39.お買い物
《交換》は器ではなく自分の魔力を消費するスキルなのかもしれない。
なぜならばスキル使用中は僅かだが魔力が無くなっていく感覚がするからだ。
“目覚まし”に器の魔力を無理やり持っていかれる感覚とは比べるまでも無いほど不快ではないがどちらにせよ使わされてる感じがする。
よく考えてみたら《下位自己鑑定》も気付かないほど微量に魔力を使っているのかもしれない。
理由はそもそもなんの対価も無しにスキルが使えるはずがないのだから。
私たちはこれまで自分で使いこなしていると勘違いしていただけで、実際はスキルを使わせられていたのかも知れない。
“目覚まし”に大量の魔力が必要なのも使用者のスキルや魔力を目覚めさせる以外に得たスキルを使うだけの魔力ももらっているから、とも考えられそうだ。
考え方次第では下位魂器に使わせられて生きているのだし、だからどうと言うわけではないがこのような気づきは大事だと思う。
その思いつきを心の内に留めておきながら《交換》で物色をする。
毎日ある程度戦えば人1人は最低限の飲み食いが出来るのかもしれない。
ただ小さな子供がいる家庭は?
“癒しの日”に怪我や病気が治った人が多くいる様だったがもしかしたらいる治らなかった人は?
その後に怪我や病気になってしまった人は?
毎日戦闘していたら衣類も直ぐに破損してしまうだろう。
その時の服は?
探せばある程度なんでも出てくるがあれだけ戦って3000Pしか得られないのだからこれからどう生活しろと言うのだろうか?
食料品、衣類、生活用品、武器防具、戦闘活用できそうな道具。
我々日本人が当たり前に消費していた物はとんでもなく高価なものになってしまった。
今の日本人に道具を作れる人はどれだけいるだろうか?
衣服は?食事は?家屋は?
だからこそご年配の方々の知恵や工夫が必要と言っていたのか。
先進国と謳われても大切な基礎があまりにも脆弱になってしまっていることにようやく気付かされるのかもしれない。
重い話は置いておき、必要なものを探していく。
私たち魂器使用者は斬撃系にめっぽう弱い。
弱いのは人も、であるが。
ならば防刃素材の戦闘服を買えば魔力攻撃を除けば最強なのではないだろうか?
防刃服は……あるが高い。
それに防刃系の特徴などを全然知らないので交換できたとしても実用性の低いものが来ることだろう。
警察官の防刃チョッキとかがあればこれと同じレベルの物、と強度の指定ができそうだがあいにく持ち合わせていない。
他に必要な物、あったらいいもの。
甲冑とかがあればそれこそ刀剣類に勝りそうだが高い。
良さげな物は大体高いのである。
と言うことで今回はメイス1つと下位魂器3つ。
メイスの値段は耐久性が上がることを願って下位魂器と同じく750Pのものを。
そして魔力満タン下位魂器お値段750Pを3つで2250P。
最後に良さげな手袋でも……400Pの予算で買えそうないい手袋がない。
そうだった、これまでのお店で当たり前に売っていたような物は高いんだった。
手袋を諦めて合計4点3000Pのお買い物をした。
下位魂器は2つを協会内に預けておき、残りの1つはボロボロリュックにしまっておく。
メイスを手に持ち重さを確認。
重心が先端部分に偏ってるけどそれほど使いづらそうではない。
これまで使ったゴブリン棍棒もボロリュック行きだ。
残りの交換ポイントは429P。
交換ポイントって何が評価されたポイントなんだろうと今更思いつつお買い物を終わった。
魂器組は純人間の時のように休む癖がある人はそれなりにいるが、実際の疲労は無い。
だからこそ“個人交換”を使って契約社員の様な形で1日や一定期間の労働、荷物持ちや契約パーティーの休憩時間を作るためにその間のみ戦う戦闘補助の仕事を受け付けたりしようとしているらしい。
値段設定をいくらにするのか、前払いか後払いか、それとも前後での分割か、なども考えねばならずやっさんの頭がパンクしそうになっていたりもする。
人間同様に気持ちだけでも人間な私たちに生きやすい仕組み作りを考えてくれているのだ。
22時になりその時間から再びダンジョンへ行く魂器組員とその他少数は生み出された扉を潜りダンジョン付近まで移動した。
私の所属している小隊は組長ことやっさんとのペアパーティーである。
ここでは魂器組が付近にあまりいないのでやっさんが特に深く考えずとも話ができる息抜きの場でもある。
「新しい武器最高です」
「いいね、俺はただただ疲れたわ」
「それは疲れた気がするだけでは無いでしょうか?」
「精神的にさ。年上にああゆう口調、前なら天地がひっくり返ってもしないんよ」
「ある意味ひっくり返ってしまいましたね」
「そうなんよね。まぁ時間が経てば慣れるとは思うんだけどね」
「でも私は組長って感じがしていいと思いますよ」
「ならいいんだどね。組長交代はいつになる?」
「組織と世の中がある程度安定した時がいいと思います」
「ほんといつになるやら。まぁ嫌いじゃ無いんだけどね」
そんな他愛の無い会話をしながら戦闘をする。
「そういや三角時限石1つのダンジョンが何箇所か氾濫収束されたらしいよ」
「それはここら辺ですか?」
「どうなんでしょ、関東ではあると思いますけどあんま分かんないっすね。でもこれでこのダンジョンの人口が多少よくなるんじゃ無いですか」
「日中はすごい人が多いですからね」
「ついでに嫌なこと言いますが予想ではあと1週間経たずに3-3が氾濫するみたいですよ」
「私たちはまた応援に行く感じになるのでしょうか?」
「それはーどうしたい?」
「私たちってあんまり死なないそこそこ重要な役じゃないかと思うので行った方がいい気がします」
「まぁどっちにしろ応援要請は来そうなんよね。そして氾濫阻止に失敗したら更に生きづらい世界が近づくと。なら行くしかないかなぁ」
「残念ながらまだまだ対応できる人は多くないと思われますからそうですね。私たちもどんな敵なのかまだ分からないのですが行くしかないですね」
「あれだわ、スライムは絶対嫌」
「スライムって倒し方よく分からないです」
「めちゃくちゃに攻撃するか核を破壊するか。でもその距離3-3スライムならこっちを食おうとして来そうじゃない?」
「そんな気もしますね。……スライムってもしかして私たちと似てるんじゃないですか?形は人によりけりですし沢山殴られたら死ぬ、みたいなところが」
「考えたくもない」
「それに数あるダンジョンの中でわざわざ倒しずらい魔物のいる場所には行かないと思います」
「もしスライムダンジョンが氾濫する中で一番東京に近かったら?」
「それは、協会の偉い方がその判断をしないことを信じましょう」
「言い方はめちゃくそ悪いんだが今ダンジョンに全く来ないやつって俺からしたらただの家畜なんよ」
「何故そのように思われるのですか?」
「何もせん奴らがこの先の戦力になるかもしれんからって食料配給を受けてんのよ。そんであれが足りないこれが足りないって喚くもんだから人の役に立つと思われて飼われている家畜と変わらんと思うわけよ」
「それはご自身で見聞きしたことですか?」
「違うけど……すまん、今の聞かなかったことにしといて。なんも確かじゃないことに対して変に怒ってたわ」
「はい、何も聞きませんでした」
「まーこれからは普通に生きたいならば戦うしかないしな。過去に作られた服はいつか一気に壊れるらしいし」
「服が?それはどこ情報ですか?」
「協会にある予言ポスター情報」
なるほど6代目のか。
「信頼できる情報筋なだけ困りますね」
「あそこには全くの嘘が書かれたことないからなー。ずれてんのはあったけど」
「そこはあくまでも予言なのでしょうがないと思います」
「……そろそろ消耗度やばいでしょ」
「はい、かなり。戻ったら交換しようと思います」
「残りなんぼよ」
「4です」
「馬鹿やろう、すぐ戻るぞ」
思ったよりも消耗度が減っていたからか急いで協会に連れ戻されてしまった。
ちょっと乱暴な話し方だが変にかたいやっさんよりも今の方が断然いいと思う。
残り4、それを見てもまだ半日は動けると思ってしまう。
器の替えがあっても使わなければ無いも同然なのは分かっているが1つ当たりのコストが高いことを知ってしまったので倹約気味になってしまっていたかもしれない。
数字が0になれば自分は死ぬ。
無くなって消えた人を見たことがあるのにそれで自分が死ぬというビジョンが見れない。
下位魂器の副作用として危機感が欠落してきているのか、それともただ単に戦いで頭がおかしくなっているのか。
全然違うことだが雑談しながら戦える程度には強くなったことには自信を持っていいのかもしれない。
ステータス
個体名:じゅん 種族:人間 レベル:10
スキル:下位自己鑑定
交換
装備:下位魂器
隷属の腕輪
召喚の腕輪
メイス
バックラー
リュック
本体消耗度:4/100
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