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地球魔力改変  作者: 443
1章 狭間
119/151

72.身軽に

「じゅーん。どこー?」

「下でーす。どうしましたかー?」

「亮が呼んでるー。近くまで跳ばすから学校に行って。暗いし一応武器は持っといてね。外で待ってるからー」

「わかりましたー」

 《交換》製の何の変哲もない私服に着替え腰に巾着袋を下げる。

 ギルドルームの外に出るとすぐに学校近くに跳ばされた。


「こんばんは亮先生に呼ばれたんですけどいらっしゃいますか?」

 そんな挨拶で亮の元に案内された。


 近づくと戸の隙間から声が漏れ出ている。部屋に入ると光源の魔道具が小さく周囲を照らしその周りには大小2人の人影があった。

「こんば——」

「なんでにいにはもっと早くに助けに行ってあげられなかったのさ!」

「ごめん」

「何で?にいにには助けれる力があるのに!」

「ごめん……」

「お兄ちゃん何でそんなに怒ってるの?」

「にいにが母が死んじゃったって!これまでずっと隠してて今更僕に言ったんだ!もうやだよ、疲れたよ。何で僕の大事がどんどん無くなってっちゃうのさ」

「……人手が足りないからどうしようもないんだよ」

「じゃあ順番変えればよかったじゃん!なんでにいには周りに言われたまんまにするのさ!」

「何が正解かなんて始めからわからないんだよ。前の場所のが終わった後にようやく教えてもらって、なるべく早くってやったよ」

「でも結局ダメだったんじゃ意味ないじゃん」

「意味は無くない。街の4つのシェルターの内1箇所の人は救えた。意味はちゃんとあったんだよ」

「じゃあ運が悪かったから母は死んじゃったって言うの!?」

「そうだよ。運が悪かった。近くのシェルターに入ったっていう運が悪かったんだ」

「そんなのないじゃん!じゃあもっと頑丈にしておけばよかったのに!」

「もう無くした人は戻ってこないから。だから一緒に行こう」

「行きたくない!やだもんそんなの!」

「お兄ちゃん。きっと一番辛いのはにいにだからやめてあげてよ」

「絢!母死んじゃったんだよ?何でそんな風にできるの!?」

「私も沢山人が死んでしまった景色を見たことがあるから」

「見ただけで何さ!それで納得できるはずないじゃん!」

「私も防衛戦に1度だけ参加させていただいたことがあります。その時前に私たち魂器がいたから体を2つに切られて死んでしまった方々を知っています。その街に居たから戦いに駆り出され、勇敢に真っ先に外縁部に走り配置通りに並び、襲いかかる当時の人間は到底手にすることはできない力で叩きのめされました。どこかで違う選択をすれば失うものが変わっていたかそれ以上に失うものがあるかあるいは全てを救えたか。救う力を持っていてもその手からこぼれ落ちる大勢の命をにいには見ています。どれだけ力があっても全ては守れません。事実、にいには関東、東北、北海道、沖縄以外での戦闘を経験したことがありません。にいにがいれば助かったかもしれない方々がその地域にも別の地域にはもっといるはずです。でもずっと万全ではないし離れたら別の今当たり前だと思っている何かが無かった可能性があります。その力を持ちながら苦しい景色ばかり見させられる立場になろうともせず、僕は無くしてばかりで自分が可哀想だとばかり言っている僕にそれが分かるはずもないですよね」

「絢、言いすぎ」

「ごめんなさい」

「それは洵に言うべきだよ」

「……言い過ぎたみたいです。ごめんなさい」

「——じゃあ、絢は何なのさ。そんなに偉そうに言って絢にそんな立派な力はあるの?ないでしょ!」

「あります。パイオニアの方々ほどではありませんが私にはその力も覚悟もあります」

「どうせないでしょ。それに簡単にそう言えるのは絢が人の心を忘れたからだよ。どうせ人じゃないのに僕の気持ちなんて分かるはずないよね」

「わかりません。あなたみたいに必死に戦えるようになろうとしない人の気持ちなんて分かりません」

「絢、ちが——」

「僕は絢が頑張ってきたことなんて見てないから知らないよ!でもさ!僕がこれまでどんなに頑張ってきたかも知らないのにそう言うこと言わないでよ!僕だってここにきてからずっと勉強も頑張ってるし毎日体痛くても走ったり武器の練習してるしクラスメイトとモンスターを倒しに行ってるよ!何度も何度も殺されるかもって思ってもそれでも——僕だってにいにの力になりたいし、荷物になんてなりたくないから頑張っててもこんな体で特別な何の力も持ってないのにできるはずないじゃん!」

「「……」」

「それに、僕だって他の人に弱音はいたりなんてしないよ!家族だから辛いことを辛いって言ってるだけなのに。それの何が悪いのさ!」

「私も最近ようやく人の体の素晴らしさと同時に人の体の不便さを思い出しました。きっと気がついたこの思い以上に普通の体は不自由なのですよね。ごめんなさい」

「どうせそれも言葉だけで本当にはわかってないんでしょ。いいよ、もうどうでもいいもん」

 絢は何を言えばいいのか分からなくなり口を噤む。

「……洵。お墓参り、だめかな?」

「……」

「母の?」

「うん、母の」

「……」

「前に、洵が病院に入ってる時にね、にいにはいとこの家にいたんだ。多分洵たちは知らないと思うんだけどそのいとこの家におばあちゃんも一緒に住んでたんだ。そのおばあちゃんがねにいにがそこににいる間に無くなっちゃったの。お父さんのお母さんなんだって。お葬式の時にいとこのお兄さんに聞いたの。何でお葬式するんだろうって。そしたらね、『人は死ぬ時に沢山の人に未練を残させて死ぬ。その時ようやく後悔を知ってももうその人はいない。うまくまとめられないけど、ばあばは俺たちに最後の勉強をさせてくれてるんだよ』って言ってた。そのいとこのお兄さんはその時高校生だったけどあの時のお兄さんにもおばあちゃんにもすごくいい勉強をさせていただいたと思ってる。後悔をなくすことはできないけど何か自分の心の区切りになればいいんじゃないかなって。実はにいにも共同葬儀の後一度もお墓を見に行ってないんだよね」

 自嘲するように亮は言った。

「私は行きたいです。育ててくれてありがとうと伝えられないとしてもきっと一番近いところで願いたいです」

「……僕も行く」

「ありがとう。じゃあ少し学校から抜け出しちゃおっか」

「こんな時間なの初めて」

「そうだね」



 夜の冷たい風がほおを撫でる。そろそろ12月になる冬の風が私たちの熱を冷ましてくれた。

 歩く間も洵は周囲をキョロキョロと見渡す。見たこともない景色を、意図的に見せないように配慮されていた自分たちよりもずっと悪い生活をする人の姿が周囲に蔓延していた。

「お兄ちゃんはこっちに来るの初めてですか?」

「初めて。絢は?」

「私もここは初めてです。ですがここではない場所でこれと似た景気を見たことがあります」

 月明かりが雲を突き抜け地面を照らす。そこには復興したのであろう家々とその隙間に棲みつく人間の姿があった。

「全員が住まえる環境を半年で整えるのは不可能です。そう頭で分かっていてもこの景色を見ると驚きませんか?これがあの未来の国とも称された日本の姿なのか、と。私はそう思ってしまいます」

「そうだね。ちょっと怖い」

「でもここはいい方だよ。協会主導の見回りが行われてるから」


 中心部から遠ざかれば遠ざかるほど建物はスラム化していた。そんな中にポツンと1つ石造りの構造物が姿を現す。

「ここが共同墓地。沢山の方の遺骨がその下に埋まってるよ」

「ここにいるんですね」

「ここに……母が……」

 洵の目から涙が溢れる。名前も書かれていない、“安らかに”と書かれただけの文字を見て嫌でも理解するしかないのだ。

「お兄ちゃん……」

「絢は悲しくないの?」

「悲しいです。でも私はこの前教えていただいてましたから」

「そっか、また僕が最後……」

「……ごめん」

「母、私たちは色んなことはあるけど何んとか元気にしています。いきなりいなくなっちゃってごめんなさい。でもきっと母に自慢できるぐらい魔物の脅威を感じない安全な国にするから。だから……安らかにおやすみなさい」

「僕もこれまで沢山ありがとうございました。最初の入院の時1人ぼっちで寂しかったけど母が頑張って沢山会いにきてくれて沢山おしゃべりしてくれたから頑張れたし母が僕の体をずっとマッサージして目が覚めた時に動けるようにって頑張ってくれたこと、僕は覚えてるから」

「……そんなことが?」

「本当のことだよ」

「うん、ほんと。僕力が渡ってきた時に知ったから」

「……ありがとうございました」

「1人で俺たちを支えてくれてありがとうございました。きっとまだまだ心配させてばっかになると思うけど2人はちゃんと守るから。それじゃ、帰ろっか」

「「うん」」

 風が起こる。それは『頑張って』と3人を励ますようだった。


 ◇◆


「書くのめんどくさい……」

 絢は今、日報を書いていた。所感がただの感想文になっているのが残念なところではあるが元の年齢を考えればそれもしょうがないものである。

「頑張りー」

「これ以上何を書けばいいのか分かりません……」

「ならそれでいいんじゃない?そこに置いときな」

「はーい。そういえば皆さんお揃いの腕輪つけてますよね。あれって何ですか?」

「これは魔力を貯めておける魔道具。いや魔法具なのかな?辻本さんが全員に渡してるからそれでお揃いみたいになってんの。欲しい?」

「うーん、私は戦闘はこっちの体でしかしていないので大丈夫です」

「そ」

「ちなみに私が欲しいと言ったらもらえる分あるんですか?」

「無い」

「えっ、期待しちゃったじゃないですか!」

「欲しいのなら性能は下がるけど似たのがあるからそれをあげる」

「別に必要ではないのでいいですけど……ちょっと残念です」

「俺のをやろう」

 ことり、と硬質な音がテーブル上に鳴る。

「あ!蓮さ、蓮殿こんばんは」

「体調はどうだ?」

「最近は結構いい感じです」

「そうか。無理するなよ」

「ちょっと待って、行かないで下さい。ダメですよ!これは辻本さんが蓮殿のために渡したものです。そんな簡単に受け取れません」

「いらないのか?」

「……いらないです」

「俺にはあまり必要ないものだ。絢にやろう」

「蓮最近ずっとあっちだもんね。改良版どうだった?」

「不備が見つかった」

「また〜?次はなんて言われたのさ」

「魔力が無い者に使えない」

「はあ?魔力が無い奴がどう魔術を使えっていうのさ。全く、これだから実戦を知らないおじさんはダメなんだよ」

「それを解決するのが技術者だ」

「ならあれ私に売ってくれない?」

「却下」

「けち」

「前にやっただろ」

「いつの時代も最新版っていうものに惹かれるんですー」

「くだらない。構造はほぼ一緒だ。お前の使い方なら変わらない」

「弾速最優先って作れないの?」

「それを作ってどうする。有効活用できるのがお前だけなら意味が無い」

「ちえー」

「あの、これお返しします」

「なぜだ?」

「蓮殿の魔力で染まり切ってますし」

「殿は不要だ。染まったものは自分で染め直せばいい」

「でも蓮さんがちゃんと戦うのに必要なのでは無いですか?」

「俺はしばらく前線に出ない」

「なぜなのですか?」

「俺が迷宮に潜るより物を作っていた方が合理的だからだ」

「……あ!そういうスキルでしたね」

「そういうことだ」

「だとしても、蓮さんに何かあった時にこれはあった方がきっといいです。私は人より死ににくいのでそっちの方がいいと思います」

「そうか、欲しくなったらいつでも言え」

「ありがとうございます……」

「また試し撃ちさせてよ」

「ああ、次ができたら声を掛けよう」

 蓮は日報を置き自室に向かって行った。

「初めてちゃんとお話ししたかもしれません」

「蓮は怖い?」

「蓮さんってここで一番身長高いです?」

「そうだけど」

「でも細いですしすごい不健康そうな顔をしてるので……それでもやっぱり怖いですね」

「蓮になら負けないって思わないの?」

「えぇ、どちらかというとそうですけど……」

「でもさ、かっこいいよね」

「確かに支えがいありそうです」

「海斗はどう見える?」

「元気なお調子者?」

「ぶふっ!分かる!」

「あ、ごめんなさい。ムードメーカーと言った方が正しいですね。私とはあまり接点がありませんがいつも誰かと楽しそうにお話ししてます」

「じゃあ慶典は?」

「体はがっしりしていて優しい感じ、でも猫背で自信なさげなのが勿体無いです」

「ふーん。じゃあお兄ちゃんのことはどう?」

「お兄ちゃん?子供ですかね?」

「子供?」

「寂しがりやで甘えん坊で。まぁ私と一緒なんですけど」

「あー、亮の方亮の方」

「あっ、そうですね。……弱虫で怖がりの癖にそれを隠し通せてると思ってる……そんな人だと思います」

「……あいつがね。まぁそうだよね。亮ってさ、前までどんな人だったの?」

「すごく塞ぎ込んでいました。にいにが小学生の頃先生とクラスメイトに恵まれなかったみたいで。田舎なのでクラスも1つ、中学校もみんな同じという環境ですごく苦しんでいたと聞いています」

「そうなんだ」

「あとはその時から大人嫌いと女性嫌いがあります」

「あ〜それで。いやいや、そうじゃないない。絢はどう思ってるのってこと」

「何を言いたいかは分かります。でも兄にそういう感情はないですよ」

「ふうむ、あたしとはどうやら違うようだ。まだ女の子になりきれていないみたいだね?」

「えぇ……そういう方もいらっしゃるとは聞きますが少数派ではないのですか?」

「ま、私も本気ってわけじゃないから。でも他の奴らにはあるのね?」

「……ないですよ。歳の差考えて下さい」

「ふぅん」

「まだ恋とかそういうのわからないですもん……。最近までそういうの全く考えれない生き物だったんですよ!いきなり分かるはずないじゃないですか!」

「そっかそっか。お姉さんはね……お姉さんは切実にまずは身長とお胸が欲しいよ」

「それって全部じゃないですか」

「なにおう!全部足りないちみっ子だと!うあぁ、いつか絢にも身長が抜かされるかと思うと……悲しい」

「《交換》で何かできないんですか?」

「できるよ?《交換》で身長も体型も見た目も売ってるけどさ。でも、ね?私たちがそんなことにポイント振ったらどうなるんだろうね……」

「あら、楽しそうな話ね。私も混ぜて?」

「く、全てを持って生まれた悪魔、琴ちゃんめ。絶対に負けない」

「もう負けてるのでは?琴子さんお疲れ様です。お水お持ちします」

「ありがとう。彩ちゃん《清潔》お願いできる?」

「《清潔》はい、できましたよー。はぁ、なんで私が毎日……」

「仕方ないでしょう?私には高いんですもの」

「お嬢様め!うらやめしい」——羨ましいと恨めしいの造語

「遅くなりました。彩花さんもどうぞ」

「絢ちゃんありがと!」

「彩ちゃんお酒結構飲んだでしょ。お水飲んだらもう寝なさい」

「この匂いはお酒だったんですね」

「だってさ隊長〜協会行く度に『開拓団に入れて下さい!』って話しかけられるんだよ?もう嫌んなっちゃうよ」

「人気があるというのも面倒よね」

「団の方にはどんな方を入れてるんですか?」

「一定以上のレベルと〜頭と〜技能!これ大事ー!」

「少し静かにして。もう休んでる人もいるのよ」

「そういえば隊長ももう結婚時期じゃないの〜?いい人いそう?」

「残念ながら。それに私が動けない期間どうするの?遠距離対策がダメじゃない」

「ダメダメー!」

「そう、だからまだ先のつもりよ」

「行き遅れー!」

「彩ちゃん?」

「あ、今すっごい酔いが覚めた。琴ちゃんごめんね?」

「全く……。開拓団にはオーブのスキル無しの私たちと同等の働きができる可能性の持ち主を入れているわね。正直入団希望者が多すぎて捌ききれて無いわ」

「入団を申し込める条件に私との戦闘に勝利するという条件なんてどうでしょう?」

「それじゃあ障害にもならないじゃない」

「……ごめんなさい」

「ごめんなさいね。ついつい……傷付けたいわけじゃなかったのよ?」

「ちゃんと考えれば事実なので余計にへこみます」

「でもそうね。絢ちゃんは単純に個人戦闘に関する試験管としてはいいかもしれないわね。でも死ぬ可能性があるのでしょう?」

「はい。なので追々?完全な戦闘員の中で一番弱い私を倒せない程度では入ろうなんてできないぞ、という感じでどうですか?」

「絢ちゃんが育つのを楽しみに待ってるわね」

「はい!……あんまり見ないでもらえますか?」

「ごめんね?前より元気になっているのを見て安心していたの」

「あの、やっぱり見るのやめて欲しいです」

「うふふ、確かにこれのどれが本物かわからないわよね」

「そう言いながらダミー全部見た後に本体に目を戻しているじゃないですか!こちらとしては本当に怖いです」

「そんな面白いことしてるんですもの。一緒に楽しみましょう?」

「私は命の危険を感じています」

「あら、これ以上はダメね?それじゃあ頑張って?」

「……はい」

「彩ちゃん、彩ちゃん。寝ちゃったわね、どうしましょう」

「私が運びます」

「どうやって?」

「こうです」

 《変態》し服を着る。

「あら、すごいわ」

「それではおやすみなさい」

「私はまだここにいるから何かあったら来てちょうだい」


 彩花さんを抱え部屋を出る。

「いやだ、置いていかないで……」

「大丈夫ですよ」

「……うん、——誰!」

「あ——」

 バチンと空間が潰され——無かった。

「彩ちゃん?また家を壊そうとしたわね?」

「ひっ今のはわざとじゃ」

「いい?あなたはお酒に酔い潰れて寝ているところを《変態》した絢ちゃんに連れて行ってもらってるの。これでその必要が無くなったわね?早く寝て来なさい?」

「は、はい!あっ……下ろして……」

「今魔物の気持ちが分かった気がしました」

「ご、ごめんね」

「どうぞ、良い夢を」

「その顔、……いいじゃん」

「こちらとあるモデルさんの顔を体格に合わせ少し美化したものとなっております」

「別の意味でドキッとしちゃったよ」

「残念ながら私の体は全て結局は作り物です」

「そ、おやすみ」

「はい。おやすみなさい」

「あのさ……やっぱなんでもない」

 彩花は足早に階段を上がって行った。


「絢ちゃん大丈夫?危なかったわね」

「今のは琴子さんが?」

「ええ、そうよ」

「命の危機でした。ありがとうございました」

「そう。絢ちゃんも早く体を変えて寝ちゃいなさい」

「今します。完了です。服着ます」

「あなた自分の肉体に無頓着よね。場所を考えて着替えなさい?」

「結局は作り物、いかようにもできます」

「その体も?」

「しようと思えばできます。辛いからしたくはありません」

「そう。なら大事にしなきゃダメよ?」

「分かりました。あの……相談いいですか?」

「なんでもどうぞ?」

「私もギルドに皆さんと同じようにポイントを入れたいのですがどうすればいいですか?」

「そうね、あれはみんな思い思いの額を入れてるだけだから気にしなくていいのよ?」

「ついさっき三途の川を見たばかりなのでなるべく外してしまいたいとそう思いました」

「なら遠慮なく。余裕があればそこに置いてる箱に実体化して適当に入れてちょうだい?」

「分かりました」

 絢はとりあえず20000p入れ自分の手持ちは残り1000p程になった。

「いいの?」

「私が持っていてもそんなに使いませんし防具やお布団用意してもらってますし……足りなくなったら頭を使って解決します!」

「そう、ありがたくいただくわ」

 絢は逃げるように足早で部屋を離れる。この人との2人っきりが1番怖いのだ。

ボリューム安定してきました。


「面白い!」「続きを読みたい!」「連載頑張れ!」などと思っていただけた方は、ぜひブックマーク、⭐︎評価などよろしくお願いします。

作者のモチベーションが上がり作品の更新が継続されます。


誤字脱字、違和感のある箇所など教えて頂けたら嬉しいです。

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じーってダミーと本体毎回みることで嫌がる絢ちゃんをからかいつつそれで隠すの必死になって上達しないかなぁとか思ってそう
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