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地球魔力改変  作者: 443
別章 精霊
80/151

[13].孤児院生活

次の日、いただいた足具を履き、数時間歩行してあの戦闘民族の街に到着した。

疲れた。

隣って隣まちだなんて分かるはずないじゃないか。

おかげで足が酷く痛い。

門をくぐり内部に入る。

記憶のそれとはやはり様子が大きく変わっており、家がしっかりしたものになっている。

しかもその範囲がかなり広がっていた。

一体どのくらいの時間が過ぎたのだろうか。

でも学校にはシュンがいたしそんなに時間はたっていないだろう。

ならば人間の生産速度が凄まじいのか。


昨日話して決めた孤児院に到着。

ここまで私を連れてきてくれた男性がここの院長をしている初老の男性に伝達して私はここで生活することになった。

副院長だという還暦ぐらいの女性の善意で汚れを落とし服も少し良いものに変えてくれた。

靴下は無かったがそれ以外の下着類もいただけた。


「こちらにいらっしゃい」


そう言われて椅子に腰をかける。


「では、遅くなりましたがようこそ美空孤児院へ。あなたは今日からここで過ごして貰います。独り立ちはしたければ一言いただければいつでも可能です。それとは他に必ず門出をしなければならない期限もあります。期限は18歳になった次の月までの間です。あなたの年齢はおいくつですか?」


年齢?

私は何歳なのだろう?

精霊として生まれてから経った時間が分からない。

この肉体的には16歳ぐらいのつもりなのだけども。


「ごめんなさい。ちゃんとした年が分からないです。でも気持ち的には16歳です」


じっとこちらを見られるる。

まるで何かを調べているかのようだ。


「その言葉に嘘がないと信じましょう。ではあなたは2年後の次の月が期限としましょう」


「ありがとうございます」


「それでは次にあなたは魔物と戦ったことがありますか?」


これも無しで良いだろうか?


「無いと思います」


「その揺れは記憶が無いからでしょうか?それとも嘘を仰っているのですか?」


やっぱりなんか調べられてる。

スキルだろうか、それとも魔道具だろうか。

でもこの体で戦闘はしたことないので無しでいいと思う。


「私はまだ魔物と戦ったことが無いと思います。信じて欲しいです」


「……まあいいでしょう。次です。あなたは私たちに敵意や害意はありますか?」


「それは全く無いです!傷つけようとか考えたこともありません」


「いいでしょう。ここで過ごすには皆が何かしらの責務を果たしています。この紙にいくつかの仕事が書いてあります。この中で今、最もしたいこと。それから自分が能力的に出来るだろうと思うものを教えて下さい」


仕事の書かれた紙がこちらに寄せられた。

おおよそ昨日教えてもらったことと一緒だ。

したいことは戦うこと。

人間の苦労を知るためだ。


「私は魔物と戦うか料理がしてみたいです。ですが自分にできることというと掃除や子守りだと思います。ですが何にしてもしたことが無いので教えていただければ洗濯や肉体労働でもなんでもします」


副院長が頭を抱える。


「あんたねぇ、相手が誰であっても若い子がなんでもするなんて言っちゃいけないよ。でもやる気はわかったわ」


「で、では……」


「魔物と戦ってみたいというのは本当ですか?これは命を賭けるということですよ?」


命を賭ける。

人間からしたらその通りだろう。

でも私は人間視点で融合がどれだけ苦しいものをもたらしたのかを少し知りたい気持ちなのだ。


「それでも戦ってみたいという気持ちはあります」


「武器を持ったことは?」


「ありません」


「誰かに教えを乞うたことは?」


「……ありません」


「体を鍛える努力をしたことは?」


「…………ありません」


「なんもしていないじゃない。そんな小娘がいきなり魔物と戦ってみようだなんて馬鹿なこと言うんじゃ無いよ」


こんな言葉をなげながらもこの人は本当に私のことを思っているのだとわかる。


「ごめんなさい……」


「でもやる気があるのも、素直なのもいいこと。本当に戦いたいと思うのならば自分の体を鍛えなさい。ダンジョンっていうのは人を飲み込もうとするものよ。その中で戦うのなら、準備に準備を重ねる。まずはここでの仕事を教えるからそれをしながら自分なりに頑張ってみなさい。そん後でダンジョン組の子達に戦い方を教えて貰いなさい。さきー!」


呼びかけに後ろの方から『はーい』と返事が返ってくる。

ドタバタと慌ただしい足音の後その人は現れた。


「まりさん何ー?」


「この子新入りだから教えたげて」


「分かった!私はさき、17歳よろしくね」


そう挨拶する彼女は髪をポニーテールにまとめた綺麗な女性だった。


「あなたは名前なんていうの?」


「私は富麗乃純です。記憶がちょっと微妙なのですが気持ちは16歳です。よろしくお願いします」


「珍しい名前だね。まりさんこの子に何教えたらいいの?」


「掃除と洗濯ができるようになったら料理と子守りを教えてあげな」


「はーい。おいで、部屋を案内してあげる」


部屋案内。

その後に仕事かな?


「よろしくお願いします!」



◆◇◆◇



「んで、ここが私たちの寝る部屋。覚えた?」


連続して多くの部屋を紹介されたが十分に理解できた。


「はい。覚えました」


「じゃ、次は仕事ね。まずは簡単な掃除から——」


掃除道具の場所。

それぞれの役割。

子守りの注意点。

毎日洗う物の洗い方とその洗い場。

料理は他を覚えたら少しずつ習えることになった。

それとは別で街にある訓練場の場所案内もしてもらったりその日はお世話になりっぱなしだった。



夕食は芋と豆のスープ。

木の枝で歯を磨き、水の魔道具で満たされる水で水浴びをして寒さに震えながら一日の汗を流す。

就寝時には大勢でそれぞれ薄いシーツにくるまって雑魚寝。

思っていたよりずっとハードな人間生活が始まった。

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