表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/147

間話[彩花].足

世界にダンジョンとその入り口であるゲートが開いてからまだ数日。あたしは力を受け継ぎ、とある男と行動を共にしていた。

「まだ終わらないの?」

「はい。残り2日ですから急がないといけません」

「そ、別に逃げられてもいいと思うけど」

「そうなった場合1年後、2年後に帰ってくる可能性がありますので」

「別にいいけどさ、あんたも大変だね」

「いえ、彩花さんのお陰で大変助かっていますよ」

 豪邸の一室に佇む1組の男女。その目線の先には老いた男の死体が転がっていた。



 ◆◇


「本日もよろしくお願いします。昨夜は良く休めましたか?」

 ホテルのエントランスにはスーツを着込んだ1人の男があたしを待っていた。

「まあま。んと、今日も5人の内の1人を回収するんだっけ?」

 その影響が国の行末を大きく変え得る人。継承元が絶対に協力関係になるべきだと断言した5人。そんな彼らを求めて2人は北の大地へと来ていた。

「ええ、その予定です。回収するのは2人になりそうですがね」

 一瞬背筋が凍るが彼の顔を見てそうではない事を理解する。

「いい人見つけたんだ」

「子供ですよ。幼い少年です」

 ……ちょっと意味が分からない。

「そんな子供がなんの役に立つのさ」

「素晴らしい欠片を持っているようです。しばらくは何の役にも立ちませんがね」

 役に立たない3年後?6年後?それとももっと先を視ているのだろうか。なんでもいっか。

「それでそいつはどこに置くの?」

「5人の彼のご兄弟のようですので、とりあえず一緒に置きます。お願いしてもよろしいですか?」

 当然、準備はもうできている。

「行き先を教えて」

「場所は——」




 待ち合わせ場所である小さな公園の入り口で待っていると2人の少年がやってくる。片方は昨日会ったばかりの青年。もう1人はただ善良そうなだけの子供だった。



「緊張しちゃってかわいいね」

 本当にこんな子供がなんの役に立つのだろうか?願わくば自分のような役には当たらないで欲しい。そう願ってしまった。



 恐怖が混じった目をするも自分の兄を想ってか言葉をこちらに投げかける。

 多少蛮勇、殺しに来てるわけじゃ無いから違うか。勇気は持ち合わせているようだが体が全く出来上がってない。……あたしが言えることじゃないか。


 私の隣にいる男、辻本はカバンから記憶玉を取り出した。

 早速始めるのか。うん、これが一番手っ取り早い。




 見る度に少し違う記憶を見せられる。

 全く、本当に心配性なんだから。私はもう大丈夫だって。


 記憶を見せられ、地面に倒れていた少年が恐怖に顔を染めながら起き上がる。

 何を見せられたのかな。凄惨なのを見ちゃったかな。



 辻本はとんとん拍子で話を進める。

 下位魂器の実験体。まだ誰も使ったことのない悲しい未来がほぼ確約される道具(アイテム)

 この子も未来を広げるための生贄になるんだ。


 使う前に辻本は青年に少年に対する別れの言葉を勧める。

 きっと君の命も無駄にしないから。そう思いながら大袈裟にリアクションする。

 大袈裟、大袈裟ではないかもしれない。数日で荒んだ心に純粋な彼らのやり取りがきてしまった。

 私の足元で骸骨が私を手招きしている。

 ちゃんとその時になればあたしもそっちに行くからさ、安心しなよ。

 全ての犠牲を意味あるものにするんだと、もう戻れない自分に言い聞かせた。


 レベル1。迷宮(ダンジョン)に蔓延る魔物(モンスター)をたった1体殺せば手に入る(くらい)。次の仕事まではまだ時間がかかりそうだと思いながら自分含めて4人を近くの最寄りのゲートまで跳ばす。


 やっぱり凄いな。超常的なことを実現できる今となっても同行者である彼、辻本の攻撃は力強く頼り甲斐があった。

 少年に自分の時のように1体のトドメを刺させる。辻本が目を閉じた。

 おめでとう、そしてお疲れ様。結末の見えた分の悪い賭けに乗せられることが確定したのだろう。

 あんな子まで使われるなんて、ほんとに変わってしまうんだ。まだ変化の浅い地上を思い浮かべこれからを悲観した。


 少年は下位魂器を使い倒れ込む。球状だったそれはゆっくりと人型へ、少年の形へと姿を変え、変化を止める。

 元の体は……動くんだ。…………え?どゆこと?



 よく分からないままに少年を家まで送り届け私たちは辻本の家に戻った。

 魂器と言うものが全く理解できないまま、辻本と青年をダンジョンへ送り、下位魂器の肉体で眠るように活動を停止する少年にブカブカの服を着せる。

 体が冷たく、心拍も感じられない。髪をひと撫で、作り物らしさを感じるながらもあどけない少年の幸福を祈って部屋を後にした。

ワープの人こと彩花さん。彼女はこれからも継承者の、そして継承者に集められた者たちの足として多くのものを目にすることとなる。


「面白い!」「続きを読みたい!」「連載頑張れ!」などと思っていただけた方は、ぜひブックマーク、⭐︎評価などよろしくお願いします。

作者のモチベーションが上がり作品の更新が継続されます。


誤字脱字、違和感のある箇所など教えて頂けたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ