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45・本気になったドワーフってヤバい

 適当に落ち着かせようとして発した言葉だった。特に深い意味はない。


 しかし、「準備を整える」という言葉に反応したドワーフ。


 なぜか喜々として俺を引っ張ってフロロフカへと向かう事しばらく。


「ナガン!ナガンは居るか!」


 ついて早々、ナガンを呼ぶ。


 どうしてこうもドワーフと言うのは直情的なんだ?


 ナガンも急に呼ばれて驚いたのだろう。慌てて側付きの者が出てきて案内してくれた。


「どうしたというのだ?こんな夜中に。と言っています」


 そう、不機嫌そうに言っていると伝えられた。


 まあ、この騒ぎに喜々としているヤンデレは放っておこう。


「鉄とミスリルだ。今すぐ用意できねぇか」


 などと、いきなり言い出すドワーフに驚くナガン。


「鉄はともかく、ミスリルは差し出すほど無いと言っています」


 そりゃあそうだろう。エイデールがおかしいだけで、普通はそうポンポンとミスリルなんかありはしない。


「エイデールと一緒にしない方が良い。それに、ここでブルーコを新たに作ると言っても人手が足りない。そもそも、盆地を得たとしても、獣人たちでは後の面倒が見れない可能性もあるぞ?」


 そう、勢い込んでここでケッテンクラートな乗り物を量産しても、使い道に困るだけだ。


 第一、まだまだ耐久性や整備性にも難がある。不整地走破性があるから粗製乱造して良いとはならない。

 

「じゃあ、どうすんだ?ブルーコなんて持ってこれねぇぞ」


 そう、まずは例の30ミリ砲を陸上で牽引するためのブルーコが無ければ話が始まらない。


 そのためには、1台当たり2トン近いブルーコをこのフロロフカまで数台搬入が必要だ。


 かといって、川船にはそんな重量物を吊り上げるクレーンもない。もし乗せることが出来ても、フロロフカにはソレを降ろせる波止場もない。 


 それが分かっているから、ここで作るという発想に至ったのだろう。


「鉄の船が作れるんだ。自走で乗り降りできる船を作れば良いじゃないか」


 そう、これから船を研究開発してれば、まず間違いなく間に合わない。作戦開始を半年以上遅らせることも可能になる。


 それだけ時間があれば、こいつらも頭を冷やすだろう。


 と言っても、RORO船が出来れば使いではあるから開発自体は損にならないし、一隻何鳥だろう?


 などと皮算用していた。


 ビーチング可能な上陸舟艇型であれば専用の港も必要ない。しかも、ウォーターポンプまで開発してる連中だ。推進器破損の危険も少ない。


「そいつは便利そうだぜ」


 ま、これで気が変わってくれればいう事はないな。




 が、見積もりが激甘すぎた。


「で、領主!こういう構造ならどうだ?」


 などと、時間感覚を忘れてア~でもないコーでもないと言い出し始めた。寝てイイ?


 しばらくドワーフ連中の好きなようにさせていた。


 寝落ちしそうになると起こされてあれこれ聞かれる。


 そして、気が付くと空が白みだした頃、俺は嫌気がさして平底浅喫水、ランプ構造という、上陸用舟艇の基本的な構造をスルッとマルッと教えて眠りについた。


 目が覚めるとそこは船の上だった。


 本当にドワーフの行動力と言うのは驚かされる。というか、例のマスという鍛冶師が要らんことを教えた結果だが。


 喜々としてエイデールに帰還した連中を中心に、上陸用舟艇の建造を始めてしまった。


 川船なので、そもそも喫水は浅い。波の影響もそうそうないので甲板も低い。と言う事で、あれよあれよという間に出来上がってしまう。


 どうしてこうなった?


 ひと月ほどすると、30ミリ砲も車輪を付けて牽引可能に仕上げているし、船も最優先で3隻建造され、小型ブルーコを6台、30ミリ砲4門を載せてさっそく出発すると言い出した。


「気をつけてな」


 執務室で他人事のように書類整理の手を止めてそう言うと、不思議そうな顔をする。


「どうした?」


 不思議なのは俺の方だが? 


「何言ってんだ。領主!行くんだよ」


 はい?


 知らないところで俺の参加も決まっていた。そして、有無を言わさず船に連れていかれる俺。


「旦那様。私はこちらに残ります」


 というモア。どうしたのだろう?


「モアが先なんてずるい」


 と、ふてくされているヤンデレ。何があったんだ?


「それは帰ってから。ほら、行く」


 そう言ってヤンデレに乗船を促された。よく分からないが、留守番は必要だろう。数日で戻って来る訳ではないのだから。


 それにしても、目的を見つけたドワーフと言うのは怖いな。


 今回は酒ではなく資源な訳で、都への侵攻とはどうも意気込みが違うらしい。あの時はホーカンが中心だったが、今回はウリカやクジマと言った、ガチの鍛冶師が率先して参加している。それだけ例の断崖にあるという鉱脈が有望って事なんだろうか。


 航路が航路だけあって、上陸用舟艇をイメージしていたのだが、建造されたそれは屋根が存在するところを見ると、LSTと言った方が良くないか?そんな本格的な輸送艦なんか作ってどうしたいんだろうか、こいつら。


「あんな天蓋まで付けた船を作ってどうする気だ?」


 そう聞いてみた。


「あれか?アレがあればどこへでもブルーコを持っていけるじゃねぇか。一々めんどくさい通行税払う必要もねぇ。船なら、一隻いくらだろ?」


 などと言っているが、忘れてんじゃないのか?船で兵員の輸送や人員の大量輸送なんか認められていない。が、そんなことは関係ないらしい。


「そりゃあ、領主の国の話しだろ?」


 ドワーフ達も一応、その国の住民だという事を理解してるんだろうか。きっと理解していない気がする。こいつら・・・・・・




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