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地球魔力改変  作者: 443
序章 移ろい
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32.戦闘訓練

呼ばれた場所は海岸で疲れた様子の4代目とひとりの女性がそこにいた。

会釈をしてから話し出す。


「遅れて申し訳ありません。マスターご用は何でしょうか?」


「……やっぱ海っていいなぁ」


「自然の音はリラックス効果があるそうです」


「そっか。……好奇心に勝てなかったわ」


「もう残り時間が僅かなのですか?」


「そおっぽい。何すんにしてもうまくいかないわ」


「……」


「今暇だった?」


「はい」


「絶対ウソっしょ。いいや、最後はここが良かったんだ。海を見たら悩みも苛立ちも自分すらもちっぽけな存在だって思えるんだ。前までは星空とかも良かったんだけど最近は晴れないからさ。まぁ上等じゃね?いいじゃんか、気分いいわー」


そう言うと私に指をさして言う。


「こいつが魔導人形とか言うやつ。サポートロボみたいな感じ。呼べばどっからか来てくれて話し相手になってくれる。なんかあればこいつに聞けばいいと思うよ。色々知ってそうだし。予備の見せたし、あとは引き継ぎかぁ」



予備とは何だろうと思っていると4代目は指輪を外し、巾着袋と一緒に女性に渡す。

それでこの女性が5代目になることを確信した。

暫く波しか聞こえない静かな時間が続いた。

そして、巾着袋から女性が長い剣を取り出し継承を完遂する。

4代目は(ちり)のように崩れ去りこの世を去った。

人に手をかけたのが大きな衝撃なのだろう。

5代目はその場で崩れ落ちるように座った。



気持ちが落ち着いたのか指輪などのアクセサリーをはめ話しかけられる。


「これで話せる?」


「はい、聞こえます。マスター、ご用はなんでしょうか?」


「私もあんな風に死ななくちゃならないんだよね」


「これまでの方々はそうでした」


「怖いなぁ。……この見える中で大事そうな事を言えばいいんだよね」


「その通りです」


「ほどほどに頑張る。もう戻っていいよ。早く帰った方がいいんでしょ?」


「そうですがその前に、先代の方は最後にどのような事を言ってらっしゃいましたか?」


「『死ぬって救いなのかなぁ』って言ってたよ。どうしたの?」


「何でもございません。ありがとうございます」


「じゃぁ帰っていいよ」


「はい、簡単なお話などでも構いません。会話や相談がしたくなった時にはご遠慮なくお呼びください。応答が出来ない時、遅くなる時もございます。それでは失礼します」


代替わりが早すぎると思いながら元の場所へ帰還した。


「じゅんさん待ってましたよ」


「お待たせしました。訓練しに行きましょう」


「どうしたんです?なんか声色が暗いですよ」


「何でもありません。少し昔を思い出してしまっただけです」


自分が死ぬ時はどのように死ぬのだろう。

継承者のように骨すら残らず、自分がこの世から消えるのは嫌だ。

そう思っても言えるはずがないのだ。


職員さんに部屋まで案内してもらい、資格のある人に空間に入れてもらう。

中には構造物がほとんどなく、仕切り用の突起物だけがあった。

そのうちのワンスペースを借りて戦闘訓練をする。


「用意はいいですか?」


「いつでもどうぞ」


「では行きます」


自分と同じ体ならば相手の弱点は分かっている。

戦闘で最も辛く感じるのは視野の狭さだ。

私自身の視界が上下左右20度程度である。

目で情報を得ているわけではなく、視界は方向をかなり変えられるが最初はとても難しい。

そう分かっているので相手が打ち合いに慣れてきたと思ったら相手の周囲を移動する。


「見えなッ」


「初めは頭を動かせばいいと思いますが慣れると視界だけを回す方が早く相手に焦点を合わせられますよ」


「それが難しいんですよ」


「練習あるのみですね」


初めこそこちらに反撃をしてこなかったが打つにつれて相手も攻撃をしてくるようになった。

これはとても良いことだと思う。

変な気遣いなどいらないのだ。


「このッ」


「上手くなってきましたね」


「そりゃこんだけやり合えば当然ですよ」


「いい体だと思いませんか?」


「そうは思えませんねっと」


「力みすぎですよ。力は入れすぎない方が早く動けます」


「その調節が難しいんですよ」


「こんなに戦ってるのに疲れないっていいと思いませんか?」


「確かに長所ではあると思いますけど前の方が100倍はマシでしたよ」


「分かります。でもこれからお世話になり続ける体なので良いところを探した方が精神的にいいでしょう」


「良いところと言えばあれですね、戦ってたらいつもはハイになってたんですけど訓練だからか意外と冷静でいられますね」


「そうですね、余裕が出来てきた様子なのでもう少し早く動きます」


「そりゃないですよ、こちら盾なしなの忘れてませんか!?」


「敵は待ってくれませんよ」


疲労も負荷も痛みすらも感じないからできる動きを続ける。

生身でするとなると一瞬で足首を痛めそうだ。



この空間には私たち以外にも6人ほど居たが今では2人、それも1人は寝袋を広げて寝ていた。


「そろそろ一度やめにしますか?」


「あーそうですね。気づけば……何時ですかね?」


「分かりませんが寝る時間ではあるみたいです。私たちも退室させていただきましょう」


その言葉への返答はやすひささんではなかった。


「まだやっててもいいですよ」


「……話せたのですか」


「ほんのチコっとですがね」


返答の主はずっとこちらを眺めていた男性であった。


「良いもの見せて貰いましたよ。あれだけ戦えるんですね」


「ありがとうございます?」


「もう出るんですか?まだ中に居てもいいですよ」


「私たちの為に待っていて下さってるように思えたのでそろそろ出ようと思います。ありがとうございました」


「はーい、では一緒に出ますか。こちらへどうぞ」


水晶玉の方に呼ばれ肩に手を置かれ、部屋から出た。

時計は既に1時を指していた。


「きっとですが周りに良い影響を与えると思うのでまたご利用なさってください。あと昨日の異変情報局はお知らせ満載だったので見てみたらどうでしょう?」


そう言ってまた向こうに戻ってしまった男性に頭を下げ、“目覚まし”室の奥の待機部屋に向かった。

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