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鉄のはらわた  作者: 氷砂糖
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見てもわからないならしょうがないでしょう?

よくわからぬ

さてパーティー会場から車で30分程のところにあるオンタリオ陸軍基地に向かう事になったミレーナは、司令部から送られて来た無駄に長い資料を読む。


何やら読めば読むほど面倒くさい...というか深刻な状況になっていることが分かる。おいおいここまで来て相手が誰かわからないってなんなんだ?情報部のハゲどもはとうとうここまで落ちぶれたのか、こんな大軍団を引き連れて大きな顔して荒らし回っている連中の正体すらわからないとは。


しかしさらに読み進めて行くと相手連中の兵装の写真が出て来た。ぱっと見150年前くらいの小銃に似ているものなどもあったが、よく見ると引き金がなかったり給弾の機構が見たことのないものになっていた。


加えて他の写真にちらほら写っている戦車に至っては砲?の先端がコンパスの芯のようになっていてもはや砲の体をしていない。そう考えると情報部が困惑するのも納得である。そんな事を思っているとオンタリオの基地に着いていた。


車から降りると副師団長のオービニエ大佐が出迎えた。大佐はいまや国軍に数少ない50代の大佐だ。


「祝日で家族とゆっくりできると思ったのですが...閣下、大変なことになりましたね」


「あぁ全くだよ今日は宜しくない。」


そんな事を言いながら早歩きで師団本部に向かう。


そして本部のある建物に入るとすでに参謀の面々は揃っていて皆敬礼して来た。それにミレーナも答える。


「カーリネット中佐、第3軍からは何と?」


「『ノーウェル北部にて上陸した武装集団はそのまま南下し続けている。現在我が軍はスランチェール北30キロまで後退しておりベル川と丘陵に沿って第4機械化歩兵師団、第111連隊戦闘団、ノーウェル軍第1師団が交戦中、第3近衛師団は反撃のためスランチェール西北西のレバンゲルの森林地帯で展開、準備されたし。』だそうです」


おおよそ主権国家同盟に対する防衛プランと同じだと思うとミレーナは


「よし、各旅団に対して警戒命令を発令しろ。『軍団規模の敵がスランチェールに向けて進出中。準備出来次第レバンゲルに展開せよ』」


とりあえずは集結せねば何も始まらない。


______________________________________


第18軍集団司令官プロムテム元帥はただでさえ深いしわを谷よりも深くしていた。プロムテムが率いる第18軍集団はこの新たなる世界に侵攻してからというものの初期こそは順調であったが奥地へ行くにつれて敵の遅滞戦闘と兵站状況の悪化により明らかに進軍速度は遅れていた。その上他の戦線においては敵の妨害かは分からないが連絡は取れないものの本国からは予定通り進軍中との事だ。


「おい...キャルバー...。」


そしてその不機嫌元帥の目の前にいるのは元帥と同じジャンラーン連邦出身のキャルバー中将だ。


「はいプロムテム閣下の懸念されている事は重々承知であります。しかし人間共は我々の世界のものと同様に大分小賢しい様です。」


そもそも大した準備もせずに作戦を始めたのはこのしわぶか元帥なのだが...まぁこうなってしまったものは仕方がない今も我々は丘陵と河川を使った防衛線を使った敵人類に阻まれている。奇襲をされたというのにここまで頑強な抵抗をしてきているとは、敵ながらあっぱれである。元帥の深くなっていくしわを見ながらそんな事を考えていると、情報将校が司令壕に入ってきて紙をよこしてきた。


「閣下、朗報です第71魔導化歩兵師団が丘陵の間、88高地と89高地の間に風穴を開けました。」


プロムテムが怪訝な顔を明るくすると勢いよく立ち上がって叫んだ。


「よし!2個戦車軍を投入しろ!散々手こずらせろやがって!包囲して殲滅し目に物見せてやる!」


「了解」


しかし敵に時間を与えすぎてしまった。後方にも陣地を敷かれているかもしれない...ここは教範通り増強した偵察大隊を編成して...。


「第71魔導化歩兵師団より入電!88高地から敵の逆襲です!」


しわがまた深くなった。

______________________________________


司令部の偵察ヘリに乗ったミレーナは眼下の景色と一枚の写真を交互に見ていた。無人偵察機が写しただけの映像をただ師団本部で見ているだけではわからないこともあるのだ。スランチェールはノーウェル平野の中部にある。よってそのままの通り多少の丘があるものの見る限りスウェディエン山脈から海岸まで見事に真っ平らである。そして数少ない丘を利用して友軍は防衛線引いている。ここを突破されたらノーウェルの首都まで障害物がない。それは流石のミレーナにも土地勘があるからそれくらい分かる。問題は地形などとは全く関係ない敵武装集団の写真である。目を引くのは昔のエセ未来科学本に出てきそうなシュッとしたフォルムの乗り物ではなくそれに乗る兵士の耳である。


耳が長かったりなにかの動物に似た様な物がついているなどまるでヤポーネの漫画から飛び出してきたようだ。なんなのだ?一体友軍は何と戦っているのだ?よくわからん映画の撮影だと言われた方がまだ説明がつくと言うものだ。隣で望遠鏡片手にメモ帳に書き込んでいる副官の中尉に


「中尉、最近私は寝不足なんだもしかしたら現実世界では風邪をひいて寝てしまっていてこれはその夢かもしれない。」


と言うと


「閣下は毎日10時間以上睡眠を取られているでしょう?」


と言われた。最近会っていないなかったのに何故知っているのだ。そんなことをしているとヘリコプターが高度を下げ始めたと思うとパイロットがこちらに顔を向けてきて。


「閣下!これ以上は危険です!敵さん今度は本気で空を取りに来はじめました!」


と言った。ここで落とされたら元も子もないので、


「了解した!このまま本部に戻ってくれ!」


と応答する。空軍には幸運を祈るばかりだ。

真面目に

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