11.バイアス
Tips:バイアス
物事の正常な認識が出来ていないことを表現する言葉。現代人の多くが何かしらかかっている。
モンスターの血や砂埃を流し浴室から出たが着替えを持って来ていない事に気がついた。
体を拭きしょうがないのでバスタオルを体に巻き、部屋まで移動する事にした。
幸運な事に家にはまだ誰も居なかったので何事もなく解決した。
綺麗な服を着て、窓から出たよ、と声をかけた。
にいにも辻本さんの家をなるべく汚さないようにする為かさっさとお風呂へ行ってしまった。
……お姉さんも家にいるんだけどどうしよう。
とりあえずにいにが浴室に入った頃合いを見計らい、着替え一式を持って行き、その後床を雑巾で拭いた。
お姉さんは椅子に座りテーブルでぐったりしているのでお水を汲んで机に置いた。
ガバッと起き上がり多分ありがとう、と言ってその後も続けて何か話されたが全然わからない。
すいません、魔力のこもってない声は聞こえないんです、と答えた。
あちゃーというリアクションをした後ゆっくりありがとう、とだけ伝えてくれた。
少しなら自前の読唇術で聞こえなくてもわかるから助かった。
手招きされたので近づいたら手を握られ不思議な顔をされる。
紙にどこか辛いとことかない?と書かれたので大丈夫です、と言った。
少ししたらにいにが脱衣所から出てきた。
「じゅん、服ありがとね。彩花さんこれから何をしたら良いなどの指示はありますか?」
にいにの声でワープのお姉さんがさやかさんである事が分かった。
そこからはにいにの声も聞こえなくなった。
聞こえないのは寂しいけど気をつかってくれていると感じるので嬉しく思った。
話が終わったようでお姉さんが何処かに行ってしまった。
「今日は休んでて良いってさ、あと明日はお休み兼辻本さんが集めたメンバーとの顔合わせってだって」
「分かった。にいにちゃんと休んでね。もしあれだったら僕が近くのコンビニまでおつかいしてくるよ」
「そんなに疲れてないから大丈夫」
「そうだ、今ならにいにのレベル聞いていい?」
「良いよ。予想は?」
「7だと思う」
「惜しい、今日7になったよ。じゅんは?」
「今見てみるね」
個体名:じゅん 種族:人間 レベル:5
スキル:下位自己鑑定
装備:下位魂器
隷属の腕輪
本体消耗度:85/100
「5レベルだったよ。にいにレベル高くない?」
「実はこっちに来た初日、だからまだじゅんの目が覚めない頃に辻本さんとダンジョン潜ったのさ。実質パワーレベリングみたいな感じだった」
「そうなんだ。けど純人間なんだから無理しちゃダメだよ」
「……じゅん、じゅんも自分を大事にしてね。その体になってからか人間味、いや、なんと言えば良いんだろ。考え方や行動が変わった気がして心配だよ」
「大丈夫。変えの体もうあるし」
「そういうとこだよ。確かにひとつ追加でもらったけどだからって自分を大事にしないなんて事があっちゃいけないんだよ。ごめん、魔力がもう無い」
「気をつけるね」
はぁー、とため息を吐いてるのであろうにいにの顔は少し苦しそうだ。
魔力というものの感覚が僕にはまだ分からないけどそれが無くなるのはきつい事なのだろう。
何か動きたい衝動に駆られるが、机の周りを回り続けることで解消する。
なんだか何かしなきゃいけないような感覚がある。
これは焦りなのかはたまた……。
今日は早い内に辻本さんが帰ってきた。
ちょうどにいにの夕食の頃合いだ。
「ただいま戻りました。お二人とも今日もお疲れ様でした」
「把握してます。ですがそこまで悪い事にはならないので大丈夫です」
「その通りです。明日は他のメンバーと顔合わせをして頂きます」
「9時までに身支度を済ませて頂ければ大丈夫です」
「いえ、他にも新拠点のお披露目やギルド会議などをする予定です」
「これからさらに切羽詰まった状況になるので今のうちになるべく休んでくださいね」
「そうです。私達ではどうしようもないです。最善は尽くしますがね」
「何か欲しいものの要望などがあれば早めに教えてください。出来る限り回します。じゅん君、あなたもですよ」
「じゃあちょっと違う事だけど、夜中にダンジョンに潜らせてくだせい」
「亮さん、落ち着いて下さい。じゅん君、それは単独戦闘になり危険性が増すことを理解していますか?」
「はい。でも僕は大丈夫です」
「……わかりました。3階層まで潜ることを許可します。出会い頭に注意して下さい。発見した宝箱のアイテムの回収また使わない事を命令します。痛い目に遭うのは早い方がいいですからね。決して無理はしない事、お迎えは7時ぐらいになります。本当に行きますか?」
「行きます。それに禁止しないということは行った方がいいという事ですよね」
「そう簡単な話ではないのですが、大体そんなところでしょう」
「兄としての気持ちも分かりますが今はこうした方がいいのです」
「確かに、一人っ子の私には分からないと思うかも知れませんが継承で貴方の嘆きをよく知った者としてもこうするのが……。いえ、そういう話ではないのですよね。では貴方がじゅん君に行くなと命令をしてもいいですよ」
「ずるい、ですか。すみませんでした。……私は結果を急ぎ過ぎてましたね。しかし亮さんに警戒心を上げて貰えて良かったです。目で見えるものを信じ切ってはいけませんね」
「行っちゃダメですか?」
「いいそうですよ。ただし気をつけてだそうです」
「分かりました。ではじゅん君は用意をしておいて下さい。出発は約2時間後です」
「ありがとうございます」
にいにの発言は終始分からなかったけど夜ダンジョンに許可が降りた。
21時前にさやかさんがお迎えに来てくれてダンジョン単独入場を行った。
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