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20・1年で成果が出ているってすごくね?

 PTO軸がトラクターに付いたので動力として利用できるようになった。


 ならば、コンバインを作るのもアリだろう。


 そう思ってドワーフ達に更なる機械開発を依頼してみた。


 だが、出来上がった機械は失敗だった。


「動くからそのまま大丈夫だと思ったっす」


 そう耳を畳んで答える犬獣人。


 呑み込みが早くてトラクターの操作も出来るようになったここのオペレーターだ。


 他の2台は別の村へと渡して、更なる開墾に利用している。


 そうすることで他の村のドワーフ達もがトラクターに関する知識を得ることが出来る様になる。


 ボコボコ生える魔木の搾油も規模が拡大しており、ガスタービン動力を利用した機械搾り機を開発した村まであるほどだ。


 どんどん俺の手を離れてドワーフが技術を発展、拡散している。


 だが、鉄砲についてはほとんど普及していない。


 獣や食用の魔物を倒すには威力が高すぎるのが問題視されており、害獣や魔物駆除に使う必要最低限の数があれば良いという事で、例の一人が黙々と生産と開発を担当している。


 最近では20ミリ砲を開発しており、ガスタービン船に積んで魔の森へ探検に行けるんじゃないかなどと言っている始末だ。


 スタンピード起きても困るので止めている。


 さて、話を戻して、犬獣人が恐々と話しているのは脱穀部がぐちゃぐちゃに壊れたコンバインだ。


 何でこんなになるまで気付かなかったのかとも思うが、まさか、ソバの茎や実ごときがそんな威力を持つとは考えもしなかった。


「そうだな。トラクターの力があれば動くよな」


 俺もそう答えるしかないし、ドワーフも考え込んでいる。


「詰まらない構造にするのが一番良いが、詰まれば止まる安全機構があるのが次善だな」


 と、俺もありきたりな事しか言えない。


「つうと、車と同じようにクラッチ着けるか?」


 と、ドワーフに聞かれたが、それは手ではあるが、何か違う気がする。


 何が違うのだろう?


 機械は通常、シャフトや歯車を介して駆動させている。当然、動力を余すことなく伝えるにはそれが良いはずだ。


 そう言えば、コンバインの駆動の多くはベルト駆動では無かっただろうか?


 そうだそうだ。


 記憶にあるコンバインという奴を雨の後に動かして作業をして詰まらせると煙を吹いていた様だ。


 ベルトが目詰まりした回転部の力に負けて滑り出すんだ。


 そうすることで機械が壊れるのをある程度防ぐ事が出来るという事だろうか?


「ベルトで駆動するようにしてみようか」


 そうドワーフに言ったのだが


「ベルト?革の薄い奴か?そりゃあ、魔物の中にはかなり強い革に仕上がるヤツもあるにはあるが、ソイツで良いのか?」


 と言われて考えてしまう。


 確かに良いのかもしれないが、幅をとる平ベルトよりもVベルトの方が良いのではないだろうか?


 なにせ、いま作られているのは自走式ではなく、トラクターで牽引する仕様なので、いやでも大柄になってしまう。

 ここに平ベルトの幅広プーリーなど付けてしまうと、とんでもない事になるのは目に見えている。


 なにせ、一つの出力軸からすべての駆動軸を回すことは難しく、分散しないといけない。


 そうなると、幾重にも組み合わされるプーリーの幅から逆算すれば、Vベルトにしないと帳尻が合わない。


「そうなると、蜘蛛の糸も使って一から開発した方が早いな。革をどうこうして縦で動かすなんて、考え付かねぇや」


 と、ドワーフも半ば匙を投げている。 


 だが、そこはドワーフ。「俺がやってやる」というチャレンジャーが出てくる。


 と言っても、歯車やチェーンと変わらない強度の「蜘蛛の糸」ベルトを作ってドヤ顔されても困るんだよ。そう言うのが欲しいのではない。


 そんな試行錯誤の末に出来上がったのは、俺では不可能な精製を器用にやり遂げた「蜘蛛の糸」製Vベルトだった。


 編んでしまうと強度が高くなりすぎる。


 しかし、そのまま束ねてしても強度が足りなくなる。


 そこを上手く調整してVベルトを完成させてしまった。


 さすがドワーフ。興味を持ったらなんでも創り出してくる。


 その完成したVベルト構造で新たなコンバインに合う長さのベルトを製作してもらい、動かしてみる。


「く、蜘蛛の糸を切ってしまったっす」


 と、青い顔をする獣人の懇願に満足げな俺。


 うまくベルトが切れた事で機械自体のダメージは最小限で済んだ。


「これはそういう意図で作っている。これからは如何に詰まらないようにするかを考えれば良い」


 そう言って、新たなベルトを渡す。


 ホッとして取り付けに入る獣人だが、ソレ、当然だが代金徴収するからな?


 それを聞いてどうやれば詰まることなく作業が出来るのかを必死に考える獣人たち。


 結局、朝露時の収穫や未成熟の多いか所のある畑の収穫を避けることで解決した。


 当然だが、一番喜んでいるのはホーカンだ。


「おい、領主。このソバでのどが焼ける様な美味い蒸留酒を作ってやるからな!」


 そんな火気厳禁クラスの危ない酒なんか望んじゃいないんだがな。


 ホーカン達ドワーフ杜氏は各種酒種となる作物の利用法には長けており、麦やソバの精製もお手の物。


 彼らの技術で綺麗に精製された実と、殻や糠。


 殻や糠の類は獣人に渡されて肥料や飼料として利用されていく事になる。


 こうしてエイデールは早くも年貢を国に納めるところまでやって来た。


 と言っても、穀物を納めるのではなく、酒であったり武具であったりが中心となる。


 その酒の種類が多いのだから喜んでもらえる事だろう。


 無能だとこんな辺境へ飛ばした父上へのせめてもの仕返しだ。


 


  

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