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地球魔力改変  作者: 443
序章 移ろい
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29.『代償』の気づき

お前の様な奴は散々見てきた。

自由を求め迷惑を掛け、自分は関係ない、悪いのは環境のせいだと自分に言い訳を続ける。

この景色を見て、これが未来の景色と知ったらお前は今からでも周りに迷惑をかけるだろう?

だからお前みたいな奴はさっさと死んでしまえばいい。

あの子はいい仕事をしてくれたね。

お前も、死ぬんだよ。

お前は選ばれてしまったんだよ、お前の言葉だろう?

『運が悪かったな』というのは。


そう言われると燃える街から景色が様々な光景がコマ送りのように映される。

そして蔑む様な声。


お前も『運が悪かったな』。



そして現実に引き戻される。

初めて体験した記憶の継承に尻餅をつく継承者は正気に戻るや否やすぐに私めがけて襲いかかってきた。

人から向けられるその動作に怯んだ私は殴り飛ばされ馬乗りにされた。

ありったけの罵声と暴力。

『死ね』と言われても淡々と『その命令は受け付けれません』と答える私に何を思いついたのか不敵にわらう。


「なら『苦しめ』よ」


その命令の瞬間、私の全身は今までの不感が嘘のように激痛が走る。

全身が痛い、息が出来ない。

痛い苦しい。

全身を悶えさせる。

表情が苦悶に満ちたことに満足したのか『苦しめ』と嬉々として連発する継承者は私の手から落ちた曇った球体を手にする。

そして『こんなもん』と叫び『ぶっ壊してやる!!』という声と同時に地面に叩きつけた。

硬質的だったそれは嘘の様に粉々に砕け散り、その一部が継承者へと吸い込まれ黒い首輪模様になった。

刹那、継承者は首を抑えて(もが)き暴れ出した。

とてつもなく長く感じた苦しみは『なし!なし!』という叫びにより終わった。

痛みや苦しみは元から無かった様に引き、涙などでぐちゃぐちゃになった顔で命令された。


「さっさと帰れよ、クソ人形」


思いもよらぬ命令にすぐに応答しその場を後にした。




ダンジョン協会の仕事部屋に戻された。

いつの間にか無くなっていた目隠しの代わりに適当なタオルを頂き、頭に巻く。

買った中でもお気に入りだった服は自分の手でボロボロにしてしまったので渡されたジャンバーをありがたく着させていただいた。


仕事中、何故か体調不良者が警護側に続出したため少し人員の補充で慌ただしくなったくらいで、朝まで何事も無く仕事が出来た。

朝になり再びお迎えに来た彩花さんに連れて帰らせてもらう。

マジックルームに戻ると借りたままの上着を着た私を見た琴子さんが真っ先に駆けつけ琴子さんの部屋に連行された。


「で、じゅん君。何があったの?」


「何もありません」


私は騙せるはずの無い嘘をついた。


「そんなはずないでしょ。怒らないから正直に言って」


「もう怒った顔をしてます」


「心配してるの。正直に、ね?」


「ちょっと暴れたくなったので暴れただけです」


「うそ、よね?」


「本当です」


「いやいや、誰が自分の体を傷つけてまで暴れるのよ」


「私です」


「あのねぇ……私は魔力が感じれるのよ、だからあなたが怪我をしているのがわかるの」


そう言い借り物のジャンバーのファスナーを開けられる。


「ほら、こんなボロボロにして。誰にされたの?」


「私がしました」


「?」


困惑した表情の琴子さんに畳み掛ける。


「どうしょうもなく嫌な感じになったので自分にあたりました。服をボロボロにしてごめんなさい」


「え、そ、そう。まぁ感情的になれたのはむしろいいことなのかしら?そう、今回はそういうことにしてあげる。体から魔力が漏れてるから早めに交換しといてね。うん、何かあったら相談して?私が嫌でもメンバーみんないい人たちだからきっと聞いてくれると思うわ」


「はい、今後気をつけます」


途中から本当のことを言ったからか上手く話を逸らせたようだ。

『感情的になれたのはむしろいいこと』、やっぱり私は最近変なのかもしれない。


自室に戻り言われた通り変えの体に変える事にする。

お布団の上で寝転がった状態で交換することにした。




ゴソゴソ。

ゴソゴソゴソ。


物音のおかげもあり、いつもより早くに起きることが出来た気がする。

起き上がるとそこには琴子さんが居た。


「あっ、ち、違うの」


「何がですか?」


「私は決してやましいことをしてた訳では——」


なぜそう言うのか、それは私がパンツ一枚の格好だからだろう。


「誰がしてくださっているのか不思議に思って居ましたが、なるほど。理解しました」


「あ、その」、ごめんね」


「いいえ、大丈夫です。きっと琴子さんも琴子さんなりに考えて着せて下さっていたのでしょうから。ですがもう起きたので続きは自分でします」


「ほんとにごめん!」


部屋から急いで出る琴子さん。

今まで起きた時にさっきまでと違う服を着ていたから不思議に思っていたけど琴子さんが着せてくれていたのか。

きっと交換しっぱなし、いわば裸の状態でいるのは良くないと考えたのだろう。

その考えに初めて行き着いた時は恥ずかしかったが今はもうなんともない。

男に隠すモノなんてないでしょ、と無責任に言う人特に異性には怒りを覚えるとにいにが言っていた、

でももう性別すらないから恥ずかしいと思わないのは普通だと思う。


恥ずかしい、感情。

感情、それがこの楽な体の代償なのかもしれない。

何かを得るには何かを失うことが必要だと考える様になった。

だからこそ、そうふと思うのだった。

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