24.訓練日
Tips:マジックルーム
独立した異空間。水晶玉ワープした先の不思議空間。
Tips:ポーション
小瓶に入った生き物を癒す不思議な飲み物。等級がある。使用後に小瓶は残らない。
部屋が明るくなってきたのでお布団から出て掃除を始めることにする。
ホコリは人がいれば出てくるからだ。
それにただのお荷物や居なくてもいいと評価されるのが怖いからでもある。
掃除を完了したらマジックルームの家を出た。
散歩をしていると知らない豆腐建築がもうひとつあるので窓から中を覗いてみるとそこも荷物置きらしいことが分かった。
庭には三角コーンが四つ、四角く配置されている。
視覚範囲から考えてみると一辺20メートル程だろうか?
そもそも正確な視覚範囲が分からないのだが目測でそう思った。
「おはよ、あんた——じゃなくてじゅん、くんってつけた方がいい?」
「どちらでも大丈夫ですが」
「そう、じゅんは何してんの?」
「ちょっとお散歩してました。もう戻った方がいいですか?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。まだみんなは起きてないし、今日も訓練はここでするから」
「さやかさんはどうしたんですか?」
「窓の外に見つけたからちょっと来ただけ。なんか話したいこととかある?」
「大丈夫です」
「そう?無いわけないと思うんだけどね。お姉さんはこれからが心配だよ。辻本さんは居なくなっちゃったし時間はもう無いって言われてるし。そして当たり前だけどモンスター出てきて戦う人なんていると思う?各地で暴動が起きるだけでしょ。私たちも他人から見ればそう映るんだろうけどさ。じゅんはどう思う?」
「心配ですね。これからどうすれば良いのか。どうなっちゃうのか。家族は安全な都市部に避難したのか。敵が来た時にしっかり戦えるのか、ちゃんと役に立てるのか。不安は沢山ありますよ」
「そーだね。そこでここの仲間たちの出番だと思わない?何のために個人に呼びかけるだけじゃなくていくつもの集団ができたと思う?私たち以外にもこんな感じの集団いくつか作ってるみたいだしきっとだいじょーぶさ。困った時は仲間に助けを求める。大事だから覚えおいてね」
「分かりました」
「私ね辻本さんに連れて行かれた時すごーく怖かったんだよ。元はねちょうど良い自殺場ができたーってダンジョンに潜ったんだけど、いざ死が目の前に見えてきたら怖くなって泣きながら逃げてさ。『まさか本当にこんな場所にいるとは』とかゆう辻本さんとかゆうおじさんに助けられて。外に出たら誰かの記憶見せられて、『あなたの捨てようとした命、私が貰います』とか変なこと言われて、車に乗せられて。はぁ、その後スキル覚えさせられてこき使われて。あんな記憶見なければ何も知らない一般人で居たかったんだけどね。はぁー、世の中理不尽バカばっかり!」
「泣くほど怖かったり、怒りが湧いてくるんですか?」
「途中までは怖かったね、でも今となっては感謝しかないね。良い人に巡り会えてよかった。じゅんに話させるつもりが私が話して泣いてバッカみたい。よし!家戻ろっか」
「そうします」
さやかさんの後をついて行き家に戻る。
リビングにはメガネのお兄さんことかげやまさんが居た。
「れんれん他のメンバーは?」
「食事三名安眠一名です。宮村起こしますか?」
「まだいいや、じゃ朝ごはん食べてくるー」
「分かりました」
……2人きりだしキリッとしててちょっと怖い。
しばしの静寂、動かずに固まっている私に声をかけてくれた」
「じゅん君、おはよう」
「おはようございます」
「特に席は決まってないので俺の隣に来ないか?」
「失礼します」
誘われたら断るのは失礼だし隣に座らせてもらう。
「ところで昨日までの埃が綺麗になくなっているのだがもしや君が?」
「はい、床だけ掃除しました」
「そうか、ありがとう。……怖いか?」
「そういうわけではないのですが、どういう人かわからないのでどう話せば良いのかちょっと」
「俺のことわかるか?」
「かげやまれんさんです」
そういうと近くのメモ用紙に名前を書きこちらに見せてくれる。
「影山蓮、24歳。魔道具作成をもらった」
「そうですか」
「少し待っててくれ」
そう言い部屋から白い球体を持ってくる影山さん。
「お待たせ。これは君の体である魂器だ。俺は今これの研究をしている。さっぱりだがな」
「お世話になっています」
「魔力がたんまり詰まっていることしか分からんのだが何か自分で分かることがあれば教えて欲しい」
「すみません、全然分からないです」
「何か不便なことや困り事があれば言ってくれ。その都度協力する」
「蓮さんも緊張してるんですね」
「何を話せば良いのか分からんくてな。呼び方は好きな風にしてくれて構わないから、よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
「れんれんこわーい」
「緊張丸分かりー」
そんな声が玄関側から聞こえてくるのでそちらに視線を向ける。
4人が朝食などから戻って来たところだ。
声の主はさやかさんとかいとさんだろうか。
声が飛び交うのを聞いていると何だか懐かしさすら覚えてくる。
のりさんを置いて今日の訓練が始まるようだ。
四つの三角コーン、距離25mを何度も往復。
柔軟したり走ったり跳んだり持ち上げたり握ったり。
のりさんが慌てて途中参加したり剣をぶつけ合ったり。
スキルを使ったり魔力を操作したり。
とんでもない活動量を休憩を入れながらも何セットもこなす。
外傷そのままの体に鞭を打ち続けるメンバーを見ながら私はというと、あと何かーいやラスト何秒のような声がけをしながら魔力をネリネリしていた。
スキルがあれば魔力を使うことは容易にできるみたいだがスキル外のことをしようとすると骨が折れるどころか全く出来ないらしい。
作ってくれたメンバー名前表を見ることで人と名前を一致させることができた。
にいにと海斗さんが楽しそうに剣を振り回している。
前よりも早い動きを見るにお互いがスキルで作った剣を使っているだろう。
実験を使った練習試合でザクっといってしまった人にはポーションが速やかに届けられる。
飲んだら外傷が治療される。
とんでもない貴重品な気しかしない。
これほどまで自分を追い詰める鍛練は体に悪いだろう。
心配をしながら訓練をした。
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