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地球魔力改変  作者: 443
続序章 下準備
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56.迷宮籠り

軽く身を清め私たちはダンジョン協会に入る。

奥の部屋まで進むと1人の男性が床に寝転んでいた。


「情報を」


継承者がそう促すと男は目をパッと見開きすごい勢いで各地の進捗や被害状況などの言葉を羅列した。


「ありがとう。注意点を紙に残して置くわ。貴方は夜にもっと寝た方がいい。早死にするわよ」


「仕事が多すぎるんですよ」


そう言いながら男は起き上がり継承者を一瞥し部屋から出て行った。

継承者は気にすること無くメモを残し一言。


「着いてきなさい」


「承知しました」


◆◇


街の中心部、と言ってもまだ建物(土家)があるのはここしか無いが、同じ様な家が並び立つ一角に占い師のテントの様なものが建てられておりその前で継承者は足を止める。


「良いじゃない」


中に入ると簡素ながらしっかりとした作りの椅子と机、光源となる魔道具(魔法)のランタンが置かれていた。

継承者はステータスを見て何かしているかと思えばテーブルクロスとチェアパッドを用意しそれぞれに被せる。


「とりあえずこんなものかしら……。私はこれから占い屋を始めるわ。基本私はここかこの裏の家に居るからないだろうけど何かあったらそこに来て。今日はとりあえずこれからダンジョンに行く執行官にでも着いて行こうかしら?貴方はしばらく中位魂器を使ってレベル上げをしなさい。レベルが30になった時、器か装備に問題がある時、あるいは問題が起こる可能性が出た時にのみダンジョンから出てきていいわ。但し最初の条件が達成出来ていないのならまたダンジョンに戻ること」


「承知しました」


「その時になったら貴方の成長を見せてもらうわ。そうね、行く場所は決めてあるけれどその前に街を回りましょうか」


外に出ると彼女はそのまま街の外周に向かって歩き出し、私もそれに追随する。

外側に進むほど比較的内側には大勢の怪我人が横になり街の端にはどこまで進んでも昨日より小さくなっているという植物が織りなす高さ1メートル程の壁とその内外には無数の死体が転がっていた。

その近くでは地面を浅く掘りその中に死体を入れ、積み上げ、油を撒いて火をかける。

そうして昨日の戦いで亡くなった人々を今できる限りで弔っていた。


戦うか、農業をするか、身につけた技術を伝えるか、街を出て死ぬ。

この選択肢を何もしない者たちに投げかける男。

良い成績を残し、少しの条件を呑んだ上で希望するならば他の職につける様になるというが一体どれだけの人数がその道に進めるのだろうか。

ほんの数日前まではよっぽど酷い者以外は殺されずに文句を垂れて動かない者も居たそうだが今日からはもう違う。

前々から言われていたそうな選択の日が今日のようで昨日の今日で争う気力もない人々は大人しくその命令に従っていた。


周囲の状況を継承者に伝えられながら街を一周しテントに戻る。

促されるままに中位魂器を使用し眠りにつくも、回数を重ねる毎に短くなる器交換の眠りは遂に30分を切ったようだ。

元の器から衣服を脱がすとその腕に隷属の腕輪は無く、確認すると今の器に付いていた。

この呪縛とはまだ一緒のようだ。


いつもとは違う初級ダンジョンに連れられ中の様子を簡単に教えられる。

ここは死霊系であるスケルトンやゾンビが現れるそうで注意点は他と比べ数が多い事だそう。

初級ダンジョンというのもあるがその分知性は低いようで魂器には適しているのだとか。

ついでに言うとゾンビなどの腐肉臭がキツく人はほとんど寄り付かないらしいのだ。


斬られたり壊されたりしてしまったので新調した装備。

鞄といった類の動きを鈍らせる物も地図も持たず装飾品といえばただ魂器特有の生気が無く動作しな——動いた……しかし挙動がおかしい不気味な目を隠す布のみ。

ある意味いつも通り、しかしあり得ない軽装とひとつの新たな命令を刻まれ私はダンジョンに侵入した。


◆◇◆◇


半人に進化した日から器を変える毎にレベルが2では無く1からになった。

これもきっと進化による適応なのだろう。

ゴブリンと比べると動きも遅く、下に行っても中々連携を取ろうとせずにただ突撃を繰り返す敵の対応はこれまでと比べとても簡単で、上階層では問題なく戦いをこなしていった。

骨を砕き肉を潰す、たまに攻撃を受けるが器の弱い修復機能に加え《変態》を活用し傷口を塞いだ。

始めほど大きな怪我ほど早く、小さな怪我ほど遅くしか直せないのはきっと体から溢れ出る魔力を使って直しているからだと思われる。


宝箱を幾度か見つけるも中身はポーションや武器などで嵩張るため命令完了(その時)まで持ち出されていなければその時に持ち帰ろうと思いスルーする。

レベルは上に上がるほど更に上がる事が難しくなり何度も器を入れ替えることで貯めた魔力をその都度失った。

その度に『ではどの様にすればより強くなり、器を長く使えるようになるか』を工夫する様になった。


7階層まで行くと数の暴力に加え思考する様な魔物が増えその更に少ない個体が高い戦闘能力を保持しており私は行き詰まる。

そこで思い出したのが継承者と中級ダンジョンに向かった時の継承者の言葉だった。

『魔力の活用』、その記憶を思い出すと更に昔、そのことについて男性に教わった様な気がしたがその残映はいつの間にか消えてしまった。

苦痛も疲労も空腹も感じる事がなく眠る事もない、そしてずっと練習し続けた私がそれをできる様になるのまでさして時間はかからなかった。

レベルが10にもなれば魔力的には短時間のみだが使える様になった《身体強化》とそれを得る過程で得た《魔力操作》というスキルでその壁を破り強敵を屠った。

当然こちらが敗走することが無くなった訳では無いが、その2つの力と《変態》を扱いそれらが上達する内に30レベルになっていた。


命令を完了できたのでこれまで見つけた宝箱を回収しようと思うも既にそこには何も残っておらず、しょうがないので帰り道分だけでもと石を回収して外へ出る。

中位魂器の視野と視界限界は下位魂器よりも広いがそれでも空はおろか周囲の様子を満足に見ることも出来ない。

しかし器交換などでダンジョンから出る度に変わる周囲の様子により命令からの時間がそれなりに経っている事が分かった。

ここがどこだか、どの方向に行けば元の街に戻れるのかを知らない私がその場に立ち尽くしていると前方から声が掛けられる。


「お疲れ様。しっかり生き延びたみたいでよかったわ」


「ご主人、戻るのが遅くなりました」


「いいのよ、時間がかかるのは始めから分かっていた事だから。少しお話しない?ついて来て」


継承者の後を追い連れてこられたのは木造1階建てのカフェの様な場所だった。


「マスター、ミルクティーを1つ」


席につくと継承者は飲み物を注文する。


「さてと、何か進展はあった?」


「レベルが30になり《身体強化》を獲得、《魔力操作》《変態》もそれなりには上達しました」


「レベルが上がった事で身体性能は上がった?」


「いいえ、おそらくその様なことはありません。ですが武器の扱いや体の動かし方などの戦う技術は戦った分ついて来ます」


「そう、あなたもそうなのね。他の魂器もそうなのよ。初めは体に無理させてもなんともないと理解してか動きは良くなる、けどあなたも変わらないと思っている。やっぱりダメみたいね。何の為にあなたは《変態》を貰ったのかしら?」


「存じません。しかし《変態》はとても人に扱えるスキルでは無いように思います。何故ならこれは無理やり肉体を変形させるものであり、痛覚のある人間には扱えないと思うからです」


「そう、……いいわ。あなた、武器を変えるつもりはある?」


「私は戦棍(メイス)を使っていますが武器を変える必要があると感じたことはこれまであまり無いです。ですのでこのままで良いと思います」


「せっかくあなたの為に貰ってきた短剣があるのだけど、見てちょうだい」


テーブルの上に出された短剣の鞘を抜くとよく磨かれた鉄の銀色が顔を見せる。


「短剣を持った方が良いと仰るならば自分で交換致します」


「コレは少し特殊な剣で魔力を通わせる事ができるのよ。まだ誰も染めていない、新品。これがあればあなたはもっと強くなれる。多少の困難ならこれが簡単に解決してくれる。そしてそれがいつか私達の役に立つ。だから受け取って」


「承知しました。ありがたく頂戴します」


「《魔力操作》があるなら武器に魔力を流す事もできるはずよ。やってみて」


体の一部に魔力を集中させる様にその短剣に向かわせる。

最初はなかなか浸透しなかったが10分ほど続けると徐々に魔力が通いやすくなり30分もすれば完全に浸透した。


「お待たせしました。魔力を通す事に成功しました」


「通わせるを超えて完全に染め切ったわね。待った甲斐があったわ。少し強い敵やメイスで倒しづらい敵にはそれでを使いなさい。もちろんその度に魔力を込めて、分かった?」


「承知しました」


「あなたダンジョンから石を拾って来たでしょう?出して」


リュックから石を取り出し見せる。


「それは魔石と呼ばれていて魔力を蓄えておく器官よ。色々と使い道があるからまた出てくる時に余裕があれば拾ってきて。それを固体魔力と呼ぶならば」


そう言い巾着から注射器を取り出す。


「これは液体魔力。そしてあなた達魂器専用の回復薬よ。使い方は簡単、来て」


椅子から立ち上がり言われた通りに近づくと継承者は私の服を捲りそれをお腹に刺し中身を注入する。


「その液体を外に出さないように気をつけながら中で循環させると魔力が馴染んで消耗が回復するわ。1本で数値にして大体20回復するから。ここに3本あるわ、また使って。使い過ぎれば体が動かなくなって来るみたいだけど3,4本程度じゃ問題ないから。……今荷物が増えるのは良くないし、あとで渡すことにするわ」


「承知しました」


「それじゃ少しだけ、一緒にダンジョン行くわよ。あなたの成長を見せてちょうだい」


◆◇


貰った短剣は一度返し、いつも通りの装備でダンジョンに侵入する。

継承者は私の後ろにいるのでいつも以上に堅実な、誰かを守る立ち回りをしていると『私のことは居ないものとして扱って、あなたの本気を見せて』と言われたので動きを変えた。


《身体強化》を脚に使い相手との距離を詰め、盾でそのまま体当たり、直後にメイスで殴るとスケルトンは消滅する。

視界を回し周囲の確認をすると最も近い左奥の敵を狙い近づく。

攻撃を盾で受け止め盾の持ち手である左側に回り込み、ゾンビを殴るとそのまま敵の群れの中に入り込み、体を回転させ攻撃する。

盾を投げ、空になった腕を変形させスケルトンに巻きつけ別の敵にぶつけ、そのまま引き寄せメイスで頭蓋を粉砕。

倒しやすいスケルトンから処理しゾンビなど肉が付いて倒しづらいのをじっくりと処理した。


3階層まで潜るとそこで折り返し地上に戻る。

今の私の大体の強さが分かったらしいので次の命令が下された。

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