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地球魔力改変  作者: 443
序章 移ろい
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47.エゴ

《交換》保有者が増えた為、部隊の再編成がされた。

組長と私、他6人。

もう一つの小隊は今日一緒に戦った隊員と他3人。

どちらも8人である。

初めて一緒する隊員達とまた一日背中を預けて戦うのだ。


組長の全体指示がされ、1時間強の休憩時間が残っているので自由行動を行う。

メイスと盾を左に持ち、1人で明るい方へと向かい情報を求める。

ギリギリ建物と認識しても良さそうな土か何かで作られた建造物、協会本部があった。

夜遅いからか建物に人は多くない。

警備をしている人に一瞥され、中に入り私服の受付員に声をかける。


「魂器組所属のじゅんといいます。今日は継承者の方に呼ばれてますか?」


「じゅん君ね、今日もお疲れ様。奥の部屋にいるよ。ついてきて」


案内され、マスターとその隣のお爺さんに会う。

『それでは』、とだけ言って受付の人は向こうに戻ってしまった。


「そろそろ来ると思ってたよ」


「マスター、本日もお疲れ様でございます。何か御用はおありですか?」


「またマスターかい、ばあちゃんとよんどくれ」


「申し訳ございません。先先代の命令ですのでご容赦願います」


「……命令は絶対、嫌なもんだね」


押し黙るしかできない。

命令を破ればあの苦痛が待っているのだから。


隣の男性と何か話をした後に継承者はこちらに向き直った。


「それはそうと、ばあちゃんもそろそろ寿命だから次に受け継がなくちゃいけないんだよ。次はこの人、私の主人。ちょっと乱暴だけど根はいい人だから寄り添ってあげてほしいねぇ」


「言われるまでもございません」


「じゃぁもう十分話したし、外に行くとしようか。あなた、よろしくね」


泣きながら首を横に振る男性を置いて、私たちは外へ出た。

お爺さんが来る前におばあちゃんに質問をする。


「覚悟とは、そんなにも簡単にできるものなのでしょうか?」


「そうだねぇ。そりゃ怖いし辛いよ。でもねぇ私がするしかないでしょう?誰かがしなくてはならないこと。そして私が選ばれた」


巾着から黒く濁る透明な球体を取り出して言う。


「これを見て、自分でもそうなると見えてしまうのだから。でも心残りがあるとすれば、爺さんを1人残して逝っちゃうことだね。そして次の継承者にしちまうことも。あとは、あとは子供にもありがとうって言って抱きしめてあげたかった。孫にも抱っこして大きくなってねってもう一回言ってあげたかった。……どうしてかしら、もう覚悟は決まっていたはずなのに、こんなにも涙が出てくるなんて」


込み上げる激情のままに4代目に壊された玉よりもとても小ぶりで黒いビー玉のようなものを持ちながらそう言われる。

あれも誰かの記憶なのだろうか?

覚悟なんて簡単に決めれるはずがないのだ。

それでも自分の中でどうにかそう決断していたのだ。

自分が見ねば、伝えねば、繋げねば最悪な未来になると知ってしまっているから。


お爺さんがやってきておばあちゃんに話しかける。

それに泣きながら答え、謝り、願う。

私も、話し方は機械的の方が良いだろうという自分ルールの勘違いを指摘し、全力でこの数週間を守ってくれたあばあちゃんに感謝を伝えたい。

死にたくないのに死ぬのよりもずっと楽で簡単だろう。

それでも伝えたくなった。

自分のエゴだろうか。

そうだろう。

それでも純粋に感謝を伝えることはしてもいいと思う。


更地の外れに向かい、物の引き渡しを終える。

指輪すら外され、もう言葉が通じないのに私に何か言ってくれる。

今までありがとね、だろうか?

私も言うならここしかない。


「おばあちゃん、こちらこそありがとうございました」


そう言った。

後悔は——痛い痛い痛い痛い!

笑顔も苦しみも表せない顔。

表情でバレることはないだから体をそのまま動かさないだけでいい。

おばあちゃんは顔を顰めてお爺さんに何か言い、そのほおにキスをする。

そしてしゃがみ、髪をどかして首を出す。

何かを叫ぶ。

その瞬間、お爺さんは剣を振り下ろした。

もう大丈夫だ。

慟哭する8代目の横で倒れ、もがき苦しむ。

人々を起こさないように必死に歯を食いしばりながら。

両腕を抱え、身を捩らせる。

まだ、まだ足りないと言うのか。

痛い、苦しい。


苦痛は本来の時間よりも何故か長く感じる。

痛みが引いた頃、私の腕は変形し、歯は無くなっていた。

この怪我も時間が経つか器を変えれば全て元通りだ。


「お前が余計なことを言わなければ!お前が黙っていれば!この野郎!」


痛みが引いて来たので立ち上がった私にそう言って蹴飛ばされる。


「お前がいらんことを言うせいで、あいつは私との時間を減らした。お前がいらんこと言うせいで!それを言って、苦しさを変に我慢してあいつの前で、すまし顔でいようとするからあいつは私に早く切れと言った。ふざけるな!なぜ最後の時間くらい満足にくれないんだ?なぜあんなことを言ったんだ!言え!」


「誠に申し訳ございません。私の自分勝手でした」


「ああそうだろう、自分のその気持ちが、人の寿命を縮め、幸せを奪ったんだ!どうしてくれるんだ。あいつは、あいつはもういなくなってしまったんだぞ!」


私のせいで。

私がよかれと思ってした行いのせいでこんなにも悲しむ人が出てしまった。

そうか、やっぱり私は言われた命令に従ってればいいんだ。

それが正解なんだ。

誰の足も引っ張らず、誰も悲しませない。


謝罪に謝罪を重ねる。

怒りの視線を向けてくるお爺さんにご挨拶をし、協会本部まで連れ帰る。

ザアザアと降り続ける雨に、この痛みと悲しみを洗い流してもらえないだろうか。

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