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50/50

50・言葉ってめんどくさい

 リベンジはもはや何か言う必要もない様な蹂躙と殺戮の嵐が吹き荒れただけに終わった。特に語る必要もないだろう。


 ドワーフが作り出した50ミリ砲は、前作である30ミリ砲ですら地球における英国の6ポンド戦車砲やボフォース57ミリ砲程度の威力は持っていたはずだ。それのさらに上を行く威力だったので、例のキメラ亀の甲羅を簡単に撃ち抜いてしまった。

 あの被弾経始に優れた丸っこい甲羅を全く意に介さないその貫通力は圧巻だ。アハトアハトだとか17ポンド砲レベルだろうと思われたが、なんとも凄いものを作り出してしまったんだな。


 ただ、懸念したとおりにケッテンクラートな車体では砲の反動を抑え込むことが出来ず、補助脚の装備まで必要になってしまった。


「さすがだな、領主」


 そう言って来るドワーフと共に、早速丘を掘って鉱物を採掘し、その場で精製を行っていく。精錬プラントを必要としない錬金魔法の凄さではあるが、魔法であるがために個人差が激しく、今回連れて来たドワーフ達の中で精製能力はウリカ以外で俺に追随可能な奴がいない。


「しかも、オリハルコンが多いってのは好都合じゃねぇか!」


 精製された鉱物の多くがオリハルコンである。ここではミスリルはあまり採れないらしい。次に多いのは鉄。ミスリルは多少は混ざっている程度。


 そんな精製した鉱物を使ってさっそく何か作るドワーフ達。


「領主!もっと必要だ」


 などと、更なる要求をして来るが、そんなに使いたければ自分で精製したらどうだ?お前ら精製効率悪いから鍛冶に回されてんだろう? 


 だが、コイツラがそんな事を気にするはずもない。


 そして、そんなことを三日も続けていると、早くも3台ほどのブルーコが出来上がっていた。


 それはキメラ亀をモデルに、脚を履帯へと変更したような、そして、尻尾の代わりに50ミリ砲を突き出した形をしている。


「だれがSタンクなんか作れと・・・」


 それは見事にSタンクであった。


「何だ?気に入ったか?」


 などと言って来るが、そうじゃない。どうしてSタンクになったんだろうか。


「そりゃあ、同じ搭載方法にしたからだ。これが一番乗せやすい方法だった。タービン側に向けた方がバランス良いじゃねぇか」


 まあ、そうなんだが、ん?って事はフロントエンジン車か?コレ。


「トラクターと同じ構造なんだから当たり前だろ」


 うん、いや、それマジSタンクだから。


 しかも、使えるものがオリハルコンという事もあって、車体は全てオリハルコンである。


「エイデールじゃ作れないオリハルコン製のブルーコ。良いだろぉ?」


 地球でいう所のチタン製戦車といった感じになるだろうか。とてもではないが、あまりに高価すぎて普通は造りはしないレベルだ。しかし、ここでは容易に作れてしまうんだから仕方がない。車体の大半がオリハルコンとあって、軽量高剛性に出来上がっている。

 もちろんだが、ケッテンクラートな小型ブルーコでは敵の矢が何処からでも飛んでくる状況に苦労したので、全周装甲である。


「だが、これでは守るには良いが、車体の向きを変えなければ狙えない。船に積んだ砲塔のように可動式にすればより使いやすくならないか?」


 と、常識的な戦車を求めるのが普通ではないだろうか。


「上に付いてんだろ?アレで十分だろ」


 と、機銃塔を指す。まあ、確かに相手は機動性絶無の亀か、機関銃レベルで対応可能な騎兵って事を考えると、これで良いのか?


 しかし、Sタンクかぁ~


 スウェーデンのSタンクも個性の強い車両で、後継として開発していたStrv.2000なんて、140ミリ滑腔砲と40ミリ機関砲を装備する超重量級だった。

 もちろん、そんな戦車をスウェーデンが完成させられるはずもなく、冷戦崩壊とともに開発が中止されている。

 そっちはそっちで実現してほしかった戦車であった。 

 主砲を独自の140ミリから西側標準の120ミリに小型化してコスト削減すれば、40ミリ機関砲を積まないタイプで実現できなかったのかという想いもあったりするのだが、冷戦崩壊でそうした妥協案よりも脅威の消失による軍縮が勝ったという事なんだろうな。

 閑話休題


 それからも数日、鉱石の精製を続け、さらに4台ほどSタンクが製作された。


 これだけあれば盆地の防衛戦力としては十分なので、獣人たちや採掘兼防衛に居残るドワーフを残してフロロフカへと帰途に就いた。


 フロロフカへは50ミリ砲を装備したままのブルーコも含めての凱旋という事もあって、出迎えたナガンが驚きというか呆れというか、何とも言えない表情で出迎えてくれた。


「車に後ろ銃を載せるのは奇抜だと言っています」


 通訳がそう言ってくれるが、まあ、そうだよな。


「これを大型の車に載せて、3番突っ込んだ銃には出来ないのかと言っています」


 何だって?ちょっと何言ってるか分からん。


「3番の狂った車から首を取り外した車だそうです」


 さらに分からん。何だそれは。


「戦える車だそうです」


 ??


 ああ、そうか。3号突撃砲かな?


「すでにそれに近いものは完成している。どちらかというとSタンクだが」


 そう言うと、何やら慌てている。


「そんなに嗜虐的な事をしているのかと言っています」


 ??


 何の話だろうか?


 詳しく聞いてみると、S(嗜虐的)な事だと訳したらしいので、三突の更なる発展形のアレだと詳細な説明をして事なきを得た。


 言葉ってめんどくさい。


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