[3].真似
空気中にある微量の魔力を吸収しながら移動を続ける。
目的はこの島国に生きる多くの生物に会うことだ。
美しい動物達と取引を繰り返す。
渡すものは僅かな霊力。
貰うものはその姿。
私たち精霊も“融合”、人間の言う“改変”後に現れた生物と同じく人間の影響を受けやすい。
人間の持つ勝手なイメージを借りなければ存在できないなんてことにならぬよう、自分の姿を集めるのだ。
集めた姿は権能《変態》に集約され、私好みにその姿を変えられる。
姿を貰われた側にも実害はない。
さて、精霊界を活用することでそれほど時間がかからずに姿集めをできたので次は捧げ物を使うとしよう。
収納箇所よりそれを取り出し観察する。
とりあえず圧縮されていたのでそれを解除。
名前は“最上位魂器”。
旧世界の遺物か。
粘土みたいに形を変えられる様だし色々と便利そう。
何よりもこれがあればより物質に干渉しやすくなるのが良い。
器に自身を収め、魂器を起動させる。
最初に模すのはせっかくだし契約者の姿にしよう。
権能《変態》を使い、シュンという少年の姿になる。
器が膨張し目線が固定される。
手を握り、開く。
あるはずの無い久しいという感覚に襲われる。
このままの姿で動くと契約者に迷惑がかかるかもしれないので背を伸ばす。
身長は155cm、体重はどうしようか、重ければ重いほど良いはずだ。
重さがあればおのずと力強く、何かがあっても動じることが無くなるだろう。
100kg?200kg?どうしよう。
重くするにもコストがかかるのでここは間をとって150kgにしよう。
身長はこの先伸ばしても縮めてもいいので後回し。
性別無しで年齢は設定18歳のショートヘアな人間レベル1!
服は霊力で動きやすそうな物を簡単に作る。
これで街に潜入してもバレないはずだ。
いざ人間の街へ!
ここらで最も大きな街に近い森で器に乗り移り、街へと進む。
街を警備している人に見つかったがスルーしてもらえた。
ほぼ全方位見えるのだが多くの人から注目されている。
理由はなんだろうか。
2人の男性が後をつけてくる。
何もしていないのになんでだろう。
街の中心へ向かう途中で目の前から人の領域になることに気が付き立ち止まる。
勝手に入って良いものか。
そう考えているとつけて来ていた2人の男性に馴れ馴れしく肩を掴まれる。
「やぁやぁ、君どこからきたの?」
攻撃的かつ注意深く私を探ろうとしてくる。
私は人と争うつもりはないのだけれど、違った、この2人はハイヒューマンか。
「私はあちらの森からやって来ました。旅人です」
丁寧に答えるが相手側が持つ疑いの波動は増すばかり。
「ここまで長旅大変だったでしょ、外の話に興味あるから俺たちと一緒にお茶でもしない?俺の奢りでさ」
そう言って人の領域側にじんわり押されるのでそれを拒否するかのようにその場に立ち止まる。
体重を150kgにした恩恵が早速出た。
「ええと、私は街の様子を見たかっただけなので今日はもう帰ろうかと思っているんです」
「いつもはどこら辺に住んでんの?」
「今日起きたばかりなのでまだ定住地は決めていないんです」
そう答えた瞬間に相手の殺意が確立した。
魔力による身体強化をすると同時に私の首を目掛けてこれまた魔力で加工された短剣を振る。
相方の動きに合わせるようにもう1人は人間の心臓がある場所目掛けナイフを振った。
洗練された良い動きだ。
私は武器が器に触れた瞬間、その武器を消した。
元から何もなかったかの様に彼らの手には空気のみが残る。
動揺は一瞬、すぐさまその拳を握りしめ私に襲いかかって来る。
「魔物は殺す」
男性のその言葉に驚き距離を取っていた人々までもが武器を構えた。
ここにいるのは戦闘民族だったのか!
そう思いながら勘違いを解くために両手を上げ、声を出す。
「ちょっと。違うよ。私は魔物じゃないからやめて!」
「戯言を、死ね」
こうなってしまっては仕方がない。
人間とは敵対したくないので器を元の球体に戻した後に離脱し収納する。
突如その場から対象が消えた人間は驚きながらも警戒をやめない。
可視状態になって周囲の人々に向けてテレパシーで話かける。
‘私は精霊!魔物なんかじゃない!全く失礼な人間達!あなた達のことなんてもう知らない!’
それだけ言ってさっさと精霊界に帰る。
全くひどい勘違いだ。
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