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17・収穫の季節なので農機具も考える

 アレコレやっていると麦の収穫が行われていた。


 気が付くと脱穀時期だというのでさっそく脱穀機や唐箕を獣人たちに与えて利用してみた。


「力があるのは分かったから回し過ぎるな。実が飛んでるじゃないか」


 唐箕は力加減を間違うと風量が変わってしまうので選別ではなくすべてを吹き飛ばしてしまう。


 ちゃんと一定の回転で回し続けないといけないから力任せに回せばよいというモノではない。


 力自慢の獣人に任せる仕事では無かった。


 脱穀機もどんどん回せばよいのではない。こちらも。


「回し過ぎると実を潰す。ちゃんとこそぎ落とした実を確認しながら回せ」


 足踏み式だからどんどん回そうとしているが、回転を上げたから能率が上がるという訳ではない。


 そして、ハタと気が付いた。


「ところで、未熟なモノはどうやって選別している?」


 そう獣人に聞いてみたら、ふるいを使っていると答えてくれた。


 という事は、効率化のために万石通しを作ればより高品質な麦を得ることが出来る。


 前世記憶が色々幅広いが、一体何をやっていたんだろうか?


 万石通しはふるいを傾斜させたような装置で、流れ落ちる麦がその網目より小さければ途中で下へと落ち、網目より大きなモノだけが受けへと溜まる仕組みになっている。


 こうすることで一定以下の実を更に選別して品質の高い実だけを選べるわけだ。


 低品位のモノは飼料に使えるから無駄にはならない。


「しっかし、まさかエイデールで麦が育つとはな!」


 ホーカンが目を酒のようにして喜んでいるが、他に考える事は無いのか?


 そもそも、麦すら育てられないって、器用なドワーフにしてはって疑問もあるが、興味がないものはとことん興味がないから農作業が出来ないんだろうな。牛や馬の餌やりすらきちんとできないレベルだし。


 ドワーフは農具に興味がなく、これまで作ってこなかったが、俺が作ったり描いた農業機械は細工物という認識らしく、見せて、説明すれば作ってくれる。


 だが、やはり農具は農具。ガスタービンのように率先して改良しようというほどの関心は抱いていない。


「何だ?馬車に犂なんか付けてどうすんだよ」


 新しい犂を試行錯誤していると、ドワーフにそう聞かれた。


「犂はある程度重さがある方が深く掘れるらしい。安定させるには大型の車にする必要がある。牛や馬も順調に増えているからこうした効率的な道具があった方が良いと思ってな」


 それは五頭曳きの大型のプラウだ。


 本来なら片返しだが、記憶にある可動式の構造を加えて梃子と歯車で犂を上下させると反転板も左右に切り替わるようにしている。


「面白い構造だな。う~ん。これならこの支点とこっちの棒、あと、この歯車もちょっと弄れば・・・・・・」


 などと、俺が時間をかけて仕上げた作品を一目見ただけでさらに効率的な仕様へと改造していく。


 ホント、興味を持ったらすぐさま改善点が見えてしまうって凄いよな。


 だからこそ、他の追随を許さない技術力を誇ってるんだろうが、なんか悔しい。


 大型の犂を完成させ、ならば、歩行型の小さな馬鍬ではなく、人が乗れる大型の円盤馬鍬(ディスクハロー)も作ろうと試行錯誤した。


 それは構造が単純なのでドワーフ達も特に何も言って来ない。前世の記憶にあるそれは歯車状の円盤で構成されたモノと本当に円盤状と二種類ある。


 どこがどう違うのか分からないし、ドワーフも興味を持たないのでとりあえず、円盤で良いだろう。


 麦の収穫が終わった畑では早速、作ったばかりの乗用犂が利用されている。


「もう使っているのか。次は何を作るんだ?」


 そう聞いてみると、豆だそうだ。


「豆っす。麦やソバだけじゃ味気ないんで、豆が必要っす」


 と、犬っぽい獣人が答えてくれる。


 豆。小粒の豆で、主にペースト状に煮崩して食されるソレの事だろう。大抵は煮込んだソバの付け合せや小麦粉を溶いて薄く焼いたモノに乗せて食べるんだ。

 確かに必要だ。酒があれば他は何でも良いドワーフには分からない世界かも知れないが。


 そんな訳で、ソバに次いで豆の栽培も始まる。


 ソバに関しては、そのうち花が咲きだすんじゃないか?最近はやたらと成長している気がするんだが。


 そして、やはりトラクターがあればもっと楽なのでは?と考えてしまう。


 馬車だと流石にあの騒音は酷だ。


 そこらじゅうを走られては困る。


 だが、トラクターならどうだ?


「発想は分かる。だが、車輪が沈んで進めなくなるぞ?」


 蒸気トラクターとかいうデッカイトラクターをモデルに構想したソレをドワーフに話してみたが、まず言われたのはソレだった。


 確かに、それはそうかもしれん。


「なら、車輪の上にベルトを這わせてしまえばよい」


 履帯とかクローラーとか呼ばれるソレだ。


 ドワーフは何だそれはと言う表情だったので、車輪間にベルトを通し、外れないように転輪を付けたモノを描いて見せた。


「良く分からんが、作ってみるか」


 そう言って単体のテストモデルが完成したが、全くコレジャナイ。動かすにも用途が分からない。


「で、どうすんだ?この芋虫」


 と、自分が作りながら呆れるドワーフ。


「これを車の車輪部分に漬けるから左右に必要だ」


 と、言うと、そりゃあそうかと納得するドワーフ。


「で、どうやって曲がるんだ?」


 そんなの片方を止めて曲がるに決まってるというと、呆れている。


「おいおい、とんでもなく複雑な変速機が必要だぞ、それ」


 確かにそうだ。


 という事で、ハーフトラックとして開発する事になった。名前は芋虫の魔物からブルーコと名付けられる不名誉な結果となったが、まあ、良いか。  

  

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