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最終話 そして

12.


 ――気づくと、僕と胡桃は校舎内の下駄箱の前に立っていた。

 このいつもの見慣れたはずの校舎の光景も、今ではまるで違ったものに見えてしまう。


 いや、もうここはいつもの場所ではないのだ。ここは、胡桃と出会った特別な場所となってしまったのだから。


「不思議でしょう?」

 胡桃は、そんな僕の気持ちを見通しているかのように問いかけた。

「もはや、貴方にとってここは今までの世界ではない。貴方はもう一つの世界を覗いてしまったのだから」


「もう、変えられないのか?ここはもう、あの世界に変わることはないのか?」

 僕は思わず、初めに胡桃に注意されたことを尋ねてしまった。どうしてもその気持ちを抑えることができなかったのだ。


「残念ながら」

 胡桃は事務的な口調で答えた。そうだ、そう言われることはわかっていた。

 そして胡桃は、諭すように、慰めるように話し始める。


「でも、これでわかったでしょう?世界や未来は、何がきっかけで大きく変わるかわからないんすよ。未来はすでに決められている、なんて言います。ですが、この先に何が起こるかわからない以上、未来なんて決まっていないものと同じなんす」


 僕は少しの間、沈黙してから答える。

「そうだね、そうかもしれない」


 後悔、先に立たずとはよく言ったものだ。今の僕には目の前の今日を、この先の明日を生きるしかない。

 悔いのないように生きることは難しいけれど、それでも前に向かって転がるように生きる。それがロックンロールだ、なんてふざけてみる。


「後悔、してますか?」

 胡桃が気を遣う様に尋ねる。

「少し、ね」

 それでも僕は強がって、微笑んで答えてみせた。


「僕たち、また会えるかな?」

「さてねえ。それこそ神のみぞ知る、ですなあ」

 胡桃はとぼけた調子でそう言うと、コートの内ポケットをごそごそと漁り、さきほど使ったライターを取り出した。


 どうやら、これがお別れの合図のようだ。


「では、あっしはもう行きます」

「また、会いに来てよ」

 僕がそう言うと、胡桃は少し照れるように頬をぽりぽりとかいた。

「そうっすねえ。何せあっしは貴方のファーストキスの相手っすもんねえ」

「なっ・・・」


 僕が言い返すよりも早く、胡桃は手をひらひらとさせて僕の動きを制した。

 そして、人差し指を自分の口にあてながら、僕に向かって思わせぶりにこう言った。


「では、最後に貴方へ尋ねましょう」


 そして胡桃はいたずらっぽく、にやりと微笑む。



「――貴方はこのあと、右足から歩きますか?左足から歩きますか」

                        


                         終わり

読んで下さってありがとうございました!

他の胡桃シリーズもよろしくお願いします。

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