が良くなってしまい豪勢なモノができてしまった…。
まだ着慣れていない制服を身に着け玄関を出て学校へと向かう。
この調子で今日一日、私の人生のうちの素晴らしい一歩へとなるだろう。
この時はまだそう思っていた…。
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私は今、純白のブリーフだけを身に着けた姿で桜の花びらと共に宙を舞っている。
何故、こんなことになっているのか…私は素晴らしい一歩を踏み出したハズなのだ
それが何故、何故だというのだ…それもこれも全てあいつらが悪いのだ。
そう、あれは今から数分前のこと…
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数分前…
誰もいない静かな坂を一人歩く。
この時間、この道では人通りが限りなく少なく、いたとしても腰の曲がったご婦人しか見かけない。
小学生、中学生の数年間を使って調べた情報なので安心ができる道だ。
そんな道を私はブリーフ姿で歩いている。
春風を上半身、下半身と感じながら胸を張り堂々と歩く。
なんて清々しく気持ちがイイのだろうか。
少し寒いがまたそれが季節を感じられ自然と一体となっていると思うことができる
とは言えサブイボが立ち少し腹の調子も怪しくなってきたな…
ドゴォォォンッ!!!!!!!!!!!
私が腹を擦りながら歩いていると目の前をナニかが物凄いスピードで通り過ぎていった。
驚きながらも凄い音が鳴った方を振り向く。
「なかなかやるわね…。でも私を倒すなんて壱億万年早いのよ!!」
ぶつかったであろう壁から土煙の中から人影が出てくる。
その人影の全貌を見た時、私は目を見張った
出てきたのは全身発色がいいピンク色で統一されたやけにフリルが多い衣装、おおよそ物理法則を感じられないポニーテール、誰もが振りむくような美貌を持った少女だった。
なんてことだ、こんな昼間からこんな痛々しい恰好で物を破壊する変質者に合ってしまうなんて…。
「なっ!…まさかこの結界の中に入っちゃった人っ!?チャッピーちゃんと仕事してよねッ!!」
一瞬目が合ったがすぐに変質者は飛んできた方向を向く。
それに釣られ私も同じ方向を向く
「ハート!そんなことないッピ!ちゃんと人がいないことは確認してるッピ!ここにいるのはハートとビーストだけッピ!!」
なんだ?上からやけに高い声がする…。
いや、それよりなんだ、あの黒いやけにテカっているイノシシみたいなデカブツ…
もうそろそろ私の脳内のキャパを超えそうである。
「はぁっ?!だってそこ…………に…………。」
私はもう一度変質者の方を見る。
何やらこちらを見て固まってしまっているようだ。
「ぎゃぁぁぁあぁあぁぁああああ!!!!!ヘンタイぃ!!!!!」
ヒュン
何かが私の頬を掠めた。
変質者が投げる動作をしたように見えたのでそれが掠めたのだろう。
頬から血が垂れてくるのを感じる。
頭が冷えていく。
あぁ、これが血の気が引くということなのだろう。
もしも変質者が投げた何かが私にまともに当たったのであれば死んでいたと、そう思える音が耳にまだ残っている。
頬の痛みは最早感じない、それよりも音の恐怖が身体と心を縛って動かない。
「なんでここに全裸のヘンタイがいるのよぉぉぉ!!!!」
目の前の変質者が叫ぶ。
そうか、そうだった、私は今、ブリーフを身に着けている。
そして、考えろ、目の前にいるのは変質者だ。
だがそれがどうした、変質者であれど人には変わり無いではないか。
身体に血が巡る。
熱くなる。身体が、心が。
「失敬なッ!!!!!!!!!」
叫ぶ、初めて人に見られたのだ、そう考えるとどうしても熱くなってしまう。
「見よッ!私はブリーフを履いているッ!!!しかもただのブリーフではない!!!これは私が高校に進学すると共に新しく買ったニューブリーフッ!!私と一緒に素晴らしい一歩を踏み出したブリーフだッ!!!」
「何言ってんのよコイツッ!!!!〇すわよッ!!!!」
変質者の顔が険しい。
そうか、そういうことか…。
「わかったッ!!!そこまで言うなら見せてやろうじゃあないか!!!これが本当の全裸だッ!!!これが人のありのままの姿だッ!!!!」
私は叫ぶとともに勢い良くブリーフをずり下げる
「汚いもん…見せてんじゃないわよォォォオオオオ!!!!!!!」
ブリーフを脱ぎ終わった瞬間、目の前に黒い壁が迫って来た。
…そういえば、なんか黒いデカブツいたな…。
どうやら変質者が殴ったデカブツがこっちに来ているようだ。
瞬間、視界が変わる。
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私は飛んでいる。
どこに向かっているのだろう。
そういえば衝動的に脱ぎたくなるのを考慮して保険としてブリーフを二枚履いてたなと思いつつ私は飛ぶ。
というか普通にかなり高い位置まで来てるな、これ普通にしn
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「なぁ、コイツどうするよ?」
「丁度いい、コイツを使ってアレを作ってみればいい」
「まじ?コイツを?人間の中でもヤバイ奴っぽいぞ?」
「それがイイんじゃないか?ほら、さっさとハコベ」
「うぇ~、触りたくねぇ~。…………うわっ、なんか黄色いシミついてるし…」
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「はぁ、はぁ、取り敢えずビーストは倒せたわね…。」
「流石だッピ!」
黒いイノシシが塵となって消えていく傍に一人の少女と黄色い鳥がいた。
「それよりも……なんだったのよあのヘンタイ!!!というか人いたじゃない!!!」
「ご、ごめんッピ…。アレが人だとは思えなかったッピ…。」
「まあ確かにチャッピーからしたらそう見えたかもだけど」
「そ、それよりアレが人なら大変だッピ!!ビーストと一緒に飛んでいっちゃったッピ!!」
「はぁ…。探さなきゃダメ?」
「人は守るべき存在ッピ!!」
「はぁ…、やっぱり魔法少女なんかになるんじゃなかったかな…」
主人公は変態です。
変態である自覚はあるようで無いようなようわからん奴です。