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41・それは相当デカかった

 桟橋から陸へと上がるとヒトの姿が見えるが、皆が皆獣人であるらしく、耳が特徴的で角がある。角?


 言葉が全く違うので何言ってるか分からないその獣人の事を、連れて来た獣人に聞いてみた。


「彼は牛の獣人です。この地域で一番生活しているのが牛の獣人と言っています」


 そうなのか。牛が多いのか。


 それはまた安直だなと思う。だって、居なかったはずだからな、アレの発祥の地には。


 そんな事を思いながら、出迎えに来た集団と通訳を通じて話をしたのち、集落がある方へと向かっていく。


 すでに冬なので、お目当ての作物が栽培されている姿を見ることはできない。


 この辺りもやはり魔物が出るという事で、あまり人は出歩いていない。


 集落にほど近い場所になると人の往来も多くなってきた。誰かブツを持っていないか?


 と、周りを見ていると見付けた。と思ったら、なぜか顔が前方を向く。


「痛いじゃないか。何のつもりだ?シモネッタ」


 そう、ヤンデレが強制的に前を向かせたんだ。


「前を見て歩きなさい」


 何言ってんだコイツ。


 だが、動かせない。


「モア、コイツは何をやっているんだ?」


 聞いても教えてくれそうにないヤンデレではなく、モアに聞いてみた。


「どうやら、女性を見せたくないらしいです」


 はぁ?


 全く意味が分からない。


 これまで全くそんなことなかったじゃないか。いきなりどうしたって言うんだろうか。


 あ、前方に女性。強制的に人のいない左を向かせられた。


「何だというんだ。これでは歩けないじゃないか」


「チコは見てはいけない」


 と、訳の分からない回答しか返ってこない。


「モア、何とかしてくれ」


 助けを求めると、なぜか間があった。


「・・・シモネッタ。彼女たちも厚着をしているから大丈夫ですよ」


 という。何じゃそれ。


「それでも、チコの目には毒でしょ」


 などと反論しているヤンデレ。


 その言葉で何の事かは予想が付いたが、何やってんだ、コイツは。そもそも、俺にとって毒なのはお前自身だろ。


 とはさすがに言えない。


「シモネッタを見慣れていれば、変な気は起こさないと思いますよ?」


 おい、そこ。それは違う。どんな理屈だ、それ。


「ねえ、私とアレ、どっちが良い?」


 と、強制的に先ほどの女性の方へと顔を向けられた。


 そこに居たのは、長身なうえに厚着でもわかるデッカイ物をお持ちの様だ。まあ、正直、ヤンデレを見慣れてれば、今更驚くほどのモノでは無かった。


「比べる意味が分からん」


 呆れたようにそう言うと、ようやく解放された。


「そう?やはり、私が良いのね」


 などと言い出すヤンデレ。残念過ぎるだろコイツ。


 その後、気を取り直してその女性が持っているブツについて聞いてみた。


「アレはメイズという、この地域で栽培されている食べ物だそうです。我々が麦やソバを食べる様に、メイズが主食だと言っています」


 と、通訳してくれた獣人。


 やはりそうだった。


 だが、持っているのはどう見ても俺の知るトウモロコシではない。色がカラフルなのは中南米産のフリントコーンでよくある事なので良しとしよう。


 だが、それがフリントコーンであるというならば、石灰水やかん水などのアルカリ溶液で煮炊きして皮を柔らかくしないと食用にならないはずだ。


 獣人にその事を着てもらったが、獣人が伝えた段階で驚いている。


「なぜ知っているのか聞いています」


 と返された。


「王家に伝わる書物で読んだことがある。東方も昔、我が国の領土であったらしいからな」


 などと完全な嘘をついたが、まあ、分かりはしないだろう。どうやら相手はその答えで納得してくれたらしい。


 そして、ニシュタマリゼーションに用いるのが、丘から流れ出ている天然の水だという。


 ただ、どこから出ているものでも良い訳ではなく、特定の水を使わないといけないというので、きっと鍾乳洞か岩塩層から流れ出てくる石灰水か高濃度塩水なんだと思われる。


 収穫したまま乾燥すれば長期保存が出来るそうなので、このようにカラフルな現物が拝めるわけだ。


 などと話をしていたら、先ほどの男性とドワーフ達が舞い戻って来た。


「何やってんだ?」


 というドワーフに、例のブツについて話をしていたと告げる。


「ああ、アレか。ここでしか作っていないらしい珍しい食いモンだからな。それより、ここのカシラに会いに行くぞ」


 と、スルー気味に返されてしまう。そんなに興味ないもんなのか?


 そりゃあ、ドワーフに食い物の話をしても無理だとは思うが。酒の話しなら食いつくだろうが、作るものの大半は蒸留酒だから、まあ、話しについて行けない。


 ドワーフについていくと、そう周囲と変わらない建物に案内された。


「この方が長老です」




 そう通訳されて面会した相手は、年老いた牛獣人だが、まだ元気そうではある。


 挨拶と自己紹介をすると、通訳が彼の事も伝えてくれる。


「彼の名前はナガンです。50年くらい前からここに集落を築いて生活をしているそうですが、川下から来訪者が来るのは初めてで、しかも、似たようなものを持っているのには驚いたと言っています」


 そう言って、後ろ壁に飾られた装飾品を指す。そこには様々な装飾に混ざって、あってはならないものを見つけてしまった。


「後ろの品に興味があるのかと聞いています」


 視線を追ったのだろう。そう通訳されて、「ある」と答えると、見ていた装飾品をひとつ取ってくれた。


 手渡されたそれは、前世見た銃そのものと言って良い。もちろん、子細に見れば疑問点はあるが。


「スゲェだろ。ここのカシラも錬金魔法が使えるんだぜ」


 と、なぜか我が事のように喜ぶドワーフが居る。


 そんなドワーフが更に爆弾を投げつける。


「コイツは俺らみたいに爆発を利用していない。空気だぜ空気」


 そんな事を言う。コレ、空気銃なんか?


  



ここのところ迷走していたんだ。


再度の空気銃登場に、適当シリーズを思い出した人が居るかもしれない。


実は、「貴族に転生したらしいので適当に生きてみることにした」をもう少しボリュームのある話にリメイクできないかとアレコレやっていて、どうにもならずに諦めた結果、そこで出来上がった設定の一部をブッコむことにした。

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