49.人の可能性
「予言的中、4-1氾濫しました」
「3-4すら1ヶ所も抑えれてないって言うのにどうすんだよ」
「どうしようもないですよ。私たちは弱すぎるんです」
「予言では全滅って言われたけど無理やり行けばよかったんじゃ」
「無茶言うなよ。そんなの死ににいくのと一緒だぞ」
「そうだ、俺たちが死んだらそれこそ日本が終わる。だから今は少しずつ力を蓄えて耐え忍ぶしかない」
「ちょっとすいません。みなさんステータス見てくれませんか?」
「いきなりなんだ。後にしろ」
「いえ、本当に、ちょっとでいいんで」
「なんだこれ、進化?」
「これどうすりゃいいんだ?」
「ちょっと押してみます」
「どうだ?どうなんだ?」
「やばい、眠い。ただ体の底から力が湧き上がってくるような。すいません寝ます」
「おい!起きろ!」
「やめろ、寝かせておけ。これも未来の分岐点だ」
「予言聞いてきたんですか?」
「そうだ、ステータスの種族欄がこれまでと違くなってるやつは全員押せ。進化だ」
「別の場所でもいいですか?ここではちょっと」
「別にいいぞ、ただ進化しないと言う選択肢は無しだ」
「俺も寝ます。すいません」
「いや、大丈夫だ。それでいい。我々はただ見放されたわけではなかったのか」
「人間は自然淘汰というより強制淘汰って感じですかね?」
「まじか。完了しなきゃどうにも言えんけどこれならまだ魔物に対抗できるかもってこと?」
「お前絶対進化できるだろ。さっさと寝ろ」
「お前はー?」
「情報を整理する。いいからさっさと寝ろ」
「へいへーい、んじゃお先ー」
「お前ら進化できるか?」
「無理ですね」
「失礼だがレベルは?」
「教えてくれたら教えますよ」
「それでは別室に向かうとしよう。ついてきてくれ」
◆◇◆◇
「壮観だなー」
「組長何が見えているのですか?」
「こっちこいよあっちの方見てみ」
今日は7月1日、そうダンジョンゲートが開いてから丁度3ヶ月なのである。
本日はダンジョンに向かわないことをおすすめされていたので一部隊員以外は皆が更地で休憩をしている。
組長が呼んでいるので隊員たちがゾロゾロ移動すると視線限界距離あたりに何も服を着ていない人がいた。
それも大勢。
「組長何みてるんですか戻りますよ」
そう言って拠点マークの看板あたりにまで引っ張り戻す。
「いやいきなり服消えたんよ。わざとじゃないって」
「そんなの関係ありません。失礼でしょう」
「はー、残念なこった。行かん方がいいって警告されてたのって“改変”前の物が消えるからか?」
「そうかもしれないですね、魂器組員も衣服無しが見受けられますがどうしますか?」
「どうしようもないだろ。服ってめっちゃ高いんだぞ?隊員全員に服配布なんてしようとしたら今のポイントの100倍あっても足りんわ。それに隠さなきゃならんものなんぞないしな」
「どうしようもないですね。人間も戦闘に行こうとするならその前に回復薬を《交換》する人多いですし、魂器も次の器と武器防具に自分の衣服。……何もできないですね」
「お前は助けに行かんの?」
「あちらに行ったところで私にも何もできませんよ」
「だよなぁ、少ししたら勝手に性別で区分けして落ち着くだろ。冷静じゃないところに行ってもろくなことならんからな」
「お前らー服なくて恥ずかしい奴らはあっち方向に少し遠くに行ってていいぞ。揉め事は起こすなよ」
「「ザーッス(ありがとうございます)」」
「服なし人間は可哀想だな。ない奴はしばらくないままだぞ」
「共感性羞恥でおかしくなってるかもですね」
「あんの?」
「いえ、もう嬉しい悲しいぐらいしか感じれないです。でも感情は理解できます」
「だよなぁ。……服がなくなるってことは体温調節がキツくなるってことだろ?これだけで人死ぬぞ」
「雨ですしね」
「梅雨明けいつかなー。あともうちょい、2,3週間か。それまでには人間も羞恥心なくなってると思うか?」
「思えないです。それこそ世代を跨がなければ無くならないと思います」
「そうかぁ。まぁ何とかなるだろ」
「自分たちは大丈夫だからって楽観的ですね」
「俺も服なくてもいけるけど……むずいなぁ」
「協会本部に向かわなくていいのですか?」
「とりあえず行くか。お前は来るか?」
「どっちがいいですか?」
「じゃあいいわ、いくおー、ひろつぐーちょっと任せる!」
そう言って組長は本部へ行ってしまった。
「えーと、魂器組総数634で不在42と。そんで交換持ちは605名中外出36名と、これ本当に合ってるんですかねぇ」
「分からんけど報告通りならそうなんだからそれでいいよ。うちはほんとにでかくなったな」
「ええ本当に。初期とは見違えるほどですよ」
2人が何話し合っている。
魂器組はもうそんなに大きくなったのか。
考え方によってはそれだけの人数が助からない怪我から命拾いしたということだ。
協会本部から何か聞こえてくる。
魔道具のスピーカーからだろう。
「えー市民の皆様に吉報です。ステータスと唱えると冒険者の方々のように自分のスキルなどが確認できるようになっていることを確認しました。更に、幾つか既にポイントが入っているらしいのでご自分の服を購入するとをおすすめします。しかしながら高価な服の交換は後々の自分の首を絞める行為と同義ですので、ご注意なさって下さい。更に冒険者の方々へご報告があります。内容につきましては協会本部前の立て看板にて30分後を目処に張り出すのでぜひご覧なさって下さい」
たまに流れるよりも長めの放送を聴き終え、組長が戻ってくるまで待つと幸い5分ほどで帰ってきた。
「報告ついでに30分後に張り出される情報もらったから興味あるやつはこっちこーい。服着てない奴は200~300ぐらいの服がおすすめだから何でもいいなら丈夫だけが取り柄の服を《交換》してからな!」
看板を中心に集まった隊員に向かって朗報(?)がもたらされた。
「よーく聞けよー。何とーーなな何とーー」
そう焦らす組長に隊員から『焦らすなー』とヤジが飛ぶ。
「何と人類初めての進化が確認されました!拍手!」
おおーとざわめきが起こり大きな拍手が場を包む。
「純粋な人間様の場合はレベル50になっていることが進化条件らしい。それで人間から“上位人間”になれるらしい。ちなみに!魂器な俺らにはその通りではないようだ」
皆が続きを待つ。
「俺ら魂器の進化条件は母数が少なすぎんのとそもそもここにいるので9割超えるから今から探す!俺は進化先が出ていた。俺の進化先は“半人”だ!進化条件を満たしてる奴はステータスの種族欄が明るくなってっから一目で分かる!今から進化先がある奴とない奴で分ける、俺の正面右側が何らかの進化先有り。左は無しだ。はい!全員ステータス確認次第行動始め!」
ざわざわする中でステータスを確認する。
ステータス
個体名:じゅん 種族:人間-進化可能(半人) レベル:14
スキル:下位自己鑑定
交換
装備:下位魂器
隷属の腕輪
召喚の腕輪
メイス
バックラー
背嚢
本体消耗度:53/100
種族欄が明るくなっていて、タッチすると進化先に“半人”と表示された。
組長の右側に移動するとやはりこちら側が圧倒的に少なかった。
「進化先がない奴も落ち込むな!見てみろ。古参ばっかだからそんなもんだ。進化先ないやつは解散!もうダンジョン行ってもいいぞ!」
そう言うとこちら側に向き直る。
「次は進化先が半人のみは右側。それ以外もしくは半人とそれ以外のどちらもが該当なら左!移動!」
私は引き続き右側に居続けた。
左側はたったの3人。
右は30人強だ。
半人のみが選択できる人はその場で進化との指示なのでそれを選択する。
途端に立つことも不可能なほどの脱力感、そして睡魔。
私たちは久しぶりのその感覚に身を委ねた。
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