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48・大してどうとも思ってなさそうだ

 偵察と違ってその速度はゆっくりとしたものだ


 というか、アイツら、なぜこの事を言わなかった?


 パン、パン、パン


 右腕に半ば巻き付けたショットガンで兎サイズの魔物を撃つ。


 ショートバレルショットガンにアームブレースを装備して使用するのは、本来個人防護用なんだが。


 こんなの出も使わなければ、ケッテンクラートな乗り物に魔物が飛び込んできてしまう。隣で喜々として槍を振るうのは、まあ、いつもの事だが。


「チコもやるわね」


 お前ほどは余裕がないよと口にする事すらできない。そんな余裕すらない。


 まあ、ショットガンを開発していて良かったとこれほど思った事もないが。


 当初は廃液装薬式の猟銃開発から始まったのだが、獣人に持たせる猟銃ですら威力過大、反動過大なシロモノだった。

 そうなると射程も長くなるので、農地警備用には不向きなシロモノになってしまったので、槍の扱いがチートなドワーフ連中と行動を共にしない農作業で危険な事が予測されていた。


 そのままではいけないという事で、ショットガン開発と相成ったのだが、一般的なショットガンでは、担いで他の作業をするのは当然ながら支障が出る。

 そこで、銃身を切り詰めたモノを製作したのだが、それでもまだデカいので、銃床も取り払った。


 が、そこで問題となったのが、いくら反動軽減したと言っても、あのデカブツと比較してという話でしかない。制御するのに熊獣人などの大柄種族を宛がわないと無理というのでは意味がなかった。


 だって、作業が大雑把になる連中と細かな作業が好きな連中を混ぜると摩擦しか起きんから。


 そこで、ひ弱なウサギ耳獣人でも扱えるようにと、アームブレースを装備して装薬量も調整した新型を開発した訳だ。


 このアームブレースという部品は、米国でバイデン政権になって規制された、いわゆる「脱法ストック」と言われる商品だった。

 ストックとは、片付けして銃を固定する道具だが、これがある銃には高額の登録料が発生する。それを逃れるために、「これ、ピストルなんすよ」という体歳で、銃床なしの短銃身ライフルやショットガンが売り出されたが、まあ、当然ながら、そうなれば、自衛火器としては威力が高すぎるとして規制されることになった。


 そこからの逃げ道として、「純粋なハンドガンではない」という、ハンドガン規程を逃れ、「純粋な銃床ではない」という、ライフルやショットガンの規定すら逃れるための、アームブレースという脱法商品が登場してきたわけだ。


 とはいえ、規制が入ったその時には、すでに新たな脱法銃器が流通しているというイタチゴッコになっているから、どこまで実効性があるかは分からんがね。


 現在では、レールシステムと言ってスコープやグリップなどをワンタッチで着脱可能な構造になっていて、当然ながら、銃床もそのレールシステム化した銃器が販売されている。

 さて、そのレールシステムを採用した「ハンドガン」を発売したらどうなるだろうか?


 ね?


 そう言う事さ。レールシステムを規制したところで、更なるアイデアで砲を潜り抜けるのが、需要のある民間商品という事になるだろう。


 日本じゃイノシシやシカ、熊の被害がほとんど起きない市街地住民の声ばかりがデカくて、実際の被害地域がその声に押されて被害を押し付けられるという状況に甘んじてるわけだけど、その安全な市街地へと食糧を供給してんの誰なんだろうね?


 米国を銃社会だと散々に言うけれど、問題は銃ではなく、薬局で簡単に買える向精神薬や睡眠薬がゲートウェイドラックの役割をして、薬物汚染が広がってるから治安が悪いという、本質の問題には絶対触れようとしない。だって、日本でも薬事法を変えて、ネットで簡単に風邪薬や睡眠薬を買いたいという「期待」の声が大きいからね。そんな所で、「実は、薬物汚染による治安悪化が『銃のニーズ』を後押ししてるんですよ」なんて言えないよね。


 閑話休題


 素手でもって魔物を叩き落とすドワーフにとって、この程度は報告すべきことですらなかったというのか?


「虫がうぜぇな、こんなだからあいつら自身が開発しなかったんだな、ったく」


 いや、虫じゃないし、ソレ・・・


 偵察に出なかったドワーフがそんな不満を述べながらも、大してどうとも思ってなさそうだ。


 喜々として槍が振るえて満足なヤンデレも、木にはしていないらしいし、一人張りつめているのは何でなんだ?


 パン パン パン


 また出たよ。


 これじゃ、ここに駐屯しないのも良く分かる。


 そんな時、崖の上から砲声が轟きだした。


「何だ?向こうの連中が動き出したか?」


 そんな事を言いながら、ブルーコの隊列を散開させて行くと、渓谷を抜けて来ようとしている一団が目に入った。


「叩き潰しちまえ!」


 世紀末集団さながらな号令の下、テクニカルブルーコの銃器が火を噴き、一撃で敵兵を何人も消し飛ばしていく。


 まあ、余裕なんだろうとのんびり構えていたが、どうにも様子がおかしい。


 崖上からの射撃が激しくなるのに、全く敵が減らない。


「上の連中は何を撃ってるんだ?」


 ふと、そんな疑問が浮かんできた。


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