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40・東方へ向かってみた

 交渉がまとまり、搾り機を提供して専属での搾油が始まった。


 そんな冬の最中、ドワーフ連中が見慣れない食べ物をもってあらわれた。


「何だ?そのリゾットは」


 それは麦やソバの色とは違う粥状?のモノだった。


「おう、これか?」


 そう言って説明されたところによると、どうやら東方で採れる作物の粉で作った食べ物であるらしい。


 少し食べてみたが、ん?何故だか知っているような味がする。


「これのもとはどんな作物だ?」


 予想が正しければ、アレなのだが。


「実ってるのは見て無いんだが、不思議な色合いの粒だったぞ。ソイツを引き潰して粉にしたのモノを蒸したのがコレだ」


 という、より訳の分からない話をして来る。何を言っているんだ?訳が分からない。


 ドワーフに来ても埒が明かないので、ナイナを呼んで東方の作物について聞いてみたが、彼女は丘陵地帯の北部出身なので、南部の作物まではよく分からないという。


 どうやら北部では麦やソバを栽培しているのが普通だったらしいが、南部では丘陵地帯から吹き降ろす風の影響で季節によっては雨量が著しく少なく、夏の気温が低い事もあるので、独自の作物栽培が行われていたという。


 ただ、北部は穀倉地帯と言う事もあって、わざわざ交通の便が悪い南部との交流も少なく、それがどんな作物なのかまでは知らないらしい。


 謎は深まるばかりだ。


 ナイナが知らない作物。そして、味から想像される作物は、予想が正しければアレなのだが、しかし、前世と同じものとは限らない可能性があるので、実物が見たい。


「冬だから暇だろ?」


 というドワーフの甘い言葉に誘われ、フラフラと東方へと向かう事になった。


「旦那様が行くのであれば」


 と、モアが付き従う。


「置いてかないで」


 と、ヤンデレまで付いて来ようとしている。


「シモネッタ。なぜ同行しようとしている?」


 確かコイツは魔物狩りに参加して川を南下していたはずだ。目的が他にあるのは間違いない。


 だが、具体的に答えようとせず、「行けばわかる」とはぐらかされた。


 そんな不審な奴も連れだって港へと向かうと、最近竣工したという新造船が出迎えてくれた。


「結局作ったのか」


 そこにあったのは河川砲艦だった。


 30ミリはあろうかという口径の長い砲身が3門見える。


「森を行くから必要だろ?」


 という言い訳をしているが、作りたいから作ったの間違いであることは確実だな。わざわざ問い詰めるだけそんな気がする。


 前世のライフル規模でも相当な威力なのに、30ミリクラスって、4倍の口径がある。どのくらいの威力があるんだろうか?考えない様にしよう。


「しかもすげぇぞ、コイツは。熊や猪が一発で弾け飛ぶ上に、訳の分からん魔物も倒せてるぜ。たまに鞭みたいなのを振るって来る植物に擬態した奴が居るから全体を鉄板やミスリルで覆ってるがな」


 などと、聞いてもいないのに勝手に自慢している。


 そう言えば、輸送船も何だか丈夫な専用の船っぽいな。


「まあ、今じゃそこまで危険な魔物も出ないから安心して良いよ」


 と、ヤンデレが安心させようと言って来るが、そう言う事では無い。ホント、魔の森探索から興味が逸れてくれてよかった。


 今回乗るのは、その河川砲艦である。


 河川砲艦と言うと、揚子江の砲艦が思い浮かぶが、これはそんな迎賓館ではなく、バリバリの戦闘艦。きっと旧ソ連が建造したシュメール級が近いんじゃないのか?


 そんな戦闘艦に乗り込んで川下りを行う。


 支流までの間に二度ほど魔物を射撃したが、何だろう。熊よりデカイであろう魔物をたった数発で頭を吹き飛ばしてしまった。


 いや、ホント、何作ってんだこいつら。


「どうだ。スゲェだろ」


 などと喜んでいる訳だが、こちらは引きつった笑いしか出て来ない。 


 これまでの航海で何度か例のハゲ散らかした魔物をはじめとする水棲魔物にも遭遇しているが、金属製船体なので全くダメージを受けていない。


 さらに、魔の森探索をを行っている時に水棲魔物の体当たりでスクリューが破壊されたことがあったとかで、ポンプジェット化されている。

 従来のガスタービン船が船内外機という形式で、エンジンを船内に、スクリューを駆動する変速機構などを船外に備え、スクリューを可動させることで舵の役割を果たしていたので、開発は簡単であったらしい。


 同様の理由で、東方航路の輸送船もポンプジェットだという。


 そして、川と言うにはかなり広い湖面の様な場所を航行して次の日の昼前には支流へと進路を変えた。


 正直、同じ様な景色ばかりでまったく方角や距離が分からん。


 そのまま航行を続けて夜には現地に着いたらしいが、桟橋に着いたのは翌朝、明るくなってからだった。


 なるほど、たしかにエイデール同様に森が開けている様だ。


 ただ、こちらの方が起伏が多い気はするが。


「このままさらに川を遡上すれば丘陵をこえるのか?」


 素朴な疑問として聞いてみた。


「いや、川はここから細く浅くなる上に、丘ではなく西へと向かい、山に至る様だ」


 と、ドワーフが言っている。船ではもうしばらく遡上すれば浅瀬があって無理になるらしい。


 さて、例の粥っぽいものの原材料は何だろうか。

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