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地球魔力改変  作者: 443
別章 精霊
68/151

[1].死 続序章 鋭意更新中

序章終了時点からの軌道修正版を続序章として書き起こします。

正道(?)で読みたい方は別章を飛ばし続序章へ移動願います。【鋭意更新中】

魂器組第4小隊での戦闘も段々と息が合ってきた。

そんなある日の真夜中にそれは起こった。

ひとつの予言が、その日が来てしまったのだ。


要らぬ騒動を回避するため一部の者にしか伝えられていない。

その予言は魔物による街への襲撃。

何故か街の中心部に敵は入って来れないらしいがその外側、街の大部分が敵に飲み込まれる可能性があるとのこと。

運良くここに来れた人でもその全員を安全域に退避させるのは不可能。

そしてわざわざ退避させる必要もないと判断された。

残酷な弱者の切り捨てである。


真夜中、待機と指示されていた私達にけたたましいサイレンと男性の声が響きわたる。


『緊急警報、緊急警報。多数の魔物が街に接近中、魔物による襲撃です。直ちに戦闘準備をして下さい。敵は南方向から現れます。繰り返し——』


準備されていたかの様に街が明るく、数日前に設置された魔力電灯が一斉に辺りを煌々と照らし始めた。


「お前ら、敵襲だ。全隊員小隊ごとに整列。用意ができたとこから南へ迎え!行動開始!」


近くで固まっていた私たちはすぐに南側へ向かった。

南からは警報でパニックを起こした人々が一心不乱で逃げてくる。

その波を割るように人の流れに逆らう。

上を見れば人が空を走っている。

いつの間にか人は空を自由に移動できるようになったらしい。


人々の慌てようとは裏腹に魔物はまだ街の外縁部に到達していなかった。

最前列に並び武器を構える。

お互いの間隔を適度に開く。


外側ほど灯りは少なくあまり視界が確保出来ない。

そんな中敵は物凄い速さでこちらに襲いかかってきた。


がたいの良い敵の、さらにひと回り大きな敵の持った剣から波状の斬撃が飛んでくる。

急速に拡張されるそれの速度は凄まじく、初見では当然凌ぐことなど出来る訳もなく。

——頭が飛ぶ


多少臆病な方が生き延びる。

小隊長の言葉だっけ?


その場で倒れる。

やっぱり無理だったんだ。

未来を変えるなんて出来っこ無かったんだ。


ただ私は既に人間ではない。

下位魂器が器である半人なのだ。

魂の部分が破られていないのだからまだ、まだ倒れっぱなしになる訳ではないのだ。

この時の為に交換したかなり新しい器のため、まだ魔力残量はかなりあるはずだ。


《変態》で切り飛ばされた頭の上側を生やす。

周囲を見れば隊員たちも倒れている。

頭から足先まで、あの一文字の斬撃範囲はかなり広いらしく、周囲が大変なことになっている。


多ければいいもんじゃないと敵に思っていたこともあったのだがどうやら私たちも所詮数だけ、では無いようだ。

数人、しか見えないが戦列から飛び出て魔物とやり合っている人がいる。

私の前方にいるのは——兄?


手にある武器は、薙刀?

普通の薙刀も良くは知らないが、兄の持つ薙刀は穂が大きく、更に石突にも錐のような鋭利なものが確認できる。

そのどちらもの長さ、大きさが変化し、敵を次々と倒している。

いつの間に習得したのか、動作も美しく敵を殺す事に無駄の無い動きだ。


しまった、見惚れている場合ではない。

少しでも被害を少なくする為にも戦闘用意せねば!


過酷な戦闘のせいか、兄の武器は砕ける。

それを補う為に誰かが敵との間に割って入る。

その隙に兄は後ろへ下がった。

兄や他の強い方が作ってくれた戦線を崩壊させないよう、全力で戦おう。



◆◆◆◆



この敵達と対等に“戦える”はずなかった。

気持ちで状況が変わる優しい世界では無いのだ。

盾で上からの攻撃を受ければその衝撃で体の形が変わってしまう。

横から攻撃を受ければ吹き飛ばされる。

タメれる時間を与えてしまったら盾ごと体を両断される。


理不尽な強さだ。

そう言う私も敵からすれば面倒くさいかもしれない。

へこんでもそのまま殴りに来るし、切り飛ばされても体を見つけて《変態》で接合すればまた戻ってくるのだ。


それでも魔力は尽きるものだし、いつかは攻撃も魂の部分に——当たった。


これはダメなやつだ。

そう思った瞬間に私の意識は途切れた。



◇◇◇◇



「こんなにも良い状態なのに、このまま死なせてしまうなんて勿体無い」


「……」


「やっぱりいいかな?」


「御心のままに」


「おいで、じゅん。僕らと共に長い時を生きよう。世界の行く末まで」



この世とは思えない程に美しい自然で満たされた世界に少年の姿を模した者がひとり小さな光を大事そうに手のひらに包む。


意識が呼び覚まされ、思考を読み取られることで意志疎通が成される。


‘やぁジュンくん’


誰ですか。


‘僕が誰であるかは重要ではない。にしても僕らにこれほど都合の良い国がここにもあるなんてね’


何をするつもりなのですか。

悪いことはダメです。


‘分かっているよ’


それならよかった。


‘普通になりたかったのに特異な存在になってしまったね’


半人は大勢います。

特異では無いです。


‘そうじゃないよ。君は今から霊的存在になるのさ’


よく分かりません。


‘お互いにきっと利のあることだ。ね、分かってくれただろう?’


受け入れれば私は生き延びることができ、悪い存在には感じられない彼らは自由が得られる。

それならよく分からないが受けるしか無いだろう。


‘分かってくれてよかったよ。代わりと言っては何だけど君の願いをひとつ、私のできる範囲で叶えてあげよう」


これまで器によって抑制されていた感情が溢れてくる。

多くの想いの中から願いを伝える。


‘願いは『空が見たい』か、良いだろう’


私を薄い球体で包みどこかへ行ってしまったと思った瞬間に帰ってきて、戻るとまた何かで包んでもらえる。


‘よかったね、僕で必要な人数票が集まったみたいだ’


雲が無くなって空が見えるようになると言うことですか?


‘そう。今頃きっと綺麗な星空が見えているよ’


よかった。

そういえばあなた方の利って正確には何ですか?


‘そうだね、僕らの利は観賞することしか許されて居なかった領域に干渉できるようになることだ’


よく分かりませんがそれって良いことなんですか?


‘そうした方が僕らは早く力を得ることが出来る。信仰まで得られる可能性があるしね’


意識が朦朧としてくる。


‘もう君の時間も無い。ゆっくりと、思う存分休むといい’


ありがとうございました。

さようなら。


‘ああ、さようなら。次に会う君はもっと美しくなっているだろう’


再び意識が失われた。


その者は慈しむ様な表情で小さな光を大きな力で包み込む。


「さてと、どうしようかな。僕直系の精霊になるのならば、それなりにはしないとね」


その声に反応するように虚空から御付きが現れる。


「私としましては御身を大切にして頂きたく存じます」


「全く君は心配性だなぁ。安心して、そういう風にはならないから」


「言わねば確実にそう致しますでしょう」


「でもさ、言わない方が君たちも動きやすくなったんじゃないの?」


その空間にいる数多の精霊にそう呼びかける。


「何を仰せられる。あなた様の多大な犠牲の上にある自由など——」


彼らからしたら当然で定番の回答だ。


「分かってるって。でもさ、僕らの事情に付き合わせることになってしまうんだ。このくらいは、ね?」

身体が冷え反応が失われた時、人はその者が死んだと、死んでしまったのだと知る。

しかしそれはただ、脆弱な人間の目線からであって、その命は新たな世界に進んだだけである。

弱い自分を守るための幻想だと理解していても尚そう信じたい。



別章エピソードタイトル番号の振り直しをしました。25.5/14


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