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33・さらに高速化した

 ケッテンクラートモドキは多くのドワーフの興味を惹いた。


 タービンとはまた違った動力機関と言う事でこれまで手を出していなかった他の村のドワーフまで雪の中やって来たほどだ。


 そして、ドワーフ達がエンジン開発のために様々な新たな指標や単位も生み出していた。


 地球とまったく同じかどうかは確かめようがないが、本当に色々と。


「ガスタービンと言う奴は燃焼器側の回転数がおおむね1万から1万5千、出力軸が6千程度になるんだが、こっちの領主が言うレシプロだったか?って奴は間欠噴射にしなきゃならねぇから、そのポンプの関係で回せて2千5百だな。今んところ、それを達成するのもピストンリングの関係で怪しいが」


 と言っているが、この回転数が地球の1分当たりなのかどうかは分からない。まあ、似た時間ではあるらしいんだが。


 そんな説明をされたエンジンについて、ガスタービンは断続的に濃縮魔素が燃焼器に送り込まれるので持続して噴射を続ければ良いのだが、レシプロについては当然ながら、噴射は上死点近辺への噴射のみなので、間欠になる。まあ、ディーゼルみたいなものだな。


 しかも、吸入側へ燃焼が逆流しない様に濃度やタイミングを調整しなければいけないのでかなり大変らしい。

 その為、2千5百回転が制御の限界だという。


 だが、それ以前の問題としてエンジン側の耐久性問題があって実質的には2千回転を限度にしているんだとか。


 そして、ある程度目処のたったガスタービンよりもこれから成熟させていくレシプロに対して、乗り遅れていた他所の村のドワーフがやって来たという訳だ。


 彼らは凄い勢いで理解して独自の研究に取り組んでいる。時には爆発しているらしいが、それはよくある事だ。


 そして、ひと月もする頃には独自の考えを実現したドワーフも現れた。


「どうだ、コレ」


 見た目は前輪がソリになっただけで、それはスノーモービルと言わないか?


「濃縮器を二つにした。一つはこれまで通り動力式だが、もう片方はガスタービンの応用で排気駆動だ。排気駆動で動力を得るのには苦労したぜ」


 と言って来る。


 変な形のスノーモービルがそんなに凄いんだろうか?


「こいつはすげぇぞ、他の連中は馬の一駆け程度の速さだが、コイツはその倍以上出る」


 だいたいこれまでの車両がどれも馬の速足程度だった、そこからだいたい時速15km前後だと理解していた。

 馬車で通しで走るには常足プラスアルファなので10km出ていない程度。それで公爵の城まで行きが4日、帰りが3日だから、これなら休憩を考えても1日の距離かもしれんな。その速度が持続するなら。


 このスノーモービルが時速40kmで日中ずっと走れるならの話だが。


「いけるんじゃねぇか?」


 と言うので村を三つ、一日の内で何周回れるかやらせてみたら、見事に達成して6周していた。たぶん、300kmは走ってんじゃない?これならいけるかも。


 そして、その対価に渡したのは味醂(みりん)の様な酒だった。


 ホーカン達は酒の原料が少なくなったので手当たり次第に試したらしい。


 その中には陸稲に似た穀物も存在し、それが味醂っぽい酒として完成した。


 さらには味噌や醤油っぽいモノを豆を仕込んだモノから創り出していた。


 それらは多くがナイナのもとへと送られて缶詰の調味料になっているのだが、味醂っぽいモノは一部飲用として奪っておいた。


「なんだか飲んだことがない酒だな。たまに飲むには良いか」


 と言って、樽を抱えて帰るドワーフ。


 そのツインチャージャーエンジンを他のドワーフにも教えたらしく、その製作がどんどんひろまり、雪深くもっとも寒くなる頃には40台も完成していた。


 どうすんだよ、そんなに作りまくって・・・・・・ 


 そんな事をしていると船がやって来た。


 そう言えば伯父上の事や捕虜の話がそのままだったなと思い出した。


「お返事をお伺いに参りました」


 と、会って早々によく分からない事を言い出した。


「返事とは?」


 そう返すしかないだろう。


「ショタ公と拘束している人質の解放についての件です」


 と言うが、返事も何も、兄上側が伯父上をこちらへ招き入れるような話をしたのでは無かったか?さすがに何を言っているのか分からない。


 何か知っているのかと公爵や伯父上を見るが、何も知らない様子だ。


「まるで話が見えないが、どういうことだ?そもそも、そちらが人質の交換を拒否したはずだ」


 そう、人質解放の身代金など払わないと言い出したのは兄上側だった。


「それとも、アリピーナが支払いに応じたのか?」


 と、そう言う事態もあり得ると思い聞いてみた。


「いえ、東方辺境は公爵閣下の扇動により、憲兵と対立しております。この状況を解決するには、扇動している殿下や閣下が解決策を提示し、総監へ降伏なさるのが筋かと」


 などと言いだす始末だが、さて、降伏とは何だろうか?


「総監の傘下となって頂き、酒やミスリルの管理もこちらで行う事になります」


 つまり、利益は全て兄上が吸い上げるらしい。


「そうなると、酒麦などはどうなる?」


 兄上が利益を吸い上げる。そうなるとさて、エイデールの穀物はどうなるだろうな。


「もちろん、総監の所有物となりますので、相応の年貢を。酒麦についても、こちらの要求を優先する事になるでしょう」


 まあ、そうなると俺の一存という訳にもいかん。ホーカン達にも話をしないと暴れかねない。


 一度使者には帰ってもらい、しばらくしたらまた来るように言った。


 それからホーカンを呼んでその話をした。


「ほう。自由に売れなくなるんだな」


 と、ホーカンが言うので兄上の専売になるだろうと伝えた。


「分かった。俺だけじゃ無理だ。皆を集める」


 と言うので、早めにと伝える。そして、他の村でも独自の畑があるので各村々にもその話をするように言っておく。


「そうだな!俺たちだけの話しじゃねぇからな!分かった、エイデール全体の話だからな!」


 と、なぜか元気に飛び出して行こうとするホーカン。


「待て、どのくらい日数は掛かる?」


 話し合うんだからすぐとはいかないだろう。


「そうだな。十日もあれば十分だ。そんくらいでまとめておく」


 そうか、十日で結論出るなら早いな。

 

 意気揚々と飛び出していったホーカンを見送った。


 


 

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