プロローグ
前あったものを修正
酒が瓶に注がれる音や乾杯する音、そして話し声が会場を包んでいて、広いホールの奥にあるステージには「戦勝130周年パーティー」と書かれた横断幕が飾られている。
若い将校は大酒を飲まされ酔い狂い、今や数少ない中年の将軍は腹を出して踊り狂う。そんな中酔っ払いに絡まれないよう広いホールの端でちまちま紅茶を飲み小娘には似合わない二つの横線と一つの星がついた礼装を来ているのがミレーナである。
だいたい酔っ払いから遠ざかっているというだけでは無く、そもそもこの会場にミレーナの友人と言える者は一人もおらず、数人の知り合いの大体が上官である。ここだけ聞くとただただ孤独な者という印象を抱くだろうが、ミレーナはそもそも年齢的に酒を飲む事ができないため飲みニケーションが難しいし、自分が職務怠慢を続けた為に人間関係の構築ができていないだけだと言い聞かせている為おそらく違うのだろう。
その証明としてミレーナはとなりに座っている者と一時間以上会話を続けているではないか。まぁその相手が酷く酔っていて、ミレーナが初めて会った佐官で無ければの話だが。
「ミィれウェなぁはがはぁびぃひいぬうぁえ」
と何を言っているかいまいち分からない事を一時間以上聞かされ続けている。さっきから気分はバーのママだ。というかこのおっさん酒臭すぎて無駄に空気を吸うとこっちが酔っ払ってしまいそうである。
こんなやつにかまっているなら場所を移せばいいのではと思うかもしれないが、ホール中央に目を移すといい歳をした将軍が酒を片手に腹を叩いて大爆笑している。あんなものを見てしまったらこの顔がくしゃくしゃになる程酔った数少ない中年の将校はまだマシな方であると考えられる。
というか早く帰りたい。パーティーが終わる22時まではまだ2時間もあるし隣の酔っ払いはだんだん私を見る目がイケナイ方向に変わってきているのである。1年に3、4回しかここに帰ってこないからせっかくだし行ってみようと浅はかな考えをしなければ良かったとミレーナは後悔した。
そもそもミレーナは飛び級では出ているが士官学校には行っていないため兵隊さんのそう言ったアレはさっぱりである法律で決まっている事なので仕方ないしテロで父親含めて高級将校が粗方死んでしまったのでみんな佐官は大体二十代だ。それでも15歳の小娘に2万人を統制しろと言うのは無理難題である。まぁそれでもかれこれ2年間やっていけているのだからすごいものだ。
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パーティーがあと一時間で終了という所に差し掛かっていた頃、ミレーナがこの会場を出たらどんなに素晴らしいことが待っているだろうかと天井からぶら下がっているシャンデリアを見ながら考えていた時、ホールの入り口から何人かの将校が入ってきた。なんだなんだと見物しているとその中の一人に私の副官であるペーターセン中尉が紛れ込んでいた。彼女は私を見るなり向かってきて、少し焦った口調で言った。
「少将閣下!司令部より召集です!至急オンタリオの基地へお戻りください!」
そう言って中尉は「大陸軍司令部」と書かれた命令書を差し出して来た。どうやら隣国のノーウェルで何かがおきているようだ。このような事を言ったらノーウェルの駐在武官あたりにぶん殴られるだろうが、司令部の連中は庭を勝手に荒らされて大層お怒りのようだ。
「分かった.........よし!すぐ向かおう。」
司令部からの命令とあらば自分勝手の擬人化であるミレーナも急がずにはいられないのだ。
ミレーナは一時間以上もたれかかられていた佐官を突き飛ばすと、中尉と共に正面玄関のロータリーへ走り出す。巨大なシャンデリアのあるエントランスを抜けたところで受付に携帯電話と拳銃を預けていた事に気づき、中尉を先に行かせて受付へ取りに行く。それを終えてロータリーへ出て中尉が待たせていた車に乗り込んだ。
「状況はどうなっている。」
「一時間前ノーウェル北部にて我が国の第6独立歩兵連隊とノーウェル軍第3歩兵旅団が突如出現した武装集団と交戦中です。また北東海上空にて空軍が未知の敵と交戦中のようです。」
「それは分かった。しかし俄には信じがたい事だぞ。なんせ敵は10万...いや20万にも及ぶとされているって...なんだこれは?アカのレーテ連邦がタイムスリップでもして来たのか?」
「はい違います閣下。情報参謀のシューベル様も同じことをおっしゃって大陸軍司令部に誤っていないか何回も通信されていましたから。」
わけわからんパーティーに行った挙句こんな状況になるとは...早く家に帰りたいだけどそんな事を言える状況ではなくなるだろうとミレーナは何処か感じていたのであった。
難しい