表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/50

49・きっと応急措置なんだろう

 渓谷を抜けてくる蛮族連中を攻撃しているはずの崖上の連中の攻撃が全くこちらから見える敵に届いていない。


 だが、それは射程が足りずに届いていないという意味ではない。確かにどこかに着弾しているらしいのは分かるんだが、ここからはそれが見えなかった。


「川ね」


 と、ヤンデレが言う。が、ちょうどここからでは川の周辺は緑が深くて視認できない状態になっている。


 渓谷沿いを現れた蛮族に関しては、粗方片付いたたのだが、それでも崖上からの射撃が止んでいない。


「川に何が居るんだ?」


 どうやら、ドワーフ連中も気になりだしたらしい。


 と言っても、川は浸食作用もあってちょっとした断崖なので、このままブルーコで降りて行ける状態ではない。もう少し進むか、それとも戻れば、何とかなるのだが。


「戻るぞ」


 もちろん、こんな所には居たくないので戻りたくてそう言った。


「そうね。この場合、進んでしまうより戻った方が良い」


 と、ヤンデレも同調してくる。


 どうやら、ドワーフも同意であるらしい。


 川を警戒しながら引き返していると、後続部隊は既に滝つぼ周辺の緑の浅い付近に布陣しなおして射撃を始めていた。


 滝つぼ付近はまだちゃんとした川ではないので、灌木や草原状態。そこからなら川を見通すことが出来る。

 そこまで戻って見たのは、亀とワニがキメラ化したような生物だった。


「あれか?アレが蛮族が使役しているという・・・」


 獣人たちが言っていた蛮族の使役する魔物がアレなのだろうか?


「あれです」


 という獣人。


 そうか、アレか・・・・・・



 しかも、タンクデサントならぬ、タートルデサントとでもいうべきか、随分撃ち減らされてはいるが、まだ蛮族がしがみついているらしい。


「もしかして、アイツの殻は抜けないのか?」


 そう、魔物は全く止まる気配無くゆっくり進撃を続けている。着弾のたびに蛮族は減っていくが、魔物は元気に遊泳?している。


 しばらく射撃を続けたものの、全く効き目が見えない。


「撤退だ!戻るぞ」


 埒が明かないのでそう叫んであの裂けめまで退却を指示した。


 どうやらいう事を聞いてくれるらしい。


「コイツが利かないとはスゲェ奴だな」


 などと、そんなことを言うドワーフも居る。まあ、そうだな、どうすんだ?これ・・・・・・



 すんなり撤退したドワーフ軍団の立ち直りはとても早かった。


「そうか、森へ行かなくともあんなのが居るとは面白い!」


 という、斜め上の反応として。


 そして、何を思ったのか、30ミリ砲を解体して鉄塊へと戻してしまった。


 そこから何をするのかと思ったら、より大口径の大砲を作り始めやがった。やる事が早いし、何なら炉も不要な鍛冶魔法というチートによる粘土細工なのだから、そりゃあ、仕事も手間いらずではあるのだが、それにしてもね?


 唖然と見ていると、いくつかの装備品まで流用して、砲架まで作り出してしまった。


 当然だが、頭脳もチートなので、装薬量の計算もパパッと済ませて弾薬も作ってしまう。


「こりゃ、アダマンタイトが足りねぇぞ」


 などと、弾頭材料の不足を口にしてエイデールへと舞い戻る連中まで出た。


 そんな事をしている間も、盆地では散発的な戦闘が続いたのだが、どうやらあの亀、陸上での動きはかなりノロマなため、こちらの獣人たちが持つ空気銃でも戦闘が可能らしい。

 30ミリ砲による支援やブルーコによる機動戦を加味して完全にわが方有利戦闘に終始し、新型砲が完成する頃には完全に連中を盆地から追い出すことに成功した。

 戦力にならない砲制作グループの代わりに戦闘参加もしたが、まあ、何とかなった。


 ただ、亀は水上ではそれなりの速度が出るので、それを追い払うのには苦労したが、とは言っても行動範囲が分かり切っているので、そこから蛮族を侵入させなければどうという事は無かった。


 もう一種、陸上を馬のより大きな、いわば戦象の様な動物も繰り出してきたが、ソイツは30ミリ砲でどうにかなった。


 そんな攻防戦が終った頃に完成した新型砲は、口径が一気に50ミリにまで拡大していた。


 そこまでくると重量の問題もあって取り回しに問題が出る。


「コイツは、ブルーコに載せた方が良いのか?」


 そう思う大きさであったので、早速車載化されることになったが


「なぜ、後ろ向きに乗ってんだ?」


 それは何故か砲口が後ろを向いていた。


「こうしねぇとバランスがな」


 そりゃあ、後ろが重いと問題はあるよな。だからって、後ろ向きに付けてどう運用する気なんだろうか?

 当然だが、現状のケッテンクラートな車体ではこうするほかないのは分かる。きっと応急措置なんだろう。


「これは応急措置だろう?腰を据えてトラクターをベースにした専用車両を作らなければ、簡単には使いこなせないだろう」


 と、それを見て意見したら、驚いている。


「そうなのか?これでも使えると思ったが、確かにそうだな!トラクター規模の車体ならもっと作りやすいぜ!」


 いや、頭が良いのか悪いのか、それとも、紙一重なのだろうか?


 そんな心配になる事もいくつか発生はしたが、これで盆地占領の下準備は整いそうではある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ