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地球魔力改変  作者: 443
別章 精霊
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[19].アドバイス

打撲の回復と箪笥(タンス)の日合わせて2週間の時間が経ち、再びダンジョン探索についていくことになった。


「攻撃には防御か回避で対応する」


そう言って少し口調の荒い航弥(こうや)くんが実践しながら説明してくれる。

彼は自分の剣で敵の攻撃を受け止め、押し返した。


「防御ができないなら回避」


体制を整えたゴブリンが再び攻撃にかかってくるが後ろ側に下がって避けたり、剣で防御しながら敵に近づきその側面に回り込んでいた。


「んで攻撃」


まだそれほど血や油が付着していない剣は一撃で魔物の首を切り——落とすまでは行かなかったが敵は絶命した。

床に落ちた魔石を袋に回収しながら問いかけられる。


「分かった?」


「とても分かりやすかったです」


「周りの人を見て研究しなよ。何も考えずに突撃して前みたいになったら次は助からないかもね」


脅すような言葉を話すがそこまで悪い人ではなさそうだ。

教わったことをそのまま戦闘に活用してみる。


敵の攻撃を後ろに下がって回避。

そしたらまた詰めてくるので回避、さらに回避。

あれ?結局これって力負けするなら勝ちようが無い気が……。


「交代お願いします」


考える時間が必要だと感じ仲間に応援を呼ぶと、すぐ後ろに待機していた人が変わってくれた。

周りを確認、みんなはどうやって戦っているのかもう一度確認してみよう。

力任せな攻防をする者。

素早い動きで動作の隙を狙う者。

そもそも敵の射程に入らない者。

そして2人1組で戦う者。

私に出来そうなのは最後のでは無いだろうか。

ならばする事はひとつ。

交代を頼んだ男の子に共闘を持ちかけてみよう。


「あの、一緒に敵を倒しませんか?」


「なんで?」


「私1人では勝てなさそうなので敵と2対1になればいいと思ったからです」


「いい考えだと思うけど俺そういうの得意じゃ無いから航弥に頼んで」


「分かりました」


だめだった。

だからと言って1人では無理そうなので言われた通り航弥くんに頼んでみよう。

ひと戦闘終わったところに声をかける。


「今いいですか?」


「何」


「一緒に戦ってくれませんか?」


「いいよ。俺が惹きつけて後ろ向かせるから切って。いい?」


あっさり。

まるで元からこう答えようと用意していたようにも感じる。


「よろしくお願いします」


「ほら、次来た」


彼は現れた敵に剣で攻撃をするが防がれると腹を蹴り飛ばした。

魔物が立ち上がって勢いをつけて殴りかかって来ると敵の勢いを剣で殺しながら半回転。

こちらにチラッと目配せをした。

攻撃しろと言う合図かもしれない。

急いで距離を詰め、航弥くんが一歩後ろに離れたところで敵の胸部に剣を突き刺した。


「刺すのはあんましない方がいい。近くに別の敵がいる時に対応が遅くなる」


いきなりアドバイスをくれる。


「分かりました」


次はお勧めされた通りに敵を攻撃してみる。

胴体に向けて斜めに切り下ろす。


「いいじゃん。だけどだんだん切れなくなって来るから頭の方狙った方がいい」


言われるままに攻撃を改善していく。

冷静に指摘してくれるだけでもありがたいのだが彼は周囲の警戒、敵の位置調整も同時にこなしている。

相当慣れているように見える。


「一旦1人で戦うから足の運び方をと視線を見てな」


彼の動作、俯瞰するような視線、剣の動き、そしてたまに繰り出される蹴り。

休憩を挟むと同時に見て学べと言う事だろう。

常に成長する意志を示せば案外親身に教えてくれる人なのかもしれない。


「次から挟むから、レベル上がったら教えて」


「了解しました」



だんだんと疲労が溜まってくるが彼の動きを模倣している内に武器が少し軽くなった感覚がした。

ステータスを見てみるとレベルが2に上がっている。


「レベル上がりました」


「じゃあ次は1人で戦ってみ。意外と対等に戦えるから」


言われるままに1人で敵と戦ってみるとあんなに重かった敵の攻撃が僅かに軽減されたように感じた。

力の上昇もそうだが体の動かし方を理解していることもあってかなり戦いやすくなっている。

それもあり勝負は30秒程で決した。


「結構いけました」


「1対1ってのと敵の武器が刃物じゃないから戦えてるだけだから調子に乗るなよ」


「もちろんです」


「じゃあサポートに戻るから」


再び2人体制で1体の敵を挟み倒していくことになった。

が、それも長くは続かず私の体力が底をつく。


「一旦、休憩を、させて、もらって、いいですか」


荒い呼吸を繰り返しながらもう体が動かないことを伝える。


「モンスターはいつでも湧くんだからもっと早くに言いなよ。自分の状態を客観視して自己申告もできないなら迷惑だし、死ぬよ?」


「次は、もっと、早く、言います」


本当に人間の体は不便だ。

武器を振る腕が、踏み出す脚が、呼吸をする肺が、血を巡らせる心臓が動くだけで痛む。

普段は使わない筋肉を使ったり、休みたい時に休めない環境が私の体に鞭を打つ。

壁にもたれかかり剣を地面について少しでも楽になろうとした。


「回復までの時間は?」


「3分欲しいです」


「分かった」


そして時間はすぐに過ぎ、呼ばれて剣を振るおうとしてもまともに体が動かなかった。


「すみません、もう限界です」


「その感覚を忘れるなよ。自分の限界を守ってもらえる環境で知って、“次”に繋げられる。良かったな」


仲間たちに守られながら地上に向かう。

融合は唐突で、初めは自分と同じ程度の仲間しかおらず、自身の能力を見誤ると全滅すら有り得る。

こうして守られながら教われると言うことができる自分は本当に恵まれていると感じながら迷宮を脱出した。

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