27.繋ぎ
あの日から空が晴れなくなったそう。
あの第一次大規模氾濫の日から。
物流は停滞、不足しているがスキル《交換》で生きる為に必要な食料はある程度賄えると放送され、その《交換》はレベルが10になったら自動で取得するようになるので命を掛けて戦う人が、そして失う人がとても増えたという。
戦闘に明け暮れるような日々になりつつあるが肉体も強度を上げているようでメンバーは身体能力が約1.5倍弱にもなったと言う。
私は相変わらずレベル上下を繰り返し再び1に戻ったばかりである。
であるが人形であるため身体の基礎スペックは高く、成長がほぼ無いのであった。
あれから一週間と僅か経ちみんなすっかり戦い慣れてきたようだ。
失敗から学ぶものは非常に重く、大きかったようだが行動を起こし各自が研鑽を積んでいる。
そう言う私は丁度継承者とのお散歩を終え引き継ぎを見守って3代目と会話をしてるところである。
「僕は、人殺しの犯罪者になったんだね」
「多くを継承するための手段で2代目の方からの願いでもあったことです」
「分かっている。そして僕もそうするのだと思うよ。でも、なぜ僕なんだ。人はあんなにも居るのにどうしてこの役回りに僕が……」
「それはあなたが将来一番良く知ることだと思います」
「将来なんて、もうタイムリミットがすぐそこまで迫っているのにね」
「分かるものなのですか?」
「そうだね、分からされると言う方が正しいのかもしれないけど。それにしてもキミ本当に流暢だね。魔導人形って全部こうなのかい?」
「私は私以外の魔導人形を知らないのでなんとも言えません」
「そうか、1代目に作られたんだって?どんな人だった?」
「それは命令違反になる為お答えしかねます」
「僕の命令でも?」
「お答え出来ません」
「いいや、どうして君は作られたの?」
「初代の実験、そして継承の継続確認とケアです」
「そうか。君も大変だね」
「私は大変ではありません。お気遣いありがとうございます」
「充電とかは大丈夫?」
「充電は不要です。現在は良好です」
「人形なら誰かをモチーフにしてるのかな?そんなことはいいか。もう遅いから帰る?それともついてくる?」
「どちらがよろしいですか?」
「そうだな、今日はしんみりした気分だから一緒にいて欲しいかな。ごめんね」
「構いません。人は誰かと一緒にいるだけで落ち着くそうなのでとても良いと思います」
「行こうか。今日の宿に」
今日は良いとこのホテルでの一泊らしい。
僕は外で待機していると気づけば室内に召喚された。
「この腕輪便利だね」
そう言いお互いの左腕に付けられた腕輪を指差す。
そうですね、とだけ答え部屋の隅に行き待機した。
左腕に新しく装着された腕輪は“召喚の腕輪”片方が召喚、返還で片方は転移させられるだけの道具だ。
もういない2代目の継承者から贈られた。
何故継承者と会話出来るのか。
その答えは継承者間で引き継がれた指輪にありそうだ。
愚痴や未来、過去のことなどを酔いながら語り続ける彼に私は相槌をつく。
それを彼が眠るまで続け、眠った彼に風邪をひかぬよう布団をかける。
ある時から突然死ぬ時を告げられ、最初の予想時期よりも早くに終わる。
不安や言葉に言い表せない感情は計り知れない。
お昼までぐっすり眠っていたがある時飛び起き大慌てで身支度を始めチェックアウトをした。
あたまいたーなんて呟きながら異変情報局があるらしいビルに移動する彼の後をついて行った。
途中でタクシーを捕まえ楽に移動し到着。
その後スキルの継承を説明し無事に部屋に入り見たくもない未来に目を向け始める姿を見守った。
用意された紙にペンを走らせ見た重要そうな未来を記録する。
ベッドで休みまた再開。
聞きに来た異変情報局の職員に紙を渡しいくつかの文章の正確な説明などをして1日が終わる。
寿命なのか生命力なのか、それは正確には分からないらしいが命が凄まじい勢いで消費されてるそうで苦しそうにしていた。
暫くは大丈夫だそうで丸一日ぶりに現在の拠点、東京の江戸川区にあるボロアパートに戻してもらった。
次呼ばれるのはいつだろうか?
常に用意ができている状態でなければ。
部屋玉から琴子さんが出てきてくれた為マジックルームに入ることができた。
メンバーと軽く喋り地下で短刀を振る。
今自分の魔力はほぼ無い為、魔力の鍛錬はまたにしよう。
ならば剣を振りより効率的に敵を倒す方法を模索するのだ。
ステータス
個体名:じゅん 種族:人間 レベル:1
スキル:下位自己鑑定
装備:下位魂器
隷属の腕輪(右腕)
召喚の腕輪(左腕)
短刀
バックラー
本体消耗度:82/100
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