42.今の自分にできること
魂器組では夜の10時過ぎにはなるべく協会本部ビルに集合することが呼び掛けられている。
今日も増えた魂器組員の割り振りと明日以降の活動について話された。
ギルドが出来てから古株と誰かを呼べるだけの時間は経ってはいないが比較的長く所属している隊員に、協会本部からの指示で私とやっさんは関東周辺の未だに氾濫が続いているダンジョンの氾濫収束に駆り出されることになったのでその期間あるいは帰ってこなければ今後しばらくの間そのメンツでギルドをやりくりしてほしいということを伝えられ、そのやり方や臨時トップの指名、明日から隊員に向かってほしいダンジョンなどが通達された。
《交換》についてや体交換についての注意事項なども伝えられたのでなんとかなるだろう。
なんとかしてもらわねば困るのだ。
やっさんに上に連れて行かれ、話をされる。
「いきなりすまんな」
「いえ、私は構いませんよ」
「そうか。俺たちは明日の8時から俺らの他に46人で3-1氾濫ダンジョンに行く。目標はゲート付近に居る地上の魔物の掃討。後は担当の人が魔物が出てこないようにしてくれるらしい」
「1ヶ所だけで終わりですか?」
「いや、最低2ヶ所最高4ヶ所が目標で期間は最短5日だ」
「それならば3-3の氾濫に間に合わなくなるのではないですか?」
「俺たちはそこに行っても戦力の足しにもならんてさ。強いやつはもう予想もつかんほどにやばいんだろうよ」
「そうですか、そうですね。私たちは持久力があるだけで一芸あるわけでもないですしね」
「適材適所ってやつだろ。俺たちが入る合同部隊の指揮官は“魔声”使えるみたいだから向こうでの指示とかについては特に心配しなくて大丈夫だぞ」
「それはよかったです」
「人数も合計48だろ?2ヶ所も制圧できると思うか?」
「出来ます。勝算があるからその指示が来ているということだと思います」
「そうか。よし、頑張るか。やらなきゃならんこと、やっとけよ」
「はい、もちろんです」
やっさんと別れた後は継承者の元へ行く。
これから行うことについて、いくつか質問させていただいた。
なぜこのタイミングで3-1の氾濫収束に動くのか、それはこれまでも他の人たちがしてくれていたことだが3-3が氾濫するのを考えるとこれからさらに戦力が必要になる。
これからの世では誰もが当たり前に戦闘をこなせるレベルにならなければいけないがある程度安全に成長できる環境を増やさねば早いタイミングで戦力がが不足するかららしい。
ついでに私が3-3に向かった場合、何も出来ずにすぐ死ぬらしい。
ランカーと呼ばれる人の戦い方は既に多少努力した程度のただの人にはどう足掻いても真似できるものではないそうだ。
それこそ魔法を操ったり、攻撃動作に見合わぬ衝撃を与える攻撃をするようである。
魂器組の隊員でもパイオニアメンバーでもなく、継承者の補助員という立場なら教えてもらうことができたが現在の日本人の最上位帯はレベル40~45らしい。
そのレベルの人はダンジョン出現前の常人の約2~3倍の力を持っているそうな。
魂器の私たちは体が壊れないように自分の持つ力をセーブする必要がないため思いっきり攻撃をすることができたりするがそういうことではないのだろう。
本部職員の方に明日からの作戦について改めて聞いた。
他の人々は数日前から聞いていたらしい。
別に私たちに準備の時間など必要ないのだがもう少し早く教えてもらいたいものだ。
魂器組組員の大半が22時にダンジョンへ向かうのでそれを見送る。
彼らは今日から3-1に向かう。
私たちが帰ってくるまでどれだけの人数が生き残っているのだろうか?
これからも共に進んで行けるよう、戦いに向かう彼らの背を見て祈る。
見送るのということはやはりもどかしく感じる。
では彼らの近くにいれば危機が発生した時に助けられるのか?
私は強くない。
近くに居たとしても、どれほど祈ろうとその行動で何か物事が良くなるということはない。
それでも立ち向かう人々に無事でありますよう祈ろうと思ってしまうのはなぜだろうか?
ただ縋っているのだろう。
それしか彼らのためにできることがないのから。
協会ビルの1階では多くの人々が眠りについている。
そんな彼らも僅かな朝日で目覚めるものが出てきた。
十分とは言えないだろうが休息を終えた内の46人に合流し部隊編成がされた。
私は盾部隊。
敵を誘き寄せる魔道具を守りながら戦うそうだ。
魔道具、なんの意味があるのか分からないが魔力が撒き散らされているように感じる。
この魔力が敵を惹きつけるのだろうか?
盾部隊のリーダーも“魔声”は使えないらしく、これから共に戦うメンバーの内唯一総隊長のみにそれが使えるらしい。
暑苦しい言葉を話したその人の号令で開かれた“扉”を次々と潜り私たちの戦場に向かった。
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