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27・図らずも宣戦布告のような事態になった

 ドワーフが生み出したグレネードの威力は予想以上だった。


 手榴弾クラスではなく、軽迫撃砲だな。日本軍に八九式重擲弾筒ってのがあったらしいが、きっとその規模だろう。槍もって固まった集団に数発撃ち込めば止めることが出来そうなレベルだ。


 だが、よくよく考えてみるとそれ以上の事が出来そうだ。


「これはやりようによっては槍兵を狙うのではなく、後方の本陣を狙い撃ちに出来そうだな」


 飛距離は目測で4、500mはありそうだ。放物線を描くので狙いは甘くなるが、半径5mは確実に被弾するので間違いなく本陣を潰せる。


 こうして制作を急いでもらい、その分、酒を渡している。


 ドワーフって酒飲んでも手元が狂わないって凄いよな、ホント。酒が燃料で潤滑油だよ、こいつら。


 そんな事をしているうちに秋ソバの収穫を迎えたが、まだ攻めてくる気配がない。


 そんなころになってようやくアキッレ兄上の使者がやって来た。


「公爵を開放しろと?」


 開放も何も、拘束などしていないのだが、どういうシナリオを考え出したのだろうか。


「殿下が公爵家令嬢と結託して拘束している事は判明しております」


 などと言い出した。


 いや、さっき庭でドワーフ戦士にしごかれてる公爵見ただろ?アンタ。と思いはしたが、口には出さない。


「これは異なことを。公爵は自らの力不足を恥じ入って鉱人との鍛錬にお越しなのだが?」


 と、即興の嘘を言う。いや、半ば事実か。


「しらじらしい事を。シモネッタ嬢がアキッレ殿下に嫁ぐ間際に殿下が策謀した事は判明しておりますぞ」


 と、何か言っている。


「ほう。そのシモネッタは兄上に嫁ぐことを酷く嫌ってここへ逃げ込んできたのだが、一体どの様に話が伝わっているのか?公爵も娘の気持ちを慮ってここに滞在しているぞ?」


 と言うのは口から出まかせだが、ヤンデレが兄上に嫁ぐ気が無いのは確かだ。


「聞けばシモネッタ嬢は『鉱人級』騎士だとのこと。その様な戦力を殿下は何故抱え込んでおられるのか?」


 矛先が変わって来た。


 公表される話ではないが、調べればわかる事。憲兵ならなおさらか。が、戦力を抱えるのは何事かと来たか。


「私が戦力欲しさにシモネッタを唆して公爵を拘束しているというのか?とんだ誤解だ。本人に聞いてみれば良い」


 と言って呼ぼうとしたら止められた。


「その必要はありません。口裏を合わせた人物の証言は証明になりません故」


 と言い出す。


 公爵邸にも調査や捜査に入っているだろうから知っていて当然だ。その上で言っているんだろう。


「ならば、公爵に聞けばどうだ?牢屋に居る訳でもなし、聞きに行って良いのだぞ?」



 そう厭らしそうな顔で言うと、眉を曲げている。


 何だ、当人たちに聞く気が無いのかよ。


「おい領主!ソバ酒が出来たぞ。コイツは会心の出来だ。喉が焼ける様にうめぇ」


 と、ホーカンがやって来た。タイミングが良いのか悪いのか。


「ん?何だお前。ちょうど良い、これを飲んでみろ」


 と、空気を読まずに使者に酒を突き出す。


「何だお前は。そんな得体のしれんものが飲めるか」


 と、返す使者。


「あぁ?俺の酒が飲めねぇだと。それは飲んでから言うんだな」


 と言って、一瞬で使者の顎を鷲掴みして口に酒を流し込む。


 それ、スピリスタ級だよな?


「ゴフ・・ゲホゲホ・・喉が・・・・・・」


「どうだ、焼けるようにうまいだろ。果実の搾り汁で割ると普通に飲めるようになるぞ。これ持ってさっさと酒の販売を再開するように動け」


 ホーカンが持って来た小樽を使者に押し付け、そう言い放った。


 全く。酒狂いは考えることが酒ばったかだ。だが、河川交通が遮断されて都に酒が卸せなくなったのは地味に痛いから、俺もそれには同意見だな。


「だ、誰がこんな危ないモノを飲むんだ。この事はきちっちり報告させていただく!」


 樽を放り出して逃げる様に飛び出していく使者。


「ホーカン。腹に据えかねているだろうが、いきなり飲ますのはやり過ぎだ」


 まあ、まさかこんなタイミングでホーカンが来るとは思わなかったが、無駄な口論を手短に切り上げられたのは感謝だな。


「そうか?美味いんだがな。領主もどうだ?」


 そう言ってコップに注いで渡してくる。


「搾り汁で割ったらうまいんだろう?だったらそうしてくれ」


 スピリスタをそんな並々飲めとか殺す気か?


「メンドクセェことを言うな」


 そう言ってグイっと飲むホーカン。


「くぅ~、喉が焼けてうめぇ!」


 ホント、ドワーフの生態は異常だ。


 その後すぐに本当に果汁割を持ってこられたので口を付けてみたが、うん、無理。結局残りはモアに渡した。

 モアも普通に飲んでおいしそうにしている。怖い。


 図らずも宣戦布告のような事態になったが、自信作を放り捨てられたホーカンは完全に戦闘モードだし、杜氏連中はもはや止められない。


 そうでなくても兄上だってここで手打ちなど考えてはいないだろうから、冬までにはやって来るのかな?


 当然ながら、公爵は今更兄上側に寝返りも不可能だし、ヤンデレは暴れる気満々だ。どうしよう。コレ。

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