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32・あったら使えるかな

 伯父上が来襲してからしばらくすると雪が降り始めた。


 都ほど積もる訳ではないが、峠道が不便になるので往来はほぼなくなってしまう。


 ドワーフの猛者なら気にしない場合もあるが、それは単独での移動や狩りを行う場合であって、交易を目的としたものではない。


 今年は穀物の購入が出来なかったのだが、封鎖以前に買いこんだ奴隷たちの働きもあって開墾が進み、南方辺境領が春まで食いつなぐには十分な食料が確保できている。


 ただ、ホーカン達は無尽蔵に酒を仕込めなくなったのでかなり不満をため込んでいるらしいが、それはさすがに仕方がない。


 俺はと言うと、売りそこなった酒をドワーフ達にばらまくことで農具やトラクター、ガスタービン船が続々完成している。


 ただ、運河を封鎖されたのに船を完成させたところで使い道が無いんだがな。


 船に関しては酒の増産とその販売や缶詰の販売を目的に、運河制限上の最大級を3隻も発注していた。


 そして、それが完成してしまったが、使い出がない。


 トラクターも3倍まで数を増やしたのでドワーフの集落へ1台は配置できるようになった。


「おい、領主。とうとう完成したぞ」


 そして、嬉しいニュースが舞いこんだ。


 ガソリンエンジンの様に動かそうとして失敗したレシプロエンジンだが、魔素濃度を高めれば良いという事で、過給機の要領で動かせるんじゃないかと開発を行っていた。


 だが、そう簡単では無かった。


 一般的な4サイクル方式ではバックファイア現象を起こして吸気口から過給機まで燃焼が逆流してくることもあった。


 あまりにも危険なので中止となり、別の方法を探っていたが、2サイクルで何とか成功した。


 もちろん、クランクケースを通すガソリンエンジン型の2サイクルはダメだった。


 潤滑もダメだし、逆流も起きた。


 過給掃気型を新たに考案して何とか完成にこぎつけたわけだが、どうしてもタービン機関に比べて出力が低い。


「完成はしたんだがな。領主が言っていたみたいな手押し機械を作るのは無理だな」


 そう、想定していたのは耕運機や原付のような乗り物だったが、出来上がったエンジンは2気筒でコンパクトカーに積むほどのサイズがある。しかもミスリルがタービンの羽根くらいにしか使えないのでとんでもなく重い。


 2気筒なのも、通常の燃焼とは違うらしく、単気筒ではうまく回せないらしい。2気筒が最小単位で、2気筒を一組として増やすらしいが、この2気筒エンジンで最小型ガスタービンの3分の1の出力しかない。


 だが、大きさは2倍ある。


 もちろん、タービン機関は吸排気関係が大型なのでユニット容積ではレシプロが勝るが、重量があるので扱いに困る。


 当初目指していた耕運機や原付のようなバイクを作るのは無理になった。


 造れるとすれば小型トラクターや運搬車だろうな。


「手押しは無理だからブルーコに積んでみたが、力がねぇ。よっぽど小さな機械を作るしかねぇぞこりゃあ」


 というドワーフ。


 力が無いので4頭曳きの犂を曳くのにも苦労するだろうという。


 それだと良くて15馬力以下の小型トラクターか?


 実物を見たが、何だろう。みた事もないV型エンジンだった。


「羽根の魔素濃縮で何とか燃焼は出来るんだが、反動でピストンを押し上げるには力がたんねぇ。2気筒にしねぇと低回転が持続しねぇんだよ」


 との事だった。本当に非力なエンジンらしい。


 さて、こうなるとバイクは諦めるしかなく、耕運機も無理。


 では、馬車に付ければ良いではないかと思うのだが、人が乗るだけなら何とかなるが、荷物を載せられるほどの力はない。


 結局、軽量素材のミスリルがエンジンに使えないのがネックだ。


 オリハルコンを使うという手がないでもないが、ミスリルの様に潤沢ではない。まだ鉄の方が潤沢と言えるだろう。


 そんな訳で、オリハルコンは軽量化のために内部部品に使う事は出来てもシリンダーのような大物には使えない。


「良いんじゃねぇーか?小さなブルーコを作って人や軽貨物運べるようにしようぜ」


 と言い出すドワーフ。


 まあ、それで良いのかもしれない。


 そうして作られたのはケッテンクラート風な車両だった。千鳥配置ではないので見た目の印象は大きく違うが、まあ、似たようなもんだ。


「なぜ、車輪を付けたんだ?」


 トラクターでは半装軌から全装軌へと移行したが、中には半装軌にあこがれる者が居たらしい。


「見た目だよ。見た目」


 と言っている。


 まあ、悪くは無いか。


 中央にV型4気筒エンジンを載せ、前方に操縦席、後方には対面式でドワーフ2人、人間なら4人が乗れる座席を設けている。

 一応、小型の犂や馬鍬に対応した連結装置を備えているので小型の牽引車なら曳ける。


 履帯については雪上や泥濘に対応した幅広タイプを用意したのでケッテンクラートと言うか、クローラトラクターと言うか、ちょっとよく分からん。

 しかも車体にはミスリルをふんだんに使うというナニカ違う感情が湧いて来るような状態で、エンジンの重さを車体で相殺している。


 トラクターよりも操作が簡単なので、俺も試運転させてもらったが、速度はそこまで出ない。トラクターと変わりがないが、非力なエンジンで達成できているのだから合格だろう。


「これなら音が小さくて乗っていられるね」


 などと後部座席に乗り込んだヤンデレが言って来る。


「これなら狩りにも使えそうですね。ソリを曳かせて獲物を運べそうです」


 そんな、現実的な案を出すモア。


 ま、これもあったらあったで使えるかな。 

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