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地球魔力改変  作者: 443
1章 狭間
123/151

間話[学校組].口止め

空飛ぶ少女の兄を自称する小さなスクールメイトが年若い先生に連れて行かれた直後だった。

ざわめく食堂にいつも快活な少女が焦りを含んだ表情で駆けつけ人を呼びつける。


真尋(まひろ)!ちょっと来て!」


「何?仕事の予定は無かったはずだし今日はやなんだけど」


真尋は体を後ろに引いて逃げの拒否の意思を見せる。


「それとは別。由佳(ゆうか)ちゃんごめん。ちょっと真尋借りるね」


快活な少女の考えは変わらないようで、真尋と談笑していた落ち着いた雰囲気の少女に断りを入れた。


「めんどくさーい」


「ええ、構いませんがお急ぎでしょうか?」


「うん、お仕事関連なんだけどなるべく早く(なるはや)で伝言頼まれたの。ほら、真尋!」


結衣(ゆい)さんもいつになく焦られているご様子です。事は早めに終わらせるに限りますよ」


真尋の腕を引っ張る結衣。その力は心なしかいつもより強く見え、由佳は真尋に行くことを進める。


「由佳までそっち側!?くっ、私に休息を!」


「いいから来てよ、すぐ終わるから。私だって仕事中なんだからさ」


「うぇー、分かったよぅー」


仕事中という言葉は効果覿面のようで真尋の重たい腰を上げさせた。




 真尋(まひろ)と呼ばれた背が高く低めな声の少女はよくないことをしてしまったのだと直感して顔を顰めた。周囲から見れば面倒臭そうにしただけのように見える、そういう風に見せていた。

 強めの圧をかけていた快活そうな少女、結衣(ゆい)に世界変わってしまう前からの友人である真尋がいやいや連行される様子を眺める落ち着いた雰囲気の少女、由佳(ゆうか)は内心に自分が知るべきでない話題を話し合う2人を少し寂しさの混ざった目で見送る。






大半の教師すら入れない手狭な部屋で2人は向き合う。


「それで?ここに連れてくるってことは仕事?それともやっぱり言っちゃダメだったの?」


「言っちゃダメってほどじゃないけど、あの子、飛んでた子は占い師さんの“仲間”だからあんまり嘘を掘り返さないで?」


彼女の言葉には従おう。そう思わざるお得ない程に鋭い言葉を客にかける占い師と呼ばれる女性は協会の上層部だという噂がある。その協会の上層部は国と密接に関わっている。それを知っている真尋は、自分が嘘をバラした空飛ぶ少女がそんな存在の部下だと言われると状況を少なからず理解して表情が固まった。


「アンタッチャブルじゃん!ならもっと早く言ってよ。言ってくれたら言わなかったのにさ」


「だから急いで来たんだよ〜!変なことバラしてない?」


「してないけどー、厄介ごとが多すぎてめんどいー!」


頭を抱える真尋。


「それ絶対私のことも含んでるよね?私たち一緒に働く仲じゃん!そんな邪険にしないでよ〜」


「だって結衣仕事めっちゃ持ってくるじゃん!ふかーく探るの疲れるし恨まれるし。……大事な話はこれで終わり?」


「そうだけど、恨まれるのは私も一緒なんだからおあいこだって〜」


一緒に仕事を行い、一緒に恨まれる。


「そうだよねー。はぁ、次の仕事はええっと……4日後?」


「うん、頑張ろうね!」


「汚れずに生きることは出来ないことは重々承知なんだけどあそこまでする必要あるのかな?」


「うーむ……ごめんね?私の自分勝手に巻き込んじゃって」


「……んーん。結衣は正しいよ。私たちはあいつらに別の方法を突きつける。こっちの方が絶対良いってね」


それでも2人はお互いが協力することで“あいつら”に対案を出していた。


「あはは、まぁ、そうなのかなぁ。あ!そだそだ、誰にも言っちゃダメだよ?あの子と前にちょっとだけ話したことあるんだけど、もしかしたら真尋の願いを叶えてくれるかもって私は思ったよ?」


どうしてか歯切れの悪いことを言った結衣は新しい話題を提供する。


「——マジ!?うわぁー!めっちゃ嬉しい、嬉しいけど、うーん、他の人になんて見られるかな」


「真尋今年で17だっけ?ならあれだよ、そもそもすぐ出来るとは思わないしそっちに通ずつ確証も無いし。それに望めば学校から出られるしね!もうほとんど大人の歳だから今から働いてもそんなに視線は気にならないんじゃない?安定した働き口があるから戻れたらパッと学校卒業しちゃうのも全然アリだと思うよ?」


「ちょいまっち、確証ないんかい!あー、もしかしたらって言ってたっけ。ぬか喜びしてた」


「ごめん〜。まぁそんな感じなので!あの子に関してはあんまり言っちゃだめね」


あの子が動きにくくなってしまうと真尋の願いが遠ざかるかもしれない。そう言われると占い師関連という以上に嘘の告げ口をしない気持ちが確実なものになる。


「誰かからあの子に関すること言われていきなり全部突っぱねるのも変だし多少はこっちの判断で言っても良い?」


「うん、そのぐらいなら良いと思うよ。だめそうならまた走ってくるから。それじゃあ私はお仕事に戻ります!じゃあね〜」


「頑張ってー」






真尋は食堂に戻ると由佳がいる席に進んだ。


「もう良いのですか?」


「そんな大事なことじゃ無かったから大丈夫」


そう言って由佳の斜め前の椅子に腰をかける


「一応聞いておきますが結衣ちゃんに変なことをされたりは」


「今日は無かったよ。ていうかあの部屋にわざわざ胸を揉むためだけに呼び出すなんて流石にないって。いや、ついでみたいにされたことはあるけどさぁ」


「ふふ、とりあえず今日は無傷のようで何よりです。……結衣さんはおいくつでしたか覚えていますか?」


「いきなりどうしたの?この前15になったって聞いた気がするけど?」


「いえ、授業から抜けてお仕事に向かわれることが多いのでふと気になってしまいました」


「今は実力至上主義だからね。他の街の襲撃対応とかにも行ってるみたいだからどうしても忙しくなるんだと思うよ」


「そんなにお強いのでしょうか?」


「私よりは絶対強いけどモンスターと戦うんじゃなくて回復要員だって聞いたよ。なんでも回復阻害対策とか」


「回復が阻害されるというのは薬の方ですか?それとも魔法ですか?」


「どっちも。モンスターの魔力が体に流されることで回復が妨害される。そういう魔力の活用方法があるんだってさ。それの分解?要員みたい」


「そのようなことが。最近は特に行ってしまわれることが多いと思っていたのですが、私たちの知らない場所でご活躍されていたのですね」


「そうなのさー。ところでだよ」


真尋は身を屈め、声を抑えて話し出す。


「もしもなんだけどさ、私が元に戻ったらどう思う?」


それに由佳も合わせる。


「大変興味深いですね。そのようになれば祝うべきことだと思いますが私たちの間柄には少し距離が開いてしまうと思われますので寂しくも思います。もしや道立てが?」


「可能性程度にかな。でもそう言ってくれてありがとう」


真尋は体を起こし声のトーンを元に戻した。


「今日はなんもしないつもりだったけどせっかくだし行く?」


「どうしてそうなるのですか?本日は予定を入れずに休むはずではありませんか」


真尋は再び前屈みになって小声で話す。


「私やっと体調戻ったからどうかなって思ったの」


「明日からで良いでしょう。何も焦ることではありません」


体勢を普通に戻す。


「それもそっか。レベル上がった?」


「残念ながら。武器を握るのは好みではありません」


「握力の筋肉キツイよね。姫には無理であったか」


「おちょくるのはやめて下さい。そしてこの学校の生徒の半分程は姫か殿です。お忘れなく」


「ここが世界の中心でありましたか!」


「それは過言です。世界の中心がこんな惨めな環境であるはずが無いでしょう」


「惨め、まぁそうよね。前の生活が忘れられない!!」


「レベルを上げろとは言われますが詳しい理由が欲しいですし、そもそもレベルとはなんなのでしょうか」


「あー、それは成ったら分かるよ。進化前の人間が格下って本能的に思っちゃうんだよね」


「では(わたくし)のことも?」


「友は別枠!でもね、同性でもそう思えちゃうんだけどそれ以上に異性に対して魅力が全く感じられなくなるんだよね」


「あなたが殿方に魅力を?」


「うん、多少はね?だから校長先生とか古枝先生とかが人気なのも本能的に格上を求めるからなんじゃないかなって私は勝手に思ってるよ。逆に全員が全員では無いけど格上は格下に対してなんだろ、いろんな感情が薄くなる?むしろ嫌悪、とまでは言い過ぎだけどそんな感情が芽生えるんじゃ無いかなぁって」


「それはいけませんね。頑張りませんと」


「ほほう、お目当ては誰かな?」


「さて?誰でしょうね?」


由佳が優しく笑って回答を避けた。


「まぁね、そんなことだからレベル上げて進化に到達出来ないとどんどん選ばれない側に堕ちていく。だから由佳のお父さんは無理ないぐらいに戦ってほしいなって言うんだと思うよ」


「答えはこんなにも近くにあったのですね」


「最近進化したばっかりだからまだちゃんと分からないけどね?」


「本能的という場所に関してはあまりはっきりと理解できませんがとてもよく分かりました。ではレベルが何かもご存じですか?」


「分かんない。《ステータス》とか《交換》は借り物っぽいってことは分かったけどレベルに関してはなんとも。うーん、そもそもレベルって数字はなんなんだろうね。レベルが上がったら魔力が増える。うーん、なんで?」


「やはり簡単に答えが分かる問題ではありませんか」


「そうだ、良いもの見せてあげる。この前一般の人たちと一緒に中級ダンジョン行ってきたんだけど、ほら」


真尋は念写を発動した。

白い砂浜の向こうに真っ青な海が、その上にはどこまでも広がる青空が写っていた。


「めっちゃ良くない?」


「とても美しい景色ですね」


地上には変わらぬ曇天が空を覆う。この空はいつになれば終わるのか。


「でしょでしょ。道中のモンスターは強いけどパーティーメンバー(パテメン)も強かったから結構スイスイ行けたんだ。いつか一緒に見に行こうよ。その時は私が道案内してあげるから」


「ええ、いつかお願いします。私も自分の目で見てみたくなりました」


「じゃあレベル上げ頑張らないとねー」


「そうですね。他にも写真はありますか?」


「もっちろん。それじゃあね、次は——」




学校は今日も平和である。

 レベルって物語の最序盤から認識されている作品さん多いですが、レベルというものがその世界観的になんなのかを説明してくれる作品はなかなか見ませんよね。ステータスも同様にそれがあって当然として受け入れられる。作者はそういうのもほしいな、と思いこの世界観での意味と理由を考えていました。

 本編最新話投稿時点ではステータスへの回答は半分出ていますがレベルがまだです。いつになったら絢が気づけるのか。別キャラ視点の間話で書いた方が対象が人の場合の丸が出るの早そうです。その後に絢と————のせいでそれ以上の正解を求めて沢山の人の頭が悩まされそうですが。


 主人公の視界外でも世界は動き続けている。しかしそれを描写せねば無いものと同じ。間話最高ー!




 ちょっと愚痴らせて下さい。最近同じ同好会の方に初めて作品のリンクを送って読んでいただいたんです。優しい方たちなのでひどい言葉はかけられませんでしたが、それでも『このぐらいなら俺でも書けそう』と言われてしまいました。これは少し悪質な切り取りです。本当は『このぐらいなら俺でも書けそうだけどあれだけ書くのはなかなかできないよ』のような言葉をいただきました。ちゃんと彼なりに考えて傷つけないように言葉を選んでくださっていたことは作者も分かっているのですが心に来るものがありました。もう活動報告に書いたような感情は消えましたが一周回って虚無感がきています。

 確かに最初から少し前の投稿分までは小説としてのレベルに達していなかったことは分かっています。それでも作者なりに考えて物語を重ねていったんです。また少しすれば回復すると思います。少し休みます。

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― 新着の感想 ―
存在が変わって格も変わり魅力も変わるのはある意味姿かたちに魅力を感じていた人類が新しい感覚と形で別の魅力を感じるようになったようですね 自分の子供たちにどれくらい受け継がれるのか?というのもありそうで…
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