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8・新発見があった

 山という事もあってもっと雪が積もるのかと思ったが、そうでもなく、農作業が出来ないだけで結構作業が行われている。


 そんなエイデールでは、鉱人と言うだけあって、おおくのドワーフが鉱山へと潜り、様々な鉱物を採掘している。


 その分皆が食うので食料がまるで足りず、冬を迎えた今、より一層の食料買い付けが行われている。


 その食料をせっせと酒造りに回すドワーフと缶詰用に確保しようとする獣人の攻防が起きるのは仕方がない。缶詰自体はまだ生産が軌道に乗っていないので少量でしかないし、冬の今は缶詰に頼らずとも保存食が他にある。


 そんな獣人劣勢の勢力図に一つの革命が起きた。


「オイル?そんなものがこの周辺にあったのか?」


 そう聞きたくなるのも分かると思う。


 食用油が採れる自然の植物がこの周辺にあったならば、それを絞るくらいはドワーフでも出来るはずだ。


 獣人たちが栽培しているという話は聞いていないし、そこまでの余力はない。


「山での炭づくりの最中に発見したらしいのですが、魔木を切り倒して絞っているとの事です」


 ちょっと何言ってるか分からん。


 木から採れるものと言えばサトウカエデから甘いシロップが採取できたはずだと記憶が訴えているが、国で木から採れる甘味の話は聞いたことがない。あれば献上されているのではないだろうか?


 いや、そうか、オイルか。


 普通、オイルというのは実や種から採れるので、実を収穫して絞るのではないだろうか? 


「この食用油は木の幹を絞って得るのです」


 説明のために呼んだナイナがそう言う。


 なんでも、1年で高さ3メートル程度に成長する木で、毎年ボコボコ生えて来るので適切に管理すれば恒久的に搾油が可能なんだと。


「ただ、こちらの国では一般的に搾油されず、あまりに繁殖しすぎているので、炭焼きの傍ら間伐したものを使っています。油分が多いので炭には出来ず薪にも向きません」


 とのことだった。


 ただ、東の山の方に棲んでいる筈なのに、そこで食用油が生産されているなら、広まっても良さそうなものだが?


「私は山脈の東側で育ちました。山の東では普通に搾油されており、収入の大半も食用油を売った収益でした」


 と、初耳の話をしだす。


「ナイナは東方から連れて来られたのか?」


 そう言う事になるだろう。


 当方で身売りや奴隷狩りが行われたという事になる。


「いえ、獣人地域に避難してきましたが、生活苦から身売りする事になりました」


 という。


 詳しく聞いてみると、東方の国はさらに東方、海だか湖の向こうから攻めて来た連中に追い立てられて国へやって来たらしい。


 俺はそんな話は聞かされていない。


 外交的なモノだから、国の中でも一部しか知らない出来事だったりするのだろうか。


 それについては俺がどうこう出来る話ではないので今は置いておこう。


 そんな便利な木があるならば使わない手はない。


「ただ、問題がありまして、東方の魔木に比べて食用油の収量が少ないのです」


 という。まあ、同じ樹木であっても生育環境で変わってくることもあるんだろう。


「いえ、あくまで可食油が少ないだけで、食用に適さないモノが多いんです」


 というのでは、少々困った事ではある。


 まず、その油を見てみたいと、ナイナに案内させて搾油を行っている所へ向かった。


「もしかして、あの黒い液体が油なのか?」


 そう聞きたくなる。


 確かに、前世記憶にあるサトウキビを絞るかのようにその魔木を絞って樹液を採取しているのだが、見るからに黒い。とてもではないが、食用にしてよいとは思えない。


「搾りたては黒いものが出ます。アレは魔力が混ざっているからと言われていて、数日経てばそこに沈殿してしまいます。ただ、ここで搾ったものに関しては、半分近くが黒いままなんです」


 との事だった。


 主に沈殿させて上澄みを取ることで食用にするという。しかし、ろ過という手段もあって、専用の触媒だか金網のようなものを通すことで魔力を取り除けるのだというが、その方法でもすぐに目詰まりしてしまうんだとか。


「量が東方より少なくなるのは仕方がない。ところで、その油というのはどれ程有用なんだ?」


 ナイナに聞いてみると、保存食としてオイル漬けが可能だという。缶詰で行えば1年と言わずさらに長期間保存出来るのではないかとの事だが、今、保存期間が分からないので試しで半年から一年様子を見ると言ってるだけだ。


 が、オイル漬けが可能であれば、肉や魚を缶詰にしておくのに便利か?


 さて、ではなぜ今まで利用されていなかったのだろうか?


「あの廃液、どうする気だ?」


 そう、大量にたまった黒い方の廃液をどうするかが問題だ。


「オイルなので、焚き付けや鍛冶で使えるのではないかと思うのですが、なぜか鉱人の人たちは使おうとしません。我々もあそこまで量は不要なので困っているんです」


 なんでも、捨てると言って穴を掘って捨てる訳にもいかないという。


 できないのではなく、勝手に発火してしまう事があるらしく、小分けにしないと危ないとか。


 そこでふと思った。


 そして、ウリカに黒い廃油について聞いてみた。


「あぁ?あれかい。あんな危ない油、使えやしないよ。ちょろちょろ燃えるなら良いが、少量で一気に燃えるんだ。炉や冷ましで使おうとしたら、下手したら工房が吹き飛ぶよ」


 と、何とも恐ろしい事を言う。


 それで確信した。


 アレは前世記憶にある火薬と言う奴に近い性質に違いない。もちろん、科学文明のソレとは色々違って、魔法に類する性質の火薬何だろうが。




 

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― 新着の感想 ―
[一言] 長期間の保存が出来て硝子の瓶ではないから割れにくいし馬車とか馬に乗せて移動しても壊れにくいから軍隊の糧食としても便利ですな。 続きを楽しみにしておりますよ。
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