46・思い付きでも用意周到な連中だよな
前回同様に、時折魔物が襲って来たり、魔物を吹き飛ばしたりしながらダニフ川を下り、そして支流へと入り、フロロフカへと到着した。
この辺りは周到な準備を思い付きでやってしまうドワーフ連中だけの事はある。帰り際にLSTがビーチング出来そうな河原を選定しており、迷うことなくそこへとLSTを乗り上げさせ、テキパキとブルーコを上陸させていく。
さらに桟橋用資材も荷下ろし、あっという間に橋頭堡が出来上がってしまった。
これ、国内でやれば、どこにでも仮桟橋を築いてしまえる気がする。まあ、そんなモノが許可されるはずもないのだが、こいつ等ならやりそうだ。
橋頭堡さえできてしまえば、あとは持って来た武器類を次々と降ろしていく。
「ようし!丘へ向かうぞ!!」
到着したのが朝だった。夕方ごろにはほぼすべての揚陸が終り、すぐにも出発をしようとする連中。
しかし、すべての物資を一度で運ぶことは出来ていない。もう一往復して運び込まないと現地に到着してもそこから先は動けなのだが?
という疑問を持っていたのだが、こいつらの頭ん中は違ったらしい。
「何言ってんだ?まだ二往復して、来たがった連中を載せてくるだろうな」
などと言い出した。
おい、これが総員じゃなかったか?言ってることがおかしいだろ、コイツラ。
呆れる俺を余所にドワーフ達はさっさとフロロフカへと話を通し、サイガの集落?まで向かう事が決められていた。ここの桟橋施設はそのまま残し、後続が利用できるようにしておくという。
なんとも慌ただしく橋頭堡を出発し、夜通し走ってサイガへと到着した。
「すべての荷物が揃うまでには10日以上かかる。まずは現地を見てみたい」
というウリカの提案で、テーブルマウンテンへと登山が敢行されることになった。
それも、なぜだか銃を携行する連中がいる。
「どうするんだ?それ」
そう聞いてみると、万が一の為らしい。
ちょっとそこまでするドワーフに感心するやら呆れるやらしながら細く切り立った道を進む事半日ほど、ようやく山頂に到着した。
そこは平原となっており、草や灌木が生えているだけの見晴らしが良い場所だったが、北へ進んで行くとそこは切り立った断崖である。
「へぇ~、登って来たあっちがまだマシね。ここを武器を持って登るのは無理かも」
と、ヤンデレですら口にするような断崖である。これのおかげで蛮族がこちらへと侵攻する事が出来ないのだから、これは何とも有益な防壁である。
「で、あの向かいの丘に目当ての鉱物がうなってるんだな」
と、別の事を気にしているドワーフ達。
ここから見渡す限り同じような細い草原が続く光景だが、前方には抜け落ちたのか、そもそもそう言う地形であったのか、周囲数キロといった盆地が存在している。
その南側は狭い回廊であり、北側は丘がなだらかに続く形をしていて、侵入は容易そうに見える。
「かなりなだらかな丘の形状だが、軍勢が通るのはあそこしかない」
といって、幅はどのくらいだろうか、ちょうど崖から流れ落ちる滝から続いた川に沿って切通しになっている部分を指してそう説明するドワーフ。
「川があるなら船で攻め込んで来るんじゃないのか?」
と、俺などは思うのだが、そんな事もないらしい
「それは無理ね。川が浅くて船で通るのは無理。かと言って、所々に深みがあるから歩いて渡るにも制約がある」
といって、見える範囲の川を観察していたヤンデレが言う。
「あの感じだと、丘を抜けた後もしばらく同じような状態でしょうから、魔物を並べて押し通ろうにも限度があるんでしょうね」
それがこの丘や目の前の盆地が蛮族に支配されていない理由であるらしい。
この丘自体が防塁の役割を果たし、東の方まで防備拠点が点々と設けられているというのだから、何とも凄い話だ。
今日はこの丘の上での宿泊である。
食料も持参しており、フロロフカ料理ではなく、持ち込んだ缶詰を食べた。
ここの獣人たちには食べなれないモノであろうから大丈夫かと思ったが、あのハゲ散らかした魔物の缶詰は大好評であった。
「これはおしいいと言っています」
という、獣人の通訳を聞くまでもなく、その表情がすでに物語っている。
「これだったら魔木油の対価として十分な量が渡せると思うぞ」
と伝えてもらうと、彼らも大喜びである。
ハゲ散らかした魔物の乱獲がさらに進みそうだな。どれだけ居るんだろう、アレ。
ただ、トウモロコシを持ち帰ってさっそくいくつかのレシピが完成しており、今回はこちらの獣人への試食や品評をしてもらうために持参しているものもある。
その中には、コーンスープの一種もあり、それは彼らにも大好評だった。
コーンスープ自体はこちらにもすでにあるが、引き割りで粥状にしたモノで、カラフルな粒が原材料という事もあって、色はちょっとアレだ。どこの米国製食品ですか?といったグロい見た目なんだが、味は申し分ない。
コレジャナイ日本風料理ばかりを食べている訳ではなく、こうした原色そのままを食べる事が田舎では普通であるらしく、フロロフカやサイガのような「都会」以外だと、見慣れた彩であるらしい。
違いがあるとすれば、そこに使われている出汁がどの様な魔物かということくらいか。




