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地球魔力改変  作者: 443
序章 移ろい
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33.初めてのペア戦闘

共用のタブレットで昨日の異変情報局の動画を見る。

調べたらいくらでも出てくる動画の内から無加工のものを再生した。

まとめるとまもなく多数のダンジョンの氾濫が再び各地で起こること。

当然ながら前回同様魔物が街へ出て来ること。

電気系統が使用できなくなること。

車両などが動かせなくなること。

それらを踏まえた上で都市部に避難することと一般人であっても敵と戦闘することが大切だと呼びかけられた。


「『生き延びる為に外に出て仲間を求めろ、自分たちの思っているよりも世界はずっと広い』って言われてもなかなか難しいと思いませんか?」


「いきなり環境に慣れろというのは厳しいと思いますけどこれからの時代の戦力となる若者たちに向けた言葉としては良いんじゃないですかね」


「確かにそうですね、小学生から中学生に上がっただけでも随分世界が広がったように感じましたがそれでも自分の世界はあまりにも狭いその範囲でしかなく、それしか見えずに生きることをやめてしまう方もいますからね」


「苦しい時は視野が狭まることも相まって全部諦めてどうでも良くなってしまう気持ちも分かりますがね」


「いろんな人がいるのは分かっていますが私としては自分なりに精一杯生きてほしいと思います。生きたくても生きれなかった人々を見てきたので何というか、残念に思います」


「この話はやめにしましょうか。私らがどうこう言っても意味のないことですから」


「それもそうですね」


「ずっと気になってたんですけどこの番組って予言っぽいことたまにいうじゃないですか。あれって誰が言ったこと何でしょうね」


「分かりませんが言われたことは大体起こるのでちょっと前に教えてくれてありがたいなぐらいに思っておけば良いと思います。私は隣の部屋に1分ほど行って来るので少し待ってて下さい」


ほんの少しだけ席を立って“目覚まし”に魔力の補充をした。


「戻りました。やすひささんが使いたい武器とかはありますか?」


「そうですね、できるなら片手剣が欲しいですね。この棍棒は少し短いので」


「ではそれを目指して頑張って下さい。換えの体が必要なことも忘れないようにして下さいね」


「そりゃもちろんですよ。これからの時間何をします?」


「自由にしてもらって構いませんよ。私は自分の魔力操作の練習をします。明日が氾濫日でなければ敵と戦闘をしに行きましょう」


私がそう言うと魔力操作について興味を持った様子だったので自分が教えられた通りに伝えるとそれに集中し始めた。

自分なりに魔力を動かして鍛錬をする。

これをすることでどのような利点がある、と言うわけではないが大切らしいので続けるのだ。



◆◇◆◇



テレビでは被害人数や様々なニュースが報じられている。

そんな映像の中に今日も安定している様子のダンジョンが映し出されていた。


「今日は氾濫なさそうですね」


「なんでです?」


「9時過ぎたので」


「9時?あぁそういや前の氾濫はそうでしたね」


「ダンジョン行きますか」


「そうしますかー、10時ので?」


「はい、そこそこ遠いらしいですが近々氾濫する予定のダンジョンまで扉を開いてくれるらしいのでそれにご一緒させて貰いましょう」


「扉ですか、どこでも○アみたいなやつですかね?」


「スキルらしいですよ。短時間で大人数を遠くに送り届けれるスキル。便利そうですね」


やすひささんことやっさんとは暗い時間帯に沢山会話をしたので意思疎通はバッチリだ。

ちなみに身長180超のがっしりさんである。

これから氾濫後もしばらくはあちらにいる予定だ。

予備の体はひとつだけ持ってきている。

そもそもギルドルームにある予備も残り片手で数える分しか残っていない為遅かれ早かれこういうことにはなっていただろう。

あそこにいてはもう既に足手纏いということは分かっている。

それに同じ条件の人と共に戦う方が何故か気楽だと思えてしまうのだ。



私たちと一緒に扉(重厚感のある見た目だった)を潜ったのは20人を超えた。

たった20人かもしれないが武器を携帯し、戦う覚悟ができている人がいることが喜ばしい。

ダンジョンゲートを前に最終確認をする。


「ここから先は命の保障が出来ないですが行きますか?」


「結局このままだと地上のどこもがそうなるんじゃないですか?今更ですね」


「行きますか」


「うっす」


危険なことは純人間よりも私たちがする方がいい。

この考えは私たち2人の一致した思考だった。


「多いですね」


「そりゃそろそろ氾濫ならこんなもんじゃないんですか?」


私たち以外にも調査のためかダンジョンに入っているパーティーが2つある。

すごく新鮮だ。

私たちは数時間1階を回った後に下に降りた。


「拳や打撃武器持ちの攻撃では耐久全然下がらないっすね」


「刃物で切られたらごっそり持っていかれるので気をつけて下さいね。私たちは少し頑丈な風船みたいなものですから」


「風船すか、そりゃ心許ない」


敵の武器を奪い自分に適するものを探しながら休みなしで戦闘を続けた。

この階も粗方倒し切ったと思っても何処からかこちらに走り寄ってくる敵が現れる。


「そろそろ下にいきません?この体ならほんとに負ける気しないんすよ」


落ち着いた様子でそう言うが自分の経験からそれはやめることにした。


「そう調子に乗って下に行くと痛い目に遭うのでもう少しここにいたほうがいいですね」


「了解です。今んとこ何時間くらい戦ってるんでしょうね。6くらいですかね」


「分かりませんがそのくらいな気がします。消耗度は80切ってませんか?」


「まだ大丈夫ですよ。俺は生身の時も2階までしか潜ったことないんですけどじゅんはどのくらいすか?」


「私は単独では3階までですね。そこで油断して足を切断されて危なかったです」


「痛々しい、それは生身で?」


「いえ、その時にはもう魂器でした。だからこそ今生きてるんです」


「そりゃそうですか。魂器と分かってても驚くのにその背格好で生身チャレンジしてたらやばいですからね」


「身長少し分けて下さいよ」


「できたらいいんですけどね、まぁ可愛いからいいじゃないですか」


「男ですよ?」


「性別なんてないでしょう?」


「それはそうですが……」


「まぁほら、この体魂の器と書いて魂器のたかが器ですからこれより上位のなら外見弄れるようになることに望みをかけましょう。ところで単独では、とわざわざ言ったってことは集団なら更に深くに行ってるんです?」


「そうですね、それなら4階まで行ってます。敵が魔法を使って来るので私達なら即死にます」


「ほーう、魔法の対応ができる人間が既にいると?それは未来が明るくなりそうですね」


「未来は、厳しいですよ」


「だと思います。でもほら、俺が盾を獲れたように先に進むには一歩一歩コツコツですからね」


「ひとつずつですか。そうですね。今からゆっくり地上に戻りましょう。時間も知りたいですから」


安全を優先して2階層で引き返すことにする。



地上は既に夕方になっていた。

街をあるけども家々に灯りは無くそこは無人であることを示している。


「寂しいですねやっさん」


「そうですねー、こうやって放棄地帯が増えるのを見ると人間の居場所がどんどん追いやられてるって実感しますね」


「うんうん、お兄さんも寂しいな」


突然の声の主を求め視線を後ろに回す。

そこにいたのは昨日お世話になった20代ぐらいの男性だった。


「あなたは本部の?」


「そうそう、覚えててくれたんだ!嬉しいね。訓練室にいたお兄さんだよ」


「……お兄さんっていつからおじさんなんでしょう?」


「え、なに?そんなに老けて見える!?お兄さん悲しいなー」


「そうではありませんが、あとあれです。どうして女の人へはおばさんでもお姉さんって言わなきゃいけないんでしょう?」


「おぅー、なかなかの質問だね。それはお兄さんも不思議に思ってたけどお兄さんは歳を取ってもおじさんって呼ばれたくないからお姉さん、お兄さんって呼ぶかなー」


そう答える男性にやっさんが質問を投げかけた。


「貴方はどうしてこちらにいるんですか?」


「んー?そうそうそっちの質問を待ってたんだよ。お兄さんは氾濫に向けて前泊してるだけだよ。予想じゃ近くの9時ぐらいに氾濫するらしいからその時になったらそこの道をまっすぐ進んだところまで下がるんだよ?遅れたら死んじゃうかもしれないから気をつけてね。それじゃーねー」


明日の日付は12日、前回が何日だったかは忘れてしまったが三角形の“時限石”ひとつごとに3週間の猶予が与えられていると考えるならばそろそろだろう。


「行ってしまいましたね」


「そうですね。そろそろダンジョンに戻りますか」


「早めに10まで上げたいですしそうしましょ。ちなみにレベルはおいくつです?」


「少し待って下さい《ステータス》、私は6です。やっさんはどうですか?」


「俺は4っすね。そういやレベルが下がった時スキルはどうなるんです?」


「すみません、私もまだ分からないんです?」


「あぁ、そういやそうでしたね。まぁお互い頑張りましょう!」


そして2階層で夜を越した。


ステータス(確認時)

個体名:じゅん 種族:人間 レベル6

スキル:下位自己鑑定

装備:下位魂器

   隷属の腕輪

   召喚の腕輪

   ゴブリン棍棒

   バックラー

   リュック

本体消耗度:70/100

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