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(3)

「な……」


 一谷は最初ぽかんとしていたが、相手が幽霊ではなく人間と知れると、すぐに気を取り直した。


「ふん、そうじゃないかと思っていたぞ! 幽霊なんているはずがないものな!」


 すっかり調子を戻した一谷は、木刀を構えて男と対峙する。シーツを剥がされた男は舌打ちして一谷に殴りかかるが、無謀な行為だ。剣道段持ち、警察署内でも猛者と知られる一谷は重々しい一撃で、あっという間に男を倒す。

 それを見た白い影――否、シーツを被って幽霊のふりをしていた者達は、一斉にシーツを取り払った。正体がばれた以上、邪魔なシーツを取り払った方がいいと判断したのだろう。


「くそっ! おい、みんなやっちまえ!」


 怒声とともに、一斉に襲い掛かってくる。

 理人は近くに落ちていた細い枝を拾うと、その中の一人と対峙した。葉の付いたままの枝を構える理人に男は薄ら笑いを浮かべる。


「はっ、そんな棒切れでどうするんだ?」


 揶揄する声に、理人はにこりと笑う。


「エト・ヴ・プレ?」

「はぁ? 何言ってんだ、異人さんよぉ」

「『準備はいいか』って聞いただけ、さ!」


 言葉と同時に枝を突き出す。

 葉の付いた先端は男の喉を捉えた。突然の攻撃に男が仰け反って、無防備になった腹に理人は蹴りを入れる。男は吹き飛んで地面に蹲った。

 まずは一人、と理人は手を払い、後ろにいるカホルを見る。


「カホル君、それに寧々子さん。僕と一谷の後ろにいるようにしてください」

「はい」


 頷くカホルの横で、寧々子も強張った顔で頷いた。

 その間にも、一同の攻防は続いている。

 花村は小柄な身体で、ひょいひょいと身軽に男達の攻撃を避けて逃げていた。余裕の表情の彼は、放っておいても大丈夫そうだ。

 そんな中、一番非力そうだと思われたのか、宇崎に男二人が襲い掛かる。腕を掴まれた宇崎が悲鳴を上げた時、吉永が飛び出した。

 男の手を払って宇崎の腕を離させ、自分の後ろへと庇うように引き寄せる。


「大丈夫かい、宇崎」

「あ、ありがとう……」


 吉永は意外にも腕が立つようで、素早い攻撃で男達を倒していった。

 少し離れた所では、淑乃と伸樹が手慣れた様子で犬をロープで拘束している。後れを取らぬよう、理人と一谷も偽物の幽霊達を取り押さえ、拘束していった。

 ようやく片付いたかと思ったが、屋敷の方から新たに人が現れる。背の高いがっしりとした男と、そしてもう一人は女性だ。

 女性の方が、庭の惨状を見回して怒りの表情を浮かべる。


「……あんたら、人の家に入ってよくも好き勝手してくれたね」

「ここはあなた達の家じゃないだろう? 勝手に使っているのは、あなた達も一緒じゃないのかな。ねえ、――強盗団『音楽隊』の皆さん」

「‼」


 理人の言葉に、男達、そして大柄な男と女性も一瞬動きを止める。同様に、一谷も驚いたように理人の方を見た。


「おい、どういうことだ千崎⁉」

「一谷、ここが幽霊屋敷として有名になったのがいつ頃からか、知っているかい?」

「は?」

「実は、ここ半年の間のことなんだよ」

「だが、確か十年前に強盗殺人があったと……」

「いや、そもそもそんな事件は無かったんだ。屋敷のことを調べたけれど、実際に空き家になったのは六年前。実業家の一家は住んでいたけれど、事業に失敗して屋敷を手放しただけだ」

「近所の方々や屋敷の管理人に聞いて回ったので、間違いありませんよ」


 伸樹が理人の言葉を裏付けるように付け足した。


「そして、白い人影や光る目の化け物が目撃されるようになったのも、半年前からです」

「それは、つまり……」

「この場所を幽霊屋敷にして、人を寄せ付けないようにしたかったのさ。――盗品を隠すための、かっこうの隠れ家として使うためにね」


 理人は女性の方を見る。


「そうだろう? 強盗団『音楽隊』」

「……あんた、何者だい? 警察じゃあないだろう?」

「まあ、探偵のようなものかな」


 探偵代理とは言わずに、理人は女性を見やった。


「さあ、あとはあなた達二人だけだ。こちらには警察の者もいる。大人しく捕まった方が身のためだよ」


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