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12・船のお次も考えてみようか

 キーンという金切り音を発しながら進む船。


 前世記憶の船ほど速くはない。ここは海ではなく川なのだから当然だ。運河の幅を考えれば速度は自ずから決まってしまう。


 領主府があるここ。便宜上、領都とでもしようか。都ってほどではないし、街というのも憚られるが。


 ここから本流までは支流と水路で繋いでいる。なので、速度を出すなど不可能だ。


「本当に動いたな」


 それが正直な感想だった。


 確かにガスタービンは完成していたが、まさか、船を動かせるなど思いもしなかった。


「積み込む燃料はあれだけで良いのか?しばらくは領内の運航しかしないとはいえ、少なすぎないか?」


 そして、ドワーフが開発したミスリル羽根を用いたガスタービンの燃費が俺の考えた当初とは桁が違って良くなっている。


 今船に積み込んでいる燃料は小樽一個でしかない。前世記憶で言うと、20ℓの携行ドラムだろうか。俺が考えていたものであれば、1日動かすのにハーフサイズのドラム缶が必要だった。


「あれがミスリルを用いて魔素をかき集める様にした効果だ。少ない投入量でも十分な風量を得ることが出来る」


 そう、ガスタービンと言いながら、なかなか面白い事に、高温ガスという訳ではない。確かに燃焼はしている筈なんだ。


 にもかかわらず、排気温度自体は耐熱素材を探しまくるような努力は必要なかった。


 おかげで木造船に取り付けることが出来ている。


 ガスタービンは船内に設置し、吸排気塔が立っている。そこから出力して船尾までシャフトで繋ぎ、減速や変速を行う機構や推進器を設ける、いわゆる船内外機方式を採用した。


 これは前世記憶から海と違って浅瀬や流木などが多く、船自体の喫水が浅い事から採用している。小型レシプロが実現していれば船外機として色々な船に装備できたが、ガスタービンでは吸排気設備が大型化するので船外機は無理だった。


「しっかし、あんな風車で水ん中を進めるなんて考え付きもしなかったぜ」


 と感心するドワーフ。


 銃のライフリングも当初は首をかしげていたが、すぐに理解し、風車を見せてスクリューの機能について説明したら、しっかり作ってくれた。


「とは言っても、一番苦労したのが、まさか、水んなかってのはあんなに力が必要だったんだな。もっと楽に作れると思ってたぜ」


 と、開発の苦労話をしてくれた。俺だったらこの短期間での完成は無理だっただろう。


 それから船は試験も兼ねて領内定期便として運航している。


 その間に他所の領主を訪ねて都までの航路を航行する許可を得ないとな。


 船以上に缶詰輸送について説明が必要だ。金属の缶だから道具や武具と間違われると搭載量が著しく制限されてしまう。


 そのためには沿線貴族に説明しないといけない。


 という事で使者を出して説明を行ったが、一か所だけはそうは行かない。


 そこは幾ら領主と言っても、公爵なので自分で赴く必要がある。


「しかし、馬車の移動と言うのも大変だな。どうにかしないと」


 などと、アレコレやっていて発見した。物凄くバネに向いた素材を。


 ドワーフの里だけあって、ここには様々な鉱物が集まって来るが、それを練り合わせることを数か月、色々な性質の合金を作ってみたが、だいたいはドワーフがすでに作り出していた。


 そんな馬車でコトコト公爵領へ向かう。


「これは中々乗り心地が良いですね」


 同行しているモアがその乗り心地に感心する。


「これが最新の馬車って事だ」


 などと得意気にに言っているが、何の事はない。前世知識である。


 リーフサスペンションの馬車ならすでにドワーフが作り出していた。相当な値段なので購入できるのは貴族や大富豪に限られるが。


 だが、所詮、リーフスプリングの馬車である。跳ねを抑える事には限界がある。


 ならば巻きバネではどうだという話になるのだが、巻きバネを使うならば独立懸架だよな?


 そんなモノを馬車に採用するなんて難しすぎる。


 しかし、出来てしまったモノは仕方がない。


 本当ならばレシプロエンジンを前提に自動車を考えていたのだが、ガスタービンでしか実現できない事から没になった。


 確かに、ガスタービンでも出来ないことはない。やろうと思えば可能だった。


 しかし、ガスタービンゆえの問題から断念している。


 考えても見て欲しい。


 どうやって大排気量の消音装置を作る?


 レシプロであれば何とかなったが、どうしても無理がある。あの大音量を小さくするには馬車の大半を消音器にしないと無理があるではないか。


 そんな訳で諦めた。


 船?


 船には吸排気塔として相応の規模のモノが取り付け可能だったんだよ。だから、完成している。


 そんな訳で、エンジンがあればラン〇ルやバ〇ヴィになったであろうソレを馬車に戻す事になった。


 その上で、バネを配すのだが、巻きバネでは面白くなかったので板バネにした。


 その合金がミスリルとオリハルコンと言うドワーフも試していなかった軽量合金であった事から、かなり軽いバネが完成した。


 その板バネは通常の馬車のように車軸と車体の間を支えるように置いていない。


 そんな事すればせっかくの独立懸架の意味がなくなるではないか。


 独立懸架の上で板バネ。一枚板で左右のアームを繋いだタイプとして完成させた。モノリーフスプリングと言う奴だ。確か、前世人物の家族が乗っていた車の足回りに採用されていたらしい。軽量なFRPという素材らしいが、魔物の皮や骨で再現できるだろうか?

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