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地球魔力改変  作者: 443
別章 精霊
71/151

[4].和解への一歩

「早速揉め事を起こして来たのかい?全く君という子は」


「だって人間が私のことを魔物だって決めつけたんです」


「人間からしたら未知の存在というのに変わりないのだから丁寧に接しなくてはならないと分からないかい?」


「私からはなんもしていないですよ。あっちが勝手に勘違いしただけです」


「彼らはこれまでの生活を失い、外敵が現れたことでとても繊細になっているんだよ。大地の記憶を辿れば分かることだ」


「えぇ、面倒です……」


「はぁ、どうしてこうなってしまったのやら。良いかい?早くにもう一度会っておいで。そして謝るんだ」


「なんてですか?」


「驚かせてしまって申し訳ない、自分はこういう存在で敵意はない。うまく付き合うことでむしろあなた方に福をもたらすだろう。だからこれから仲良くしてほしい、という風に伝え何か物をあげるといい」


「分かりました。行ってきます」


「素直でよろしい。自分の力の大きさを、その危うさを良く考えて楽しんで来なさい」


「しょーち」




さっき襲ってきた人間たちがいる場所に移動し可視化する。


‘人間とハイヒューマンの皆に挨拶。いきなり人の領域内に現れてしまいすまない’


各人が驚き武器を取ろうとする。


‘まずは私の話を聞いて欲しい。私は精霊。名もなき中位精霊だ’


自己紹介に驚きや疑い、警戒の色が見られる。


‘我々精霊は基本的に君達と敵対する気は無い。先ほどは私単独の考えなしの行動で驚かせてしまったことを謝罪する。申し訳なかった’


人間側の敵意が若干和らいでくる。


‘精霊とは気に入った人間と契約したり祝福を授けたりするので人間らからすれば害どころか福をもたらすだろう’


どうやら精霊に興味が湧いてきた様だ。


‘故に……’


なんだっけ、大事なことをド忘れしてしまった。

思い出さねば。


‘故にこれより先良き隣人となることを望む’


物、物何渡せば——そうだ!


‘その証として私が空にしてしまったものの類似品を送ろう’


無くしてしまった2振りの武器を思い出し、その形状を模倣する。

人間が喜ぶ様に少し良いものを作ろう。


少しの間の後、品を台に置く。


‘武具をふたつ、そちらに置いておいた。二方、存分に振るってくれ’


霊力で作ったよく切れ、汚れも付かない、しかしそれを使って得た魔力の一部を私に還元される、そんな武具だ。


‘気に入ってもらえると嬉しい’


物の出来栄えに好意的な波動が増えてきた。

ここからは私個人のお願いをしよう。


‘それで相談なのだが——’



◆◇◆◇



個人的な要求とその回答、人間側から精霊への質問の返答をしている内に日はすっかり落ちてしまった。

私は人の姿、形は変わらないが体重を50kgまで落とした器の右腕に水色の布を巻いている。

歩き方がおかしく、服が汚れておらず、魔物が入るとその能力が大幅に落ちる人の領域に入ろうとしないなど、聞いてみれば怪しい点が多々あったらしい。

この水色の布を身につけていれば次から不慮の被害に遭わずにいられるそうな。

人間の歩き方や喋り方なども学習させてもらえたので満足である。


契約者いる街に戻りその周囲を見て回る。

この街はどちらかというと何かしら技を持った大人が多い街だ。

物作りにせよ、武技にせよ、魔力の扱いにせよ現在の人類の上位陣が多く集まっている印象がある。

それから特に子供が良い子ばかりだ。

これはわざわざ選ばれて集められた子供達に違いない。

技の継承が目的か、それとも人間的に優れた者を強くしようとしているのか。


最寄りの平野には数多の集団が形成されている。

それは人間のものも、そして魔物のものもあった。


よく考えればどの街も大体水の確保が容易な位置に作られている。

もしかすると生物には水が必須なのかもしれない。

そうならば水の精霊が人気出そうだな、と思いながら落ち着ける場所で権能を扱う。


私は姿だけでなく、本物の人間に近づくのだ。

そして彼らの記憶の中のような楽しそうな経験がしたい。

権能《変態》、完全変態。


完全に人間にしてしまえば私が私で無くなってしまう。

だから、半分人で半分精霊の新たな種族を強引に作り出す。


できた。

これで、ん?何かが私に干渉してくる。

この星の神が作った規則。

反応しているのは私の中にある残滓、なんの?

なんでもいい、祝福を受け入れよう。

あとは国?

なるほど。

民族、長年その土地に住んできた者同士でまとめようという訳か。

ここにはほぼ日本人しかいないことにも納得だ。

土地に仇なす余所者を元の居場所に戻す。

周囲に受け入れられているかつ良い人はその場に、そうでない人は元あるいは新たな土地へ、と。

ということは新たな大地をどこかに作り出したということだろうか?

これはうまく融合したものだ。

出身地は精霊界。

さて、これで本当に完成だ。

そろそろ霊力がカツカツなので実はかなり危なかったのかもしれない。

中位精霊として維持出来なくなれば力無き下位精霊になってしまう。

それは許容できない。


うーんと、とりあえず私と私で契約してと。

見えた、半人半精。

これをひとつの型にはめて。

これで次の完全変態が楽になる。

器に己を宿す。

しまった、ここからあの学校までかなりの距離がある。

このまま帰るにもこの状態では移動速度が遅いのに加え魔物に出会ってしまった時にやられてしまう。

元に戻ればかなりの確率で休眠確定だろう。


どうしようもないので中位精霊に完全変態し直すと続々と魔力が流れてきた。

送り主は……作成武具がいい仕事をしたようである。

霊力に変換、さらに器からも魔力を吸い、これまた変換。

明日の日の出までには消化し切れているだろう。

どうにかなったので精霊界で少し休憩してからあの学校に戻ることにした。

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