(4)
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カーテンが引かれた窓の隙間から、夕刻の光が差し込む。
薄暗い室内には数人の男女が屯していた。彼らの周りには、金品の類が積み上げられている。
「ほら、これ見ろよ。どっかの国の王様の冠だとよ」
「ねぇ~、このネックレス、どうかしらぁ~?」
笑いながら頭の上に冠を乗せたり、色っぽい格好としたりとふざける彼らに、窓の近くのソファーに座っていた女性が言う。
「宝石は全部外すんだよ。売り捌くときに足が付かないようにしておきな」
「りょーかい」
「わかってますよ、団長」
彼らは時折笑い声を上げながら、金品を仕分けしていく。
ふと、空気が動き、薄く開いたドアから一人の男が滑り込んだ。大柄でがっしりとした体格の男は、ソファーに座る女性に近づいて告げる。
「団長、Cから連絡がありました。次の標的に、うまく潜り込めたようです」
「そう」
頷き返した女性は、にやりと片頬を上げて笑う。
「……さあ、とっとと片付けて次の準備に取り掛かるよ。また豪快に盗んでやろうじゃないか……新しい『音楽隊』として!」
女性――団長の言葉に、男達は「おお!」と気合の入った声を返したのだった。
《舞台裏話》
ここで場面が転換して、謎の強盗団『音楽隊』の登場です。
原案では、団長は最初は男性でしたが、打合せで女性のキャストにしたいと言われて変更した結果、物語の終盤が大きく変わることになりました。
思えば、この変更が無ければ、舞台のある一つの結末は生まれなかったです。