6.覚悟
Tips:モンスター
モンスターと魔物は同じである。人間の敵であり新たな住民。
Tips:スライム
不定形でありぷにぷにしてそうな魔物。普段は丸に近い形をしている事が多い。
Tips:ステータス
自己鑑定とも言う。自分の一部の状態が客観的に見れる。
ダンジョンにはモンスターがいる。
急激に変わりゆく今の世の中に溢れた多くの情報から知識として知ってはいた。
しかしいざ目の前に、想像より何倍も大きな敵意を持って襲いかかって来たらどうだろう。
僕は震えることしか出来なかった。
明らかな殺意、相手に顔なんて無い。
そこにいるのはスライムのような何かだから。
それなのに感じる恐怖。
それは未知から受けるものなのか、はたまたこの後の自分の未来を思うものなのか。
きっとその両方だろう、それでも時間は待ってはくれない。
目にした未来を変えるんだ。
自分がただの餌にならない為にも。
「洵くん大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
「怖いでしょう、ですがそう感じれるというのは正しいことだと思いますよ」
「お兄さんは怖く無いんですか?どうして戦えるんですか?」
「もちろん怖いですよ。それでも戦わなければならなくなるのです。自分は守られて当たり前の存在だ、そう思っている人々は早々に死にます。私はより良い未来にしたいと思っていますが全ての人を守れるわけがありませんし、努力しない人を守るつもりもありません。あなたのためにも私たちのためにも戦いましょう。一回とどめをさすだけで良いですよ」
「……はい」
僕は一回だけ、お兄さんが弱らせたモンスターにとどめをさした。
「頑張りましたね。それではステータスと言ってみてください」
「《ステータス》何か出ました。ゲームのステータス画面みたい」
「よかったです。一度外に出ましょう。亮さん、場所は分かりますか?」
「前は結構テンパってたので覚えて無いです」
「分かりました。……行きましょう。それにしてもよくここから生還できましたね。スライムはなかなか厄介ですから」
「あの時は本当に必死で、運が良かったです」
そう言いながら一撃のもとにスライムを倒していくお兄さん。
強さの秘密は何だろうと思いながらついて行ってると、光が回る場所にでた。
「ここはこのパターンですか。みなさん帰りたいと思いながらこの光に入って下さい。決してこの先に行こう何て思わないでください。それから警察が外に居ることが予想されるので移動を頼めますか?」
「んー、ちょっと待ってね」
ポーチから小さな小瓶を取り出し何本も続けて飲み干すお姉さん。
ポーションだろうか、すっかりファンタジーになってしまったなと痛感する。
「オッケー、じゃ手繋ごっか」
「はい」
「では出ましょう」
帰る事を思いながら光に入った。
「《転移》」
『おいお前達!』という声が聞こえた時には集合場所だった公園の前にいた。
そしてお兄さんはカバンからアレを取り出す。
「最終確認です。洵くん、あなたはコレを使ってくれますか?」
そう僕に問いかけてきた。
もちろん怖さもあるけどあの死への恐怖に比べたら……いや、やっぱり怖いや。
けれども、僕は戦うと決めたんだ。
「はい、でもちゃんと約束は守って下さいね。僕も頑張るので」
「もちろんです。あなたが協力者、仲間であるならば、私は約束を守ります」
「……よろしくお願いします。にいにも一緒に居てくれてありがと」
「ほぼ空気だった気もしなくも無いけどね。洵こそありがとうね。振り回しちゃってごめんね」
「良いんだよ。話してくれてありがとね。それじゃあ」
そう言いソレを受け取り、ソレを使おうと考える。
すると何かが吸われるような、失うような感覚と共に意識が飛んだ。
◆◇
いつもと違う感覚がする。
ベッドが違うのだろうか。
違う、なんだこれは。
あの時に似た感覚がする。
自分の体が自分の意思では動かせない感じ。
僅かに、ほんの僅かにある病院の記憶?
違う、これは僕の記憶ではない。
発病直後の記憶?
だけど誰の。
痛み、苦しみ、脳にダメージを負い体が動かなくなり僕の心臓も遂に止まった。
記憶を失い知識も言語も失って、30秒以上心臓が止まり息を吹き返した僕は果たして元々の僕なのだろうか?
血漿交換もした、普通の何倍ものステロイドで薬漬けになった。
ある時自分の目でものを見ている事を知る。
音の意味を言葉を知る。
僅かに口を動かせるようになり管からではなく口からものを食べる事を知る。
体もだんだんと動かせるようになったがそれと同時に他の人のように歩けない事を知る。
目で動くものを追う、飛んできた風船を叩く、支えられながら歩行訓練もした。
何回もの一時帰宅を経てやっと家に戻ることが叶う。
たくさんのお薬も辛かったけどハチミツと合わせることで全部飲み続けた。
一度知能はリセットと同じ状態になったと教えられた。
僕と過ごしていく中、僕が寝てると思われてる時ににいにが母にあんなの洵じゃないと言っていたのを耳にしてしまった。
そうだ、その通りだったんだ。
僕は偽物だったんだ。
癒しの日、あの日、本物の僕は目を覚ましたのかもしれない。
思えば何度か違和感を感じることがあった。
あのあまりにも変な夢は本物が活動している瞬間だったのかもしれない。
それでもさっきから聞こえる僕の声は偽物の僕に感謝している。
母は僕が支えるからとそう言ってくれている。
何だよ、卑屈になっていたのがバカみたいじゃないか。
僕は偽物だったかもしれない、けれどそんな僕を大事にしてくれる人が居てくれて、本物が僕にありがとうと言ってくれていて、そうだよこの体の人生の約半分が僕の意識じゃないか。
僕は……僕もきっと本物。
あれ?僕の体、心臓が動いてない?
そんなはずはない、僕は生きている。
ちゃんと意識があるんだから。
でも、いつもは当たり前にしていた呼吸をしていない。
夢だ、きっと夢だ。
早く起きなきゃ。
悪夢を見た時は……体を無理矢理起こすっ。
ガバッと上体を起こす。
ここはどこだろう?
僕は見たことない部屋、知らないお布団の上におり、すぐ近くでにいにが寝ている。
僕にはサイズの合わない大きな服が着せられていた。
心臓は、動いてない。
息もしてない。
けれど意識もあるし体も動かせる。
そこで二の腕にあるモノにも気が付く。
これは、腕輪だろうか?
意味が分からなさすぎる。
その時ドアからノックがされ開かれる。
「失礼します。おや、遅くなってしまったようですね」
「お兄さん。こんばんは」
自分の口からあまりにも人間味の、抑揚の無い声が出された。
「こんばんは、少しこちらに来てお話をしませんか?」
そう言われたので大人しくついていく。
この人なら何でも教えてくれる、説明してくれると思って。
部屋から出たらそこはリビングのような空間になっていた。
「あちらに洗面台がありますが、鏡で自分の姿をご覧になりますか?」
鏡に映った自分を見る。
まず髪がショートぐらいから少し伸びていることに気がついた。
顔も特に変わっていない。
病気からあまり肉体が成長せず、幼さが残り髪の影響もあってか男とも女ともとれない、着てる服で違った判断がされそうだ。
その表情は変わらず、喉にあった気管切開の跡が無くなっていた。
最後に股間に何もない。
どういうこと?と混乱しているところにまた声をかけられた。
「いろいろ混乱しているところ悪いですが少し話を聞いてもろいます。結果的にあなたに使って頂いたモノは肉体を作るモノでした。また、あなたに生物学上の性別はありません。申し訳ありませんがその体になった時あなたには服がありませんでした。次に元の体なのですがもう一人のあなたが持っています。あなたのお兄さんから予想を教えて頂きましたがあなたのもう一つの人格だそうです。最後にあなたに……命令します。命令権はまず私、継承者。次にあなたのお兄さんの亮さん。この2名とします。そして、あなたの今の状態を教えて下さい」
9/4再編集済み
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