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地球魔力改変  作者: 443
序章 移ろい
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間話[亮].合奏

 役割分担を決定した次の日、ゲートの前で最終調整が始まった。

 指示は柳瀬、警戒は千田、攻撃は俺と影山、防御は宮村と堀だ。

 攻撃役と防御役は2人1役となって安定した戦いを目指す。俺の最初の相方は比較的身長が近い宮村だった。


「今日も頑張ろうね」


 肩幅が広く、胸板が厚い。少し怖さを感じる体格ではあるが彼の柔和な表情がそれを打ち消していた。


「よろしくお願いします!」


「うん、大丈夫そうで安心したよ。何か心の変化があったのかな?」


「俺は魔力剣があれば1人でどんな相手でも倒せると思っていたんです。でもそうじゃないって分かって、海斗さんに大事なことを教わりました。辻本さんがなんでスキルオーブを渡したり最初のレベリングを手伝ってくれるだけじゃなくてメンバーを集めたのかようやく分かったんです。

 それに聞かれてやっと自分でも思ったんですけど俺は自分のスキルのことを全然分かってなかったんです。魔力がどうやって形を作ってこの切れ味を出しているのか。海斗さんに聞かれてやっと考えるようになって、それで自分なりに考えてみました。あ、今言うことじゃないですよね。

 どれだけ自分本位で動いていたかを海斗さんに気付かされたんです。それにあの後に柳瀬さんと話したりもしてたんで、思い返してみれば集められた時からみなさんに積極的に話しかけていて、もう本当にチームを支えることに全力ですごいな、ありがたいなって思ったんです。海斗さんが言うにはそんな性格じゃないらしいんですけどね」


 苦笑いをしながら昨日のことを思い出す。視界の限りに奥から続々とやってくるゴブリン。もう単独でどうこうできる時代は終わった。

 自衛隊にしても日本にはそもそも実弾が少なすぎるらしいので他国と分断された今、安定した社会はどんどん脅かされるだろう。だから俺には自分の力を理解して他の人でも使えるようにしたいという新しい目標があった。

 できるかは分からないがそれによって力を理解できれば最低でも自分はこの力を振り回すだけじゃなくてちゃんと扱えるようになるだろう。そうしたら他の人の負担も減る。俺たちはチームで強くなるんだ。


「立派だね。僕も頑張らないと。僕のことは慶典って呼んでよ。年齢的にこの中で亮くんに一番近いから仲良くしてくれたら嬉しいな」


「ぜひ!あ、すみません。そういえば前に弟がのりさんって呼んでたんですけどやめといた方が良さそうですかね」


「いやいや、全然いいよ。亮くんものりさんって呼んでくれるの大歓迎だからね?」


「そうですか?それじゃあのりさんと……」


「うん。呼んで呼んで。よいしょっと、準備運動もいい感じだね。僕はお花を育てる魔法しかないから頼んだよ?」


「はい!めっちゃ頑張ります!」



 昼間と考えると薄暗いが夜間であっても明るさが変わらぬダンジョンの中。俺は防御役である慶典の後ろに少し間を空けて続く。


「前方警戒、数は3。防御役は守りに徹して、攻撃役も安全重視でお願い」


「「「「了解」」」」


 男4人の返事が綺麗に揃った。


「彩花さんは背後の警戒をお願い」


「りょーかい」


 指示の合間にこちらに近づくゴブリンを見る。1体が金属バットを持ち、残りの2体は無手だった。

(金属バット、俺たち以外に誰かが入ったのか。死んでないといいけど)

 バット持ちは向こうに、残り2体がこちらに走り寄りその勢いのまま盾をどっしりと構えた慶典に組みつく。


「亮攻撃!」


 柳瀬の声が響く。

 遅れた。待つことを意識しすぎた。

 急ぎ3歩前に出て《魔力剣》でゴブリンが(かざ)した腕ごと頭を斬り落とす。


「こいつ——」


 宮村も小剣をもう1体のゴブリンの脇に突き刺し、離れたそいつの首を叩き落とす。(りき)むな(りき)むな、(ちから)をかけてもなんも変わらない、むしろ遅くなる。


「宮村さん大丈夫ですか!?」


 隣も戦い終わっているのを見てすぐさま宮村に近寄る。


「ちょっとね、ちょっとびっくりしたけど全然大丈夫だよ。ありがとね」


 怯えの色が瞳に残るも彼の表情はまだやれると言っていた。


「怪我はない?」


「ありません」


「よかった。亮くん、次から相手の方がリーチが短い時だけ、1振りだけお願い。それが上手くいっても行かなくてもまた慶典くんの後ろに戻って」


 怪我の有無を確認すると柳瀬は亮に次の指示を出した。


「了解」


 柳瀬は返事に頷くと進路を指示する。


「進みましょう。次は右に曲がるわ。出会い頭に注意」


「「「「了解」」」」


 前衛4人の声がまたしても揃う。なんとも言葉にできないワクワク感が心に生まれた。




 役割は変わって背後警戒。ヒヤヒヤする戦いの様子を尻目に後方に体を向ける。

 何度目の戦闘中かにその音が聞こえた。

『テチテチテチ』と、素足で歩くような音がしてきたのだ。

 自分が攻撃役だった時を思い返す。あの時警戒役だった千田は何と言っていた?


「——後方敵接近」

「数が分かったら教えて。蓮交代!立て直したら亮と後方の敵と戦って。倒さなくていい!前が終わるまで時間を稼いで!」


 何が起こったのかは分からないが向こうで戦線が崩されたことは容易に想像できた。

 チラッと後ろの方を見ると空いた空間に強引に自分の体を割り込ませ戦線を維持した柳瀬と転んだと思われる影山がそのまま転がって下がり、立ち上がろうとする姿が見えた。大丈夫そうだ。


「後方敵3体!倒せます!」

「崩れないことを一番に!好きにやって!」

「了解!」


 しまった、壁が居ないのを忘れていた。パーティー前方の敵は残り3、後方からも3と。自分が崩れたり後ろに通してしまうと最悪全滅する。ならば


「影山さん体勢が整ったら声を下さい!それまでは浅く攻撃します!」


「ゴホッ!了解!」


(これでよし。耐久重視、忘れずに!)

 半歩前に出て振りかぶられた鈍い輝きのナイフを切断し返す刀で肘上を飛ばす。すぐに下がって脇から通ろうとする奴に向かって魔力剣を投擲。魔力光を発するその剣はうまく当たらずに奴の体制を崩すに留まる。


「準備完了!」


 影山の声が響くと体制を崩したゴブリンの胸に剣が突き立てられる。


「了解!手負いを任せます!」

「了解した」


「前方残り2!」


 腰から小剣を抜き、無傷のゴブリンに向き合う。

(さぁ、どう来る?武器は棍棒、リーチはこちらに分がある。——来た!近づいて?体を捻って、棍棒をなげ、投げ!?)

 飛んできた棍棒を受け止めようとして握り手に衝撃が走る。

(くっそ、受けミスった)

 目を向けると無傷のゴブリンは既に近くにまで接近しており、左手に隠し持っていたのか石を軽く振りかぶり亮の腕を殴り、直後に足を蹴りつける。


「前方残り1!彩花!後ろの援護お願い!」


 亮は攻撃に構わず、膝をゴブリンの腹に入れて柄頭で追い討ちをかけるとゴブリンの真横に転移してきた彩花が普通の武器ではあり得ない、まるで魔力剣のような切れ味の剣をゴブリンの頭に差し込む。


「蓮離れて」

「了解」


 蓮が堅実に戦い、傷が増えたゴブリンに向かって彩花が投擲剣を投げるとゴブリンの腹を貫いた。

(俺も人のこと言えないけどこの人も大概別ルールで戦ってるな)


「武器、これ触っていいの?」


「あ、多分大丈夫です」


 彩花は放り投げられた魔力剣を回収すると亮に渡す。


「面白い手触りだね、はい」


「そうですかね?ありがとうございます」


 小剣を鞘に、帰ってきた魔力剣を握り直す。

(倒すために踏み込むと、別の敵が横をすり抜ける可能性がある。だからと言って浅くすると……そもそも人数不利がきついな)


 壁に背を預け小休憩の後、琴子の号令で出口側に戻り引き続き敵を倒していった。






 《魔力剣》は言ってしまえばなんでも斬れる剣だ。ただ受け太刀することができないというひどい欠点があった。しかし持ち手は手を切らない。と言うとは切れる作り方と切れない作り方がある。もしここで発見があればもっと強くなれるはずだ。

 亮は海斗と共に《魔力剣》の研究を始めた。

前回の間話投稿から約1月。ようやくチームが形になるまでの4部作完成です。

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