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44・とんでもないことになってしまった

 少々気落ちしながらサイガの集落へと入った。


 ここにも鍛冶師、当然、魔法鍛冶師が居るんだろうと訪ねてみると、会う事が出来た。


「メイズの収穫機に興味があるのかと言っています」


 通訳を介して例の収穫機について聞いてみると、逆に聞かれてしまった。


 なので、エイデールにおいて様々な農具を製作している事を伝えると、興味津々である。


「裏返る犂に興味があるそうです」


 どうやら、ここにはターンレストプラウは存在しないらしい。


 日本においては双用すきという、ターンレストの一種が存在するが、やはりロータリーがメインであり、犂を見る機会と言うのは少ないので、双用すきとなると更に見る機会は減る。


 双用すきにはテーラーや15馬力程度の小型トラクター用の一連すきと、20馬力級のトラクター用の二連すきが存在する。


 一連すきは板をレバーで左右に返すだけだが、二連スキははなかなか凝った機構を備えている。


 同程度の二連や三連のリバーシブルプラウが外国に存在するが、それよりも凝った作りで、それでいて場所はとらないのではないだろうか。

 

 まあ、それは良いとして、リバーシブルの原型と言える、板を二枚組み合わせたリバーシブルプラウの模型をチョチョイっと作って、その鍛冶師に見せる。


「なかなか興味深いそうです」


 もちろん、簡単な模型なので、実用品とは少々異なる事を説明してみる。


「その様な犂も作ってみるそうです」


 と言う事なので、あの収穫機についてさらに詳しく聞いてみた。教えたんだから、教えてもらわないと。


「アレは、サイガに居るマスという鍛冶師が完成させたそうです。アイデアはナガンが考えたそうですが、長い時間をかけて、モスに任せたそうです」


 なんか、もっと詳しく細かい話をしているように見えるが、通訳を行う獣人は細かい事までは訳せないらしく、専門的な話が出来ない。 とはいえ、さすがに仕方がないので、とやかくは言わない。


 一通り話を終えるとすでに夕食の準備が出来たようである。


 ここは魔の森から距離があるので新鮮な肉などは無く、干し肉や燻製が運ばれてくるらしく、それを使って作られたスープと、トルティーヤみたいなクレープ状の生地に置かれた燻製を焼いて細切れにしたものや香草、煮豆らしい粒が見えるタコスの様な食べ物。


 元がどうだったかは分からあいが、ナガンがこの地に合わせた風習として根付かせたであろう、神事で使う様な高杯や三方の様なモノの上にスープの椀やタコスの様なモノが置かれて出て来た。


 小分けにしたり、その道具であったり。なるほど、ナガンが日本人だという事を、フロロフカを離れてさえ感じてしまう。


 翌日はすぐにフロロフカへ帰らず、マスという鍛冶師に会う事にした。


 例の収穫機を作った御仁がどのような人物か一度話して見たかったからだ。


 訪れた鍛冶場は、やはり魔法鍛冶らしく最低限の炉しかない。この辺り、ドワーフに通じるものがある。ついて来た連中もそれは思ったようだ。


 例の収穫機について聞いてみると、やはりもぎ取る機構が、ナガンが言うほど簡単には作り出せずに何年もかけてようやく完成品にたどり着いたという。


 そりゃあそうか。足踏み式脱穀機や唐箕の様に普遍的なモノであればまだしも、コーン収穫機なんてそうそうお目に書かれるモノでもない。

 だからと言って、コーンヘッダを再現するとなると、そちらの方が難しいかもしれないくらいだ。


 そんな、色々参考になる話を聞いている途中で、ドワーフが身を乗り出してきた。


「なんだと?あの断崖で希少金属が採れるのか!」


 そう、可動部の軸を摩耗から守るために様々な工夫をしたらしいが、その為にあの崖から様々な資源を採掘しているらしい。


 鉄やミスリル、アダマンタイト当たりなら一般的だが、さらに鉄やミスリルに少量混ぜるための希少金属まで採れるという。


 もちろん、エイデールの鉱山でもいろいろな鉱物が産出しているらしいが、ここは一風変わったものが採れるという。


 それらを用いた合金が多数生み出されている事を知ったドワーフが目の色を変えた。


 ただ、ドワーフの使う専門用語を獣人は訳せない。


 マスが使う専門用語も訳せない。


 いつのまにやら通訳を介さず現物を前にして、言葉の壁を乗り越えた議論が展開されるようになっていた。

 もう、ここまで来るとついて行けない。


 結局、連中の議論はなかなか終わらず、さらには、実際の鉱石が見たいだとか、どう精製するかやってみたいなどと言い出し、再度、崖まで向かう事になった。


 そして、アアダコウダとマスををはじめ、幾人かの鍛冶師を交えてドワーフが騒いでいるうちに、日が傾いてきてしまった。


「どうやら今日も、サイガでの宿泊らしいな」


 結局、取り残された俺と通訳の獣人がその様な話をしている。


 そして、その夜、ドワーフがキラキラした目で俺を見て来た。なんだ?何があるんだ?


「おい、領主。この回廊の先へ行けば、もっと有望な鉱脈があるらしいぞ。今までのミスリルなんて目じゃねぇとんでもねぇ伝説級のシロモノが作れそうだ!」


 などと言い出した。


 だからどうしろと?


「暇なうちにちょっくらその盆地とやらを頂いちまおうぜ」


 というドワーフ。さらに夜だというのにフロロフカまで帰ろうとしだす。いや、下手をしたらエイデールまで帰って戦力を募る気だコイツは。


「まあ、待て。万全の準備をしてからだ」


 アカン。ナガンの要請だけなら何とかなったが、こいつらがその気になったら止まらない。どうしよう。コレ・・・・・・

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