[23].新たな居場所
予告通り週1に頻度を落とさせていただきます。
これからも今作品をよろしくお願いします。
協会内掲示板には様々なギルドや臨時パーティーの募集がされていた。
もちろん各ギルドで定めている定員数に達している所や招待限定の場所も存在する。
それでもすごい数の紙で壁が覆われているので圧巻と言うしかない。
応募すれば入れる場所、応募後に面接のある場所、レベル制限のある場所。
多くの募集がレベル5以上から応募が可能とされている。
交換を持っていたり少し戦い慣れていたりするからだろうか?
他には合計レベル51からの募集も見受けられる。
合計とは何のことを指すのだろうか?
うーん、手っ取り早くレベルを上げるために魔法……魔法覚えようかな。
精霊のものでは無く、人間のもの、あるいは魔術を。
そうと決まれば行動あるのみ、移動!
街から出てしばらく進み草の生い茂る場所に横になった。
魂器内部の精霊体へ移動。
完全変態して物質体を観察。
——属性全閉じ?
なぜなのだろう、人間達は全て空いているのにって私は人間ではないのだから当然か。
あとは私自身の魔力、霊力を染めて無いからだろうか?
現状の才能では強化、防御、物質化などといった無属性しか出来ない。
……考え方を変えれば私自身既に星の神に把握されているはず、ならばこれらは許されたと言うことなのだろうか?
いっその事進化後に使えるようになるSPの使い道は物質体の魔力を精霊体に移した時によく順応するように魔力の性質を変えてしまうのに使うのも良いかもしれない。
むむむ……悩ましい、実に悩ましい。
悩んだ末、結局今はどうすることもできないので考えを放棄することにした。
スキルや体質などを変化させれるようになるのは進化後、SP交換ができる様になってからなのでその時に決めれば良いのだ。
将来できる可能性があるものが分かっただけでも十分だろう。
物質体を今どうこうできないのは理解した。
同時にひとつ決心もできた。
私自身を水属性に染めることだ。
多くの属性とは相性が悪くなるが水系統との相性は良くなる。
ただでさえ迷宮内での精霊による力の行使には制限が課されているので染めた方が水属性系統に限り消耗が少なくなる。
そして水は人間だけでなく多くの生命に必要不可欠である。
別属性は染めても別にこれまでよりかなり扱いづらくなるだけでちょっとした魔法は使えるので良いだろう。
水球を浮かべその属性に自身を同調させた瞬間、中位精霊から水の中位精霊へと変化を遂げる。
同時に物質体の制限も水系統のみが解除された。
思い出した様にいつだかに貰った青い布切れを取り出し左腕に結ぶ。
これで人間と何かあっても多分大丈夫だろう。
完全変態、街に戻り再び協会に入る。
途端にさっき手続きをしてくれていた男性が私を視認するや否や立ち上がり裏方に去った。
やっぱり記録されてるのかな?
とりあえず近々臨時パーティーを組めそうな募集を探す。
レベル5で女性でも入って良い場所は……以外と多くあるようだ。
ここは職員さんにおすすめを聞きに行こう。
「すみません。明日明後日ぐらいから臨時パーティーに参加したいのですがどこかおすすめはありますか?」
「パーティーのご相談ですね。適切なメンバーをご紹介するために冒険者証を見せて頂けますか?」
首にかけている冒険者証を服から取り出し相手に提示すると裏からさっきの男性職員さんが今対応している職員さんに何か耳打ちをすると奥に進む様にと声をかけられる。
言われるがままに奥に続く扉の向こう側へ向かった。
ひとつの小綺麗な部屋に通され上等な木製の椅子に腰をかけ部屋の様子を見ていると少し職位が高そうな人が部屋に現れた。
話し相手はこの人らしい。
その人が席に着くと同時に話を始める。
「少しお話しとは何でしょうか?」
「いやあ、すみません。私日本ダンジョン協会の副会長をしている者なのですが宜しければ御身分を伺ってもよろしいでしょうか?」
「身分ですか?孤児院から出たてなので身分と言えるほどのものはありません」
「ではそちらの腕につけてらっしゃる青いスカーフはどちらで入手されましたか?」
少し偉い立場なのもあって私のことを知っているのだろうか?
人間社会に害を与えようと思っているわけでは無いので正直に答えてしまおう。
「少し前、街に入った時人間の方から頂きました。見分けられるためによかったら付けておいてと言うようなことを言われたので付けました」
「ではあなたはやはり」
そう言うと納得の表情に一瞬可哀想だという目をする男性。
「精霊です。今は人間をしてます。どうですか?完璧な少女だと思うのですが」
「はは、普通の人と見分けが付かないですね。素晴らしいと思います。同族の方々もその様に完璧な擬態をされているんですか?」
「情報を抜こうとしてるんですか?探りは嫌いですし同胞の迷惑になる可能性があるのでやめてほしいのです。ですが私は同胞の中で最も人間に成っていると思います」
「それはどういう意味で?」
「言葉通りです」
「分かりました。それでは次の質問よろしいですか?」
「質問によります」
「精霊さんはなぜこちらにお越しになられたのでしょうか?」
「ただ人間の社会で少し過ごそうと思っていただけ、強いて言えばこの体にちょうどいい冒険仲間を探しにきました」
「あなた自身では無くその体のレベルに合うような仲間という解釈でよろしいですか?」
「はい。そのためにここに来ました」
そう言うと彼は「失礼」と言いペンを走らせると、書かれた文字は少しの間を置き綺麗に消える。
魔道具の様だ。
「その問題に関しては承知いたしました。他に何かご用はお有りでしたか?」
「そうですね……無闇に私の正体を言いふらさないで貰いたいです。組織として必要な人に伝達するのは良いのですがそれ以上をされると面白く無くなってしまうと思いますので」
「分かりました。国と組織運営に必要な最低限の伝達をさせていただきます。……正直に申し上げた方が良いと思ったので申し上げますと人間と精霊の関係を維持するためにも不慮の事故が起こってはいけませんので精霊さんがこれからどこに所属するにしましても最低1人の護衛が付くことになります。おそらく無用な心配だと思われますがご理解をどうぞよろしくお願い致します。つきましては精霊さんのお身体の御身分を護衛がおりましてもおかしくない程度のものとさせて頂きたいのですがよろしいですか?」
「そこらへんは何でも良いのですが私に上品な振る舞いを期待しないでほしいのと護衛をやめて欲しいと言ったらどうなりますか?」
「その時は精霊さんが言われた通りに下がらせますが冒険者として活動する期間は腕のスカーフを付けておいて頂けると有り難いです」
単独行動もダメではないらしい。
でも監視が嫌というわけではないので受け入れよう。
「分かりました……ところでこの体についてどう思いますか?正直に言って欲しいです」
「精霊さんとどのような契約を結ばれたかを私たちは存じ上げないので何とも言えませんがその少女は近くの学校街で倒れていたところを保護されたとあります。記憶喪失でありながらもこの街の孤児院で一生懸命に仕事をしていたと記録がありますので少し不憫だと思いました」
「なるほど。私がこの体の持ち主を乗っ取ったと思っているのですか?」
「正直に申し上げますとそうなります」
「なるほど。あなたから最初に向けられた表情が気になっていたのです。ですが安心してください。この体を作ったのは私です。入って人間として暮らしていたのも私です。なので貴方が考えたような悲しい事は無いので安心してください」
「あ、ああ!人間になるとはそう言う意味だったのですね」
「そうです。詳しくは言いませんがこの体で人間としての暮らしを楽しむために大幅な弱体化を自身に課しているので護衛の方はぜひよろしくお願いします」
「そうでしたか、実を言いますとつい癖で最初に鑑定を行ってしまったのですが何も反応されなかったので許されたと思っていたのですが実は気付かないでいらしましたか?」
「えっ、気付きませんでした。なるほど、自分との存在力差が大きいとこのようになるのですね。勉強になったので許します」
「寛大なご対応をありがとうございます」
副会長は頭を上げると紙に文章を書くと再び口を開いた。
「もう間も無く職員がいくつかの候補を持ってこちらに参りますので少々お待ち下さい。お茶が冷めてしまいましたね。只今淹れて参ります。もし宜しければお茶菓子をお楽しみなさって下さい」
質素な部屋だが心遣いは十分に感じられる。
新しいのを持ってきてくれる様だが冷めてしまったお茶を一口。
お茶という水に味がついたものは初めて飲んだがなかなかに美味しい。
お茶菓子は砂糖で作られた何か。
よくわからないがこれも美味しかった。
初めての甘味を楽しんでいると新しいお茶を副会長自ら持ってきてくれた。
大事にされてるなぁ。
美味しいお茶を飲んでいるとこの部屋まで通してくれた男性職員が書類を持ってやってきた。
副会長が選択肢を9つ程にすると贅沢なギルド選びの始まりである。
書類に目を通す……。
「どこもレベル高くないですか?」
「レベルが高い者程力はもちろん余裕もあります。ご不満でしょうか?」
「不満という訳ではありませんが迷惑にならないかなと思っただけです」
「最悪護衛と数人でダンジョンに入ることもできますし人の良い者が多いので悪い事にはならないと思われます。ギルドから特別報酬も出すつもりなのでギルドから不満が出ることもないと思われます」
書類5つ目でふとギルドの名前が目に止まった。
ギルド:パイオニア
備考:ギルドパイオニアの傘下ギルド。
何か既視感がある。
どこかで見た言葉だろうか?
思い出せない、ということはそれほど重要なことではないのかもしれない。
「そのギルドが気になりますか?」
「いいえ、少し不思議に思っただけです」
全ての資料を読み、決めかねた私は結局一瞬目に止まったギルド“パイオニア”に入らせてもらうことになった。
「ここにされますか。……そうですね、先程自身に制限をかけてらっしゃると教えて頂いたのですが普通の人間では出来ない何か特殊なこと。何でもよろしいのですが何か特別な公に見せて良いことはございませんか?」
「精霊魔法を少し使える事にしています。それ以外は基本無しです」
「分かりました。それでは精霊さんには一部記憶喪失であり精霊と契約をした少し格式の高い家の分家のご令嬢……お名前は冒険者証のままでよろしいですか?」
「はい。純と呼んでください」
「分かりました。では純さん護衛が到着したので紹介致します。入って下さい」
すると扉が開き2人組が来た。
「こちらの男性が勇、女性は莉沙です。宜しければ2人をどうぞよろしくお願いします」
副会長の言葉と同時に初対面の2人が深く頭を下げた。
男は30代前半でがっしり、女は20代後半で細身だ。
「こちらこそよろしくお願いします」
「この2人に関しましては呼び捨てにされて下さい」
「勇、莉沙よろしくお願いします」
「では手続きをして参ります。ご用が職員や護衛を通して伝えて頂ければと思います」
残された私たちは服装について話し合い、袴に歩きやすいブーツというかなり時代が進んだいで立ちとなった。
なぜこの格好なのか。
それは単におしゃれでありこの大地とよく馴染んだものであるからだ。
ちなみにブーツはそうでは無い。
体は祝福で清め、服も霊力で作る。
衣服の記憶を辿り着付ければ完成である。
その頃に急ぎで出来上がった新たな冒険者証を首に下げた。
護衛に言われて知ったのだが精霊状態だと物質体の瞳の色が黒ではなく青くなるらしい。
上書きすることもできなくはないが偽装は苦手なのでこのままにしておこう。
衣服と同時に程よく短めの刀を一振り作る。
見た目は刀だが本質は杖に近く魔法の発動を補助するものとなっている。
衣服が変わったので歩き方や身分に説得力を持たせるために良い動き方を学ぶと1時間ほど訓練をすると少しだけ品のある動きに変われた。
これまでの服や武器は《交換》で適切に処理をしたので荷が少し軽くなったがそれ以上に物が増えてるのは別のお話である。
上の人同士での話し合いが無事に終わりパイオニアの一員になることが出来るそうなので書類と一緒にギルドへ向かうことになった。
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