40.新たな器、変わらぬ仕事
僅かに明るい部屋で目覚めると側にやっさんがいた。
なんでここにいるんだろ、と思いながら声をかける。
「組長おはようございます。覗きですか?」
「おうお早いお目覚めだな。いやー眼福眼福、可愛い子がこんこんと眠っているのを見るのは最高よ」
「変態ですか?」
「違うとでも?」
「え……」
どうしよう、返し方が分からない。
しょうがないので近くに置かれている前の身体で着ていた敵の血肉でドロドロの服を着る。
「そういうお前も堂々と着替えてるじゃんか」
「恥なんて感情もうよく分からなくなってますし何よりやっさん見たそうだったので」
「うーん、だんだんとその感覚が分かって来ちゃってるんだよなぁー。魂器こわ。にしてもお前ほんとにちっこいし細いよなぁ。ほんとに中学生か?」
「失礼ですね。ちゃんと中学生ですよ。なんでこんなに小さいか聞きますか?」
「教えてくれるっていうんならぜひ」
「小学1年生の時に病気して治す為に薬ずけにされた副作用です」
「背ぇ伸びんくなる副作用なんてあんの?」
「私自身あまり教えられていませんがステロイドとかっていう薬の副作用みたいです」
「はーよく分かんねぇわ。あれ、ちょっと答えんくてもいいけど質問していい?」
「構いませんよ」
「性欲ってあんの?」
「あー、馬鹿騒ぎしてる男子やヒソヒソ盛り上がってる女子ほどでは無いと思いますが多分年相応にはあったと思います。でも比較基準がないのでどうにも言えないですね」
「たつ?」
「たつ……いいえ」
「なるほんね、知識はあるけど年相応というよりかわ顔相応って感じか」
「脳がいっぺん萎縮しちゃったせいでどうせ普通の人みたいにはなれませんよ」
「え?思ったよりヤバめな病気だったのかよ、申し訳ない」
「安心してください。魂器を使ってる時点でもう何もかも人間とは違いますから。やっさんも仲間ですよ。だってほら3大欲求もうないですよね」
「全く無いってわけでわないけど確かに、モノもないし性別魂器か」
「そういうことです。ところで今は何時ぐらいですか?」
「大体6時20分。8時からでもダンジョン行くか?」
「他にすること無いのでそうしましょう」
「“目覚まし”は俺が入れてるから行かんくていいよ」
「ありがとうございます。魔力切れてませんでしたか?」
「そりゃね。でも俺らも自分の命かかってたんだしまぁいいでしょ。お前《交換》残ってる?」
「少し待ってください。……はい、レベルは2ですが……2?」
「良かった良かった。大丈夫それ俺もだから。なんでだかねぇ」
「組長もそうなのですか。安心しました。《交換》も残ってますしこれからは少し楽になりそうですね」
「体になれんきゃいけんのと時間に追われてんのもあって最初が一番きつそうだな。魂器組どんだけ残れるんかね」
「器のタイムリミットのお話をされてもダラダラ戦闘する人はしますし何より最近は人が多いですからね」
「あれだ、殺しをこういうのはおかしいが言ってみれば限りある資源を奪い合っていると考えてもおかしく無いんだよな」
「生存率が高いエリアに出現するモンスターが資源ですか。敵から落ちる石はなんなのか分かってませんが倒せばポイントにはなりますからね」
「嫌な世の中になったもんだ。よっしゃ、行くか」
「先に下に行ってて下さい。私はしないといけないことがあるので」
「あーはいはい。じゃ先行ってるわ」
やっさんを先に行かせ、私は継承者の元へ向かった。
ノックをして挨拶をすると暫くしたら鍵が開かれる。
内側へ入り1枚目の扉を閉め、鍵を掛ける。
そうすると2枚目の扉の鍵が開かれるのでそれを通り、その人に会う。
「よく来たねぇ、じゅんちゃん」
そこには初老の女性が待っていた。
「マスターこんにちは。本日は何かご用がおありですか?」
「この時間帯に戻ってくるのは初めてだねぇ。無事に生きてたみたいで安心したよ」
「私の未来ですか」
「自分をもっと大切にしなさい。大事なことだよ」
「承知しております」
「そうかい、あとはそうだねぇ“ゆりかご”に居るおじちゃん方は分からない、出来ないというのが恥ずかしいと思って怒る人がいると思うけれど、それは恥ずかしくもなんとも無い。むしろ当たり前だって言ってあげてほしいねぇ」
“ゆりかご”とは初心者育成ギルドである。
高校生から木製の棍棒を振り回せる程度の体力と協調生がある男女が所属でき、条件つきではあるが中学生までもを受け入れているが何かをしでかしたら3アウトで追放される名前のわりに結構厳しい。
戦ったことなど一度もないがこれからも家族に食わせてやれるように、と思う方やこんな世の中だが生きたいが為に、つまり程度や思いはそれぞれだが戦うことに向き合っている人たちがこれから生きる術を学ぶ場所である。
実戦、訓練共に男女別であり、自信がついたら独り立ちするべし、居残りすぎでも追放するよ、という風に紹介されている。
「了解しました。担当の者に伝えておきます」
「学校は9月ごろから開くことになったし、もう大丈夫そうかねぇ。あんたも行くんだよ学校」
「後進育成の場は必要だと思いますが私もそこにいるのですか?」
「確かに、いたと思うよ。頑張ってね」
「了解しました」
「うーん、難しいけれども誰か、何かを信じるようになったらいいのかねぇ。まだまだこれでは足りないね。でもあと少ししたら良くなる」
「そうでございますか」
「最後はいつも言っていることだよ。わかるね?」
「強くなると痛みを感じなくなる。痛みを感じれなくなるということはことは鈍感になるということ。鈍感になってしまうと人の痛みも分からなくなってしまう。これから更に鈍感になってしまうけれど弱い人の痛みを心で感じられるようになってほしい、です」
「そう、大体あってる。これは大事なことだと思うの。だからばあちゃんが死んで、ばあちゃんを忘れてもこの言葉は忘れないようにね。なんとなくでいいから」
「はい、肝に銘じます」
「それじゃぁ行っておいで。気をつけるんだよ」
「はい、失礼します」
私は部屋を後にした。
伝えられてことを担当の職員さんに伝えておき、組長の元へ行く。
魔物に対抗する力を手にする為に。
ステータス
個体名:じゅん 種族:人間 レベル:2
スキル:下位自己鑑定
交換
装備:下位魂器
隷属の腕輪
召喚の腕輪
「面白い!」「続きを読みたい!」「連載頑張れ!」などと思ってくれた方は、ぜひブックマーク、⭐︎評価などよろしくお願いします!
作者のモチベーションが上がり更新が早まるかもしれません!
誤字脱字、違和感のある箇所など教えて頂けたら嬉しいです。




