69.捕獲
矢によって貫かれた兜を新調し、やって来た人に連れられ街に戻り協会に孤児の報告と自身が殺したことを伏せ情報を渡して街をふらつく。行き着いた先は占いの店、継承者の元だった。
「ご主人、只今戻りました」
「レベル上げはしないのね」
「申し訳ありません。踏んだものが帰りの転移陣でしたので戻って参りました」
「《天秤》以外にも治療の足掛かりを見つけたのでしょう?十分じゃない」
「ありがとうございます」
「そろそろ元に戻さない?威圧感嫌なんだけど」
魂器のまま急いで通常の姿に戻る。
「それでいいのよ。もう来るし、ね?」
背後で入り口の布地が持ち上げられ声が響く。
「あ!」
後ろを振り向くと彩花さんが居た。
「あ……」
見つかった……。思わず一歩後ずさる。
「じゅ〜ん〜?あんた部屋に居なさいって言ったよね。どこ行ってたのか大人しく吐きなさい!」
一瞬で確保されそのまま頭をクリグリとされる。
「ちょっと迷宮に——」
「迷宮!?どこ、の、継承者?もしかして絢に経験させた?」
「ええ、必要なことよ」
「ふざッ、絢にさせる必要ないでしょ!それに!亮に気づかれたらどうするわけ!?」
「彼もそろそろ現実を見る必要があるわ。完全な正義などどこにもない、ってね?」
「それはそうだけど。あ〜あ、もう知らない。私達嫌い同士なのに私の監督不足で……琴ちゃんの精神が削れる音〜。隠さないと、あとで口裏合わせね」
「どちらかというならあなたの方が——」
「そんなの分かってるって。とりあえず、《清潔》。多少マシにね。ほら、絢帰るよ。敵と戦うにも順序ってもんがあんの。スキルとして発現しなくてもできるかできないかは大きいんだから」
「ごめんなさい……」
「何が?」
「勝手に抜け出しちゃってごめんなさい」
「あんたの病気についてはよく聞かされたから何となく知ってるんだけどさ意味記憶ごととんだあんたの精神年齢が幼いってのは知ってた話だからこっちの不注意。子供の失敗はその保護者の責任なの。わかる?あんたの気持ちに気が付けなかったこっちのミスってこと。次からはちゃんと相談するように、終わり!」
「お姉ちゃんできるのね」
「うるっさい。ほら、その手は汚れたかもしれないけど誰かが背負うべき汚れだった。他の一般人にさせるよりアイツに集められた私たちで完結できるならそれで良い。そうでしょ?」
人殺しになった私の手を忌避せずに伸ばされた手とその言葉はどれほどに私の心を救っただろうか。きっとこの人も多くの苦悩を抱えたのだろう。私と違って何者に縛られるわけでも無く自分の意志で進む彼女を眩しく思いながらその手をとった。
◇
「はい、ということで絢を捕獲してきたから技を詰め込も。亮?」
できるよね?と兄に視線が向けられる。
「強化、物質化、飛刃は俺が受け持ちます。射撃と盾、魔力探知、魔力制御は戻られたら琴子さんにお願いするで良いですか?」
「射撃と制御は海斗。後は……うん、琴ちゃん忙しいかかあたしが持つ。それでいい?」
「彩花さんそんな上手く無いじゃないですか」
「できるからいいの!あたしは蓮の研究所行ってくる。多分そろそろ改良版の試作品できてる頃合いだろうから」
「分かりました。じゃあ絢、こっちおい、で……。彩花さん!?」
既に彩花さんは退避済み。この部屋には私と兄以外誰も居なかった。
「絢?その、人の血の匂いがするんだけど、もしかして、もしかしてだよ?殺した?」
「落ち着いて下さい。それは私が《変態》で作ったものと浴びたものです」
「どういうことか説明してくれる?」
「私はここを抜け出した後にいてもたっても居られず骸骨洞穴の迷宮に行きました。そこで内部に入った途端に襲われました。どうするべきか分からなかった私はとりあえず自分を偽装死させることにしてこんな感じで血をつくりました。血の感覚は《人形》で分かってるのでこれは簡単だったのですがそこに黒装束、恐らく執行官と思われる方が現れて、襲撃者をバッタバッタと薙ぎ倒し私を助けて下さいました。恐らくその時に被った血液と自分で作った血液の残りが魂器の中に少量混ざってしまったのだろうと思われます」
「そっか、そうだよね。良かったぁ。ふぅー、じゃあまずはその血液をなくそう。迷宮出たあとどっかでシャワー浴びた?」
「して無いです」
「うん、シャワー浴びといで?」
温い流水は私の気分を上昇させる。さっぱりした。
「出ましたー、服ありがとうございます」
「はいよ、血の香りがかなり減った?何かした?」
「体を変えました。今の私は《人形》です」
「ひとがた、スキルか。魂器はある?」
「これです。球状にしました」
「軽く綺麗にするね。《清潔》、うん。こっちの方が楽かも。それじゃあ……強化と物質化、どっちからしたい?」
「もうひとつありませんでしたか?」
「楽にしゃべっていいよ。もう一個は飛刃って言うんだけど前提に物質化が必要なんだよね」
「そっか……じゃあ強化からお願いします!」
「オッケ。強化っていうのは3種類の強化の融合スキルなんだよね。身体強化、武器強化、防具強化。全部にそれぞれに適した強化を施せるようになるといつの間にか1個になってるのさ。この中で多分絢は防具の強化が出来ないよね。それ以外には出来ないのあった?」
「ないです」
「こちら復元が完了した絢の戦闘服、今日はこれを自分の魔力で染めてみて」
抵抗はされないが誰かの魔力がものに残っているため少し時間をかけながら服を染め切る。
「じゃあそれ着がえて来て。自分の部屋でね?着ながら服に強化ができるようになれば完璧。できるようになったら手袋とか靴とかも染めてみよう」
服を着替え動きながら服に満遍なく魔力を通す。一度染め切った物に再び通すのは魔力切れが起きなければ難しくは無かった。
絢は防具を強化することに成功し肘や膝などを集中的に強化することもできるようになる。が、体は限界を迎えていた。原因は魔力切れである。
いつも大量にあった魔力もほぼ全て元から魂器のものだった。自分の力のみで扱える魔力の量はそもそも多くは無かったのだ。
呼吸が浅くなり全身が痛む。汗が各所から溢れ出し体の不調を訴えた。
「限界?」
「すみません。お水が欲しいです」
用意された水をゆっくりと飲み干し渇きから脱する。こっちの体は人らしく貧弱すぎていつもの感覚で何かを始めるとすぐにガタが来てしまう。
水分を吸収、一部を魔力の回復に回す。それでもしばらくこの体は動きそうにない。
「一度魂器に戻ります。こっちは苦しいです」
重い足取りで階段を登り自室に入る。魂器を取り出し肉体的苦痛から解き放たれた。
「戻りました。訓練を再開します」
「おかえり……疲れたら休むで良いんだよ?休むことも大事だからね」
「分かりました。今夜はゆっくり休みます」
隊服装備一式を染め切る前に何かが結晶化した感覚を覚える。その類の力を扱い慣れたことが認められたようなそんな気がした。その結晶は他と混ざり合いひとつになる。自由度が増した気がした。
「今変わりました。《ステータス》」
ステータス
名前:古枝絢 年齢:7 職業:冒険者
種族:魂生 レベル:1 所属:先駆者
状態:従属・破損
技能:中位自己鑑定・交換・天秤・魂在・人形
変態・魔力操作・強化
片手棍棒・短剣・小盾・大剣
装備:魂器・召喚の腕輪
魔鉄短剣・収納袋
「強化系が統合されて《強化》になりました」
「それをまた今度に練習するんだよ。それじゃあ次、物質化。魔力を体の外で固形化するスキル。魂器を伸ばさずに魔力だけで好きな形を作ってみよう。こんな風に、できる?」
亮は手にナイフを形作る。
真似をしようとするもなかなかに難しい。物に沿って魔力を通すのではなく、何もない場所に魔力を集中させる。
「難しい……です」
「それじゃ手を重ねて。一緒にやってみよう。ビー玉を作るよ。まずは全部任せてね」
「はい」
重ねられた手に亮のものと思われる魔力が流れ込もうとする。最初の勢いは良かったが一瞬で止まりすぐに退いたと思うと勢いよく手を離された。
「やばっ!これダメだ」
「え、何が……」
「ふう、危なかった〜。魔力量が違いすぎて逆流しそうだったや。ちょっとさ魔力を手から遠くに離してくれない?全部じゃなくて良いから」
「……やりました」
「それを維持できる?よし、もう一回やるよ」
私の手を亮の魔力が包み、少しずつ浸透する。私の魔力を導くように亮の魔力が動き少量の魔力が表面付近に移動しそのまま掌と接地した位置に球体の魔力が物質化された。
「まだ何かしなくて良いからね。最初は感覚を掴もう」
「分かりました」
ビー玉のように《物質化》された魔力は淡い光を放ちながら掌の上で転がる。されるがままに手を上に振るとそれは軽く飛び上がり物理法則に従って掌に落ちた。最後にその魔力を体に吸収し亮の手は離される。
「どう?なんか掴めた?」
「なんとなく?」
「最初は難しいよね。でも慣れれば結構便利だからおすすめだよ。次は一回自分でやってみよう。外に出す魔力を用意して、その魔力を決まった形にして体の外に出す。この時はじめは皮膚と離れないようにするのがおすすめ。形を維持したまま体の外に持っていけたら第一段階クリア。これを手放しても維持できるぐらい魔力の扱いが上手くなれば完璧。失敗しても大丈夫。最初は魔力少なめでね」
言われた通りにしてみるも体の外に魔力を出して維持することがどうしても出来なかった。
「難しいです」
「大丈夫大丈夫。みんなそんなすぐ出来ないから。もう1回一緒にしてみよう」
亮が動かす魔力は体の外に出ても形を維持できている。私からしたら不思議でしょうがない。
「ここまでできたからにいには補助外すね。ビー玉そのまま握って、そう。そのまま逃さないように手に力を込めて。その力で壊れないようにビー玉の外側を固くして、そうそう。上手いよ。外すね」
補助を外されるとあっという間に魔力は霧散する。絢は練習を続けた。
ひとりふたりとメンバーが部屋に戻ってきては各々が会話を楽しむ。その近くでいつまで経っても上手くいかない《物質化》に頭を悩ませる絢がいた。
「今日はもう終わりにしよ。《強化》できたし進捗としては十分だよ」
「分かりました。今日はありがとうございました」
「うん。……絢のさ、寿命って残りどのくらいかわかる?」
「残り動けなくなるまで3週間無いぐらいです」
「あれ、伸びた?」
「はい。発見があって少し延命できてます」
「良くは無いけど良かった。絢は明日どうしたい?」
「明日ですか?明日は迷宮に行きたいです。今ならもう少し良くなるかもしれません」
「そっか。もし良かったらさ、洵と話したりしない?洵はね絢から何か力を受け取ったのは分かってるらしくって、それに普通に喋りたいっていうのもあると思うしね。きっととても寂しいだろうから」
「私は……」
喋ってどうする?この汚れた手で洵に触れていいのだろうか?でももしかするとこのまま死ぬかもしれない。なら話しておいた方がいいのだろうか?
「いやかな?」
「どうしたらいいと思いますか?」
「絢が会いたければ会って欲しいしそうじゃないならそれはそれでいいよ」
「私にはどうすればいいのか分かりません。会わない方がいい気もするしせっかくだから会って、……会って何をすればいいのでしょうか?私には戦う、戦って継承者様のお力になることしか分かりません」
「そうだね……絢にもこれまでずっと戦わせてしまったから。ごめんね。……頭ではどう思ってて心ではどう思ってるの?」
「頭……頭ではそんなことに時間を割くなど無駄でしかないと思います。戦って少しでも継承者様の役に立てるようにならないといけないと分かっています。ですが心では誰かと楽しくおしゃべりしたいと思っています。そんなこと無駄でしかないのに」
「無駄だとしてもいいじゃん?そのおしゃべりで少しでも元気になれるかもしれない。行こっか」
「はい。分かりました」
「前みたいにもっと砕けた感じでいいのに。お兄ちゃん寂しいよ!」
「そう言われましても、ここは家では無くギルドルームですし。今もギルドメンバーとして技術を教えていただいて明日の予定を立てている訳ですので。それと……にいにはにいにです。やっぱりお兄ちゃんは無しです」
「それは確かにって——ガーン。悲し……」
「って感じで《強化》は覚えさせれました。《物質化》は追々できればと思います。《魔力制御》は海斗さんに頼みたいです、《魔力探知》は彩花さんが請け負ってくれました。《射撃》と《盾》と《飛刃》は《物質化》が発現したらその時に俺が教えます」
「探知もオレ持てるよ。オレのほうが暇人じゃん?」
「ありがとうございます。それと明日ですが絢を洵に合わせようと思います」
「学校っしょ?いいんじゃない?」
「学校です。皆さんよろしいでしょうか」
「「「賛成」」」
「その後は?」
「継承者から各地の氾濫箇所に連れて行けと言われているのでそうさせようと思います。ご協力をお願いします」
「分かったわ。絢ちゃん、今日もお疲れ様。今日はお風呂を張ってもらってあるからゆっくり温まってちょうだい。必要かは分からないけど柔軟運動とか他の人と一緒にやってみてね。他メンバー口頭で報告すべきことはあったかしら——」
◇
湯船に並々とお湯が張られ身を清めた2人は湯に浸かる。シャワーとは全く次元の違う満足感が体を包んだ。
「《人形》ってすっごい人の体と感覚が似ててねすごく幸せなの」
完全なリラックス状態。お湯を楽しむ絢はお願いして一緒にお風呂に入って貰った亮と会話を楽しむ。
「そうですか、そうですか。でもやっぱりお風呂は別々の方がいいと思うよ?」
「でも人の時は一緒にいっぱい入ってたじゃん」
「状況が変わってるからね。でも絢がそれがいいって言うならそうするよ」
「ありがと。懐かしい気がするなぁ。お風呂場も全部違うけどこうやってにいにと一緒にお風呂に入ってのんびりするの。にいにが頭洗ってくれる感じもすごく懐かしかった」
「ずっと洗ってたからね」
「ちゃんと覚えてる訳じゃないんだ。でもねなんとなく懐かしい気がするの。それがすっごく幸せだなぁって思うんだぁ」
「そっか。今日までよく頑張ったね」
「にいにも頑張ったね。僕は魂器使ってたからあんまりわかんないけどにいにはずっと人の体で戦ってきたんでしょ?洵を守って、母も守ろうとして、それでいて誰も見たことのない場所でみんなと一緒に戦ってきたって言うのはとってもすごいと思うよ」
「……絢、ありがとう。でもにいにはまだ楽だったよ。こんなに心強い仲間がいるんだもん。絢にもきっとにいに達が分かれない辛さがずっとあったんでしょ?誰かのために自分を犠牲にできる人は多くないよ。すごく頑張ったんだね」
「うん、うん。僕ねずっと頑張ってたんだよ。知らない人が沢山いる中でずっと感情は全然、すっごく抑えられてたけど自分が自分じゃなくなってく感じが嫌で、きっと怖かったんだと思う。攻撃されるたんびに大根おろしに自分が端っこから削られていく感じがしてね?とっても、とっても辛かったの。でも、辻本さんに見せられたあんな風になって欲しくないんだもん。きっと継承者様ならちょっとでも良くしてくれるって思ってたの。でもね、でもそれってとっても辛いし怖いことだったんだ。もう逃げ出したいって進化の時に思っちゃったもん。でも僕が逃げたら沢山の人が不幸になるかもしれないって思うと頑張らなきゃって。でもそれでも不幸になる人がいて、でもきっと良い方に行けてるんだよね」
「絶対そうだよ。大丈夫」
「ありがと。でも怖いよ。にいにも身体中ボロボロ。なんでそんなに頑張れるの?」
「にいには国のため、なんてそんな崇高な考え方じゃないけどただ残った家族の為に。そう思ってるよ。絢もにいにに残されたたったふたりの内のひとりなんだからちゃんと頼ってね」
「うん、でもなんか怖いよ。助けてって言ったらにいに居なくなっちゃいそうなんだもん」
「……うん。命をかけなければいけないのならにいには命をかけて絢を守るよ。もちろん洵もだけどね?」
「そんなこと言わないでよ。本当にやだよ。家族の記憶で一番おっきいのにいになんだよ。母ももう居ないし父の記憶なんてあるわけないしにいにまで居なくなちゃったら。大事なものがこれ以上無くなるのはやだよ」
「ごめん。聞きたくないだろうけど言うね。——でもねにいにはね自分の価値っていうものは自分が大事なものよりもずっと低いんだ。絢、にいにの命を、そのまま……《天秤》にかけてみて欲しい」
「嘘だ。にいに震えてるよ。そんなことしたくないよ」
「お願いだから一回だけ、掛けるだけ掛けてくれない?」
「やだ!」
「絢……手を借りるよ。《天秤》発動、命を対価に対象の魂の回復を望む。……足りない?」
「やめてよ!今すぐそんなのやめてよ!」
「分かった、分かったから」
「なんでぞういうごとずるのさあ!」
「亮!あんた変なことしてんじゃないでしょうね!」
「絢に生きて欲しいから!それ以外にないだろ!?家族を守るためにずっと戦って来た。助けれるはずだった。別の街を見捨てていれば助けられるはずだった!魔物が別の街を狙っていれば何も起きなかった!なのに!にいにはもう母を死なせてしまっているんだよ!自分が危険に遭うだけで家族を守れるならばと喜んで最前線に潜ったよ!そして、今自分の命をかければ助けられるかもしれない家族がいる!掛けない理由があるか?そんなもんある訳ないだろう!でも結局足りなかった。普通進化の自分じゃあ等価交換ではないとさ。俄然やる気が出たよ」
「僕だって一緒だもん。僕が死ぬよりにいにが死んじゃう方がやだもん。だから、僕が自分で生き残れる方法を探すから、だからそんな事もう言わないで!じゃなきゃ家出するからね!」
「ふ、ふふふ。そうだね。うん。ありがとう」
「何がさ!次そんなこと言ったらにいにのこと嫌いになるから!」
「ごめんって、先に出るね」
「……だめ。もうちょっと一緒」
「のぼせちゃうよ」
「にいになら大丈夫」
「はいはい」
結果のぼせた絢は亮に介抱してもらいながら自室に戻る。部屋には敷布団が準備されていた。
「お布団。すごい。初めてのお布団。あったかい」
「よかったね。材料は違うけど手作りだから長持ちするよ」
「うん。もう眠い。今何時?」
「何時だろうね。もう寝ちゃっていいよ」
「……だめ。柔軟する」
兄の見様見真似で柔軟を軽く行う。
「硬い?柔らかい?」
「どちらかというと柔らかい方じゃないかな?体が柔らかいと負傷も減るからコツコツ頑張ろうね」
「うん。もう終わりでいい?」
「いいよ。おやすみ。電気消すよ」
「それおもしろいね。電気じゃないのに電気」
「そうだね。加工された魔石を使った魔道具だよ」
「すごい」
「おやすみ、また明日ね」
「だめ、寝るまで隣にいて?」
「分かったよ。ほら、これでいい?」
「うん」
隣で横になる兄の手は以前より硬く大きい気がした。
「そういえばにいに体もおっきくなったよね」
「身長少し伸びたかな?」
「筋肉が増えた」
「鍛えてるからね」
「頑張ったあかし。傷もいっぱい」
「そうだね。その分強くなったよ」
「私の傷もいつか強いあかしになるかな」
「その傷はちゃんと治して欲しいかな?」
「がんばる——」
「……おやすみ」
ほのぼの……。
文字数8000弱。バブル崩壊。どこで止まるのか。
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作者のモチベーションが上がり作品の更新が継続されます。
誤字脱字、違和感のある箇所など教えて頂けたら嬉しいです。




