45.下へ下へ
入場料金をそれぞれ払い、ゲート上に立ちダンジョン内へ転移。
近くにダンジョン協会本部が移転される3-1ダンジョンの内部は私がこれまで入ったダンジョンとそれほど変わりはなかった。
敵は最も基本的と言ってもいいかもしれないゴブリン。
2階層までは基本的に無手で3階層から棍棒を用いてくる。
5階層からは木製の盾持ちが若干現れ、6階層でついに刀剣類を持った敵が出てきた。
このダンジョンは数日前の現地調査で6階層までの階段を調査済み。
それでも地図など作っていないのに加え、迷いに迷った末に発見した形だったので今回も結構迷い続けた。
3-1は最も敵が弱く安全だ、と言われているが内部はダンジョン(迷宮)と呼ばれるに相応しいほど複雑で広い。
人間が何も対策せずに内部に入った場合、水不足で倒れてしまうのでは無いだろうか?
少しでも迷う可能性を低くするために地図を書く必要がありそうである。
地図があったところで自分の現在地も方角も示されていないのでどっちにしろ迷うか。
それほど広いとは言えないダンジョン内において7人で行動するのはあまり良くないかもしれない。
大人数で行動するということは自分の取り分のポイントが減るということだ。
それでも死んでしまったらそこで終わりなのだから人数は必要か。
5階層で手慣らしを十分にした後に6階層に向かう。
敵が刀剣類を持っていることに違いはないが動きは鈍いし集団行動も下手だ。
階段を見つけた後も小隊で6階層を徘徊し続けた。
これまで戦ってきてだんだん確信に変わってきたことがある。
階層を移動した後少しすると敵があちらから寄ってくるのだ。
気のせいなどではないと思う。
3-1氾濫収束作戦の時も他の人よりも私と組長が多く狙われていた。
私達はセルフ集敵機なのかもしれない。
全員の同意のもとに7階層に降りる。
それらの敵でも全員がゴブリン棍棒から卒業し、強力な武器を持っている私達の敵ではなかった。
だんだん隊員たちが油断をし始めているらしく、武器の扱いや立ち回りが若干雑になってきた。
通路で挟み撃ちにされても、小部屋で囲まれても私達は危機なく跳ね除けた。
これは少し危ないかもしれない。
自分たちは強いと勘違いする人が現れなければいいのだが。
そう思っていたら案の定『下に行かないか』という提案がされた。
それに組長は多数決をとり賛成多数で更に奥に進むことが決まった。
7階層で宝箱をひとつ見つけたのも良くなかったのだろう。
宝箱欲しさも相まって正常な判断ができていないと私はそう思った。
しかし小隊員はなかなかに強く、8階層の敵も次々と蹴散らしていった。
既にここにまでの間に全員が鉄盾を得た。
敵の持ち物を奪ったのだ。
殺した敵は基本的に死した瞬間にドロッとした液体のようになって地面に溶けてゆく。
初期はあった小さな石、名称“魔石”も敵から落ちなくなった。
しかしそれは望まないからだともう理由が判明している。
敵の死体が欲しいと願えば死した敵は暫くその場に倒れたままであるのだ。
魔石が欲しいと願えば倒した後に落ちるが魔力がほんの少し入っただけの粒を利用する技術をまだ知らないのでいらないのだ。
それらと同様に敵の武器を願えば倒した後にその場に残る。
そうした武器を得ればそれはもう自分のものとなるのだ。
その法則は人間にも通用される。
人が何らかの敵にダンジョン内で殺された場合、その肉体は敵同様地面に溶け消える。
そうでない例もあるらしいがよくは知らない。
荷物が一時的に残るだけ敵と違って優しいのかもしれない。
遺品を持ち帰れる可能性があるのだから。
順調に進み、宝箱も2つ発見した。
中身は全て組長が持っている。
押せ押せな雰囲気のまま再び賛成多数で奥に進むことになった。
私は2回とも反対なのだがうまく行かないものだ。
9階層に降りるにあたり組長から注意事項が話された。
まずは8階層にもいるが9階層は弓使いが増えること。
魔法使いも少数だがいること。
9階層の敵は素早い動きと強力な攻撃を行なってくる個体がいること。
最下層であるのとどこかにボス部屋と言われる大きな扉で区切られた部屋があり、その中にはボスと言われるダンジョン内で最も強力だと思われる敵個体とそれを援護する取り巻きがいるため発見しても無闇に突撃しないこと。
それらの注意事項が話され、小隊面々は気を引き締められ9階層つまり3-1の最下層に向かう。
ここまでで仲がある程度良くなったからか最初よりも会話が頻繁に起こるようになった。
やはりただのクラスメイトや仕事仲間などではなく命をお互いに預け合う仲間というのは変なことをしない限り信頼関係が普通より早く構築されるのではないかと思う。
私はたまに話しかけられるのに返答するだけで自分から積極的に話すことはない。
考えてみてほしい、中学生が大人同士の会話に入っていけると思うだろうか?
決してできないというわけではないだろうし緊張しているわけでもない。
だが話の内容がわからない仕事の話だったり趣味の話だったりするのだ。
なんて会話に参加すればいいのかわからない、でも別に無理にわざわざ参加しようとしなくてもいいと思っている。
毎回進むのに反対する臆病だが足手纏いにはならない子供とでも思っていてくれたらいいのだ。
足を引っ張る存在ではないということが最も大切なのだから。
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